E845 – 環境にも,財布にも嬉しい図書館資料除籍法(米国)

カレントアウェアネス-E

No.137 2008.10.15

 

 E845

環境にも,財布にも嬉しい図書館資料除籍法(米国)

 

 図書館は新しい資料を購入し利用者に提供するにあたり,利用頻度が落ちた資料,古い資料などを目録から除籍し,処分することがある。Library Journal誌の記事によると,米国では多くの図書館が,除籍資料を廃棄するのではなく,再利用する道を選んでいるという。資料の再利用は,環境保護という観点からも,注目されている。

 米国では以前から,除籍資料の再利用は活発に行われており,例えば,地域のイベントやプログラムと合わせた古書セール,図書館の軽食堂での古書販売,ホームレスのシェルター,学校,養護施設,コミュニティセンター, 刑務所等への寄付といった方法で実施されてきた。こうした伝統的な除籍資料活用は,地域コミュニティへの貢献という文脈に基づいているが,記事によると,インターネットの普及などによって,上記のような方法に加え,除籍資料の活用法にもさまざまな選択肢が登場してきている。

 まず,慈善団体と提携し,自館の除籍資料をより広い文脈で立てるという方法がある。例えば“Books Through Bars”は集めた資料を全米の刑務所に配布し,“International Book Project”は,何百万もの資料を発展途上国の図書館,教室,コミュニティセンターなどに送り届けている。両プロジェクトともウェブサイトで情報を提供しており,プロジェクトに興味を持った図書館が電子メールを利用して簡単にコンタクトを取れるようになっている。

 その他に,電子商取引環境ではあまり知られていない商品にも購入者がいる,という「市場のロングテールの原理」に則り,図書館が除籍資料をオンラインで販売するというやり方がある。この方法を手助けする企業も現れており,特に人気があるのが,B-Logistics社とBetter World Books社の2社である。現在,前者のサービスを400近い図書館が,後者のサービスを900強の図書館が利用しているという。B-Logistics社は,あらゆる館種の図書館から,書籍に加えて,CDやDVDなどさまざまな除籍資料を受け入れ,それらをAmazonなどのオンライン書店で販売している。B-Logistics社に資料を提供した図書館は,売り上げの収益の一部を報酬として受け取ることができる。提供する資料の量,資料提供の頻度などにもよるが,デンバー公共図書館は,このプログラムに参加した2002年以来,17万ドル(約1,700万円)以上の収益を手にした。Better World Books社もB-Logistics社と類似のサービスを提供しているが,除籍資料の発送料が無料で,よりローコストとなっている。両社とも,オンライン書店でも売れ残ってしまった資料は,提携している慈善団体に寄付するか,紙パルプのリサイクルに利用しており,廃棄することはない。また,このように企業を介するのではなく,直接オンライン書店で古書を販売している図書館もある。

 このように米国では,さまざまなチャネルを通じて除籍資料を生かすことが可能になっている。現在では除籍資料の寄贈受付や再販売を請け負う組織や企業の情報を集約している“Green Weeding Wiki”というWikiも立ち上げられており,米国の図書館コミュニティにおける除籍資料再利用への関心の高さがうかがえる。

Ref:
http://www.libraryjournal.com/index.asp?layout=article&articleid=CA6592668
http://www.blogistics.com/
http://www.betterworldbooks.com/
http://greenweeding.pbwiki.com/FrontPage