E903 – 研究データを国家レベルで共有するサービスの可能性は?(英国)

カレントアウェアネス-E

No.146 2009.03.25

 

 E903

研究データを国家レベルで共有するサービスの可能性は?(英国)

 

 高等教育機関や研究機関で生産された研究データを国家レベルで共有することは,将来の研究の発展や,国際的な知的競争力を高める上でも,有効な手段であると考えられる。英国では,英国高等教育助成会議(HEFCE)と英国情報システム合同委員会(JISC)の助成のもと,英国・アイルランド研究図書館コンソーシアム(RLUK)とラッセルグループITディレクターズ(RUGIT)の協同プロジェクトとして,デジタル研究データを国家レベルで共有するサービス(UK Research Data Service:UKRDS)の開発・運用の実現可能性とコストに関するフィージビリティ調査が進められてきた。2008年12月,その最終報告がHEFCEに対し提出され,一般にも公開された。

 研究は,ブリストル大学,レスター大学,リーズ大学,オックスフォード大学の研究者700名以上に対して実施したケーススタディ,既存のサービスや各国の同種のサービスの調査などを含む机上調査を組み合わせて行われた。その結果,下記のような結論が導かれた。

  • 国家レベルで研究データを管理する必要性が立証された。
  • 研究データへのアクセスが向上すればよりよい研究が可能になると考える研究者が少なくないにもかかわらず,多くのデータが局地的に管理されているなど,埋めるべき重要なギャップが存在している。
  • デジタルキュレーションセンター(DCC;E548参照),JISC,研究情報ネットワーク(RIN)などによるデジタル研究データの管理に関する研究といった知見,JANETネットワーク(CA1620参照)といった研究インフラなど,英国にはUKRDS構築の基礎が既に整っている。
  • 各国で,国家レベルあるいは地域レベルで,デジタル研究データ管理に関する重要な取組が進行している。
  • 既存のサービスや仕組みを一貫したフレームワークの中に整理し直し,既になされた投資を有効に活用できること,研究データ共有により可能になる追加的研究が英国の国際競争力を高められることなど,UKRDSはコストを抑えながら利益を生むことができる。

 上記を受け報告書は,(1) UKRDSは実現可能であり,少なくとも5年以上の期間に渡り,UKRDS構築のための資金提供を実施すべきである,(2) 2年間のUKRDSの「探索段階(Pathfinder Phase)」には,531万ポンドの資金提供がなされるべきである,という2つの提言を行っている。

 なお2009年2月26日には英国王立協会において,このUKRDSのフィージビリ ティ調査の報告を中心に,研究資源を有効活用するための研究データの管理方法を議論する国際会議が開催され,国内外の関係者が論点を共有した。

Ref:
http://www.ukrds.ac.uk/index.htm
http://www.ukrds.ac.uk/UKRDS%20Final%20report%20Exec%20summary.doc
http://www.ukoln.ac.uk/events/ukrds-2009/
http://www.ukoln.ac.uk/events/ukrds-2009/programme/
http://www.ukrds.ac.uk/UKRDS%20Feb%202009%20%20Newsletter%20for%20Stakeholders.doc
http://www.ukrds.ac.uk/UKRDS%20December%20%20Newsletter%20for%20Stakeholders.doc
CA1620
E548