E824 – ロンドン五輪に英の図書館・博物館・文書館も積極的に参加

カレントアウェアネス-E

No.134 2008.08.27

 

 E824

ロンドン五輪に英の図書館・博物館・文書館も積極的に参加

 

 2008年8月24日,北京オリンピックが閉幕した。次回のオリンピック開催地は英国・ロンドンに決定しているが,早くも英国では,ロンドンオリンピック開催に向けた取組みの1つ,「文化オリンピアード(Cultural Olympiad)」が始動する。文化オリンピアードは,オリンピックをスポーツの祭典としてのみ捉えるのではなく,文化の祭典としても位置づけるもので,2004年のアテネ大会で初めて行われた。世界の多様な文化や言語を称えること,若者の創造力を刺激すること,永続的で肯定的な(positive)遺産を残すことをその意義とし,全英規模で,オリンピックが開幕する2012年まで4年間に渡って,さまざまな文化イベントが開催される予定である。

 この文化オリンピアードでは,博物館・図書館・文書館国家評議会(MLA)が,ロンドンオリンピック組織委員会(LOCOG)と協同で,文化オリンピアードのメインプロジェクトの1つ,“Stories of the World”(詳細は2008年9月公表予定)を運営するのをはじめ,英国中の100を超える博物館・図書館・文書館が積極的にプログラムに参加することを表明している。

 MLAはまた,博物館・図書館・文書館が文化オリンピアードにどのように貢献するかについてのビジョンをまとめた企画書“Setting the Pace”を作成し,「国際的展示プログラム(International Exibitions Programme)」「人々の記録(People’s record)」「記録(The Record)」「文学とストーリーテリング(Literature and Storytelling)」「情報ハブ(Information Hub)」という具体的な5つのプロジェクトを提案している。なおMLAは,Setting the PaceをStories of the Worldを補完するプロジェクトとして位置づけている。Setting the Paceの5つのプロジェクトのうち,「人々の記録」と「文学とストーリーテリング」が,第1段階としてまず始動する。前者は,オリンピックのホスト国で生きる人々の経験を記録するというもので,オリンピック史上初の試みとなる。後者は,若い詩人たちの創造力をかき立てたり,ストーリーテリングやパフォーマンスイベントの情報源とするべく,博物館・図書館・文書館のコレクションを活用する取組みであるという。

 MLA議長のモーション(Andrew Motion)氏は「博物館・図書館・文書館のコレクションは,世界の複雑な文化的アイデンティティを豊かに反映しています。MLAが文化オリンピアードで重要な役割を果たし,英国中の人々が文化オリンピアードに参加することに寄与するのは,全く正しいことです」と語り,また,LOCOGの文化部門の責任者であるモーリス(Bill Morris)氏は「博物館・図書館・文書館とともに,われわれの4年間の旅路を出発できることを喜んでいます」と,文化オリンピアードにおける博物館・図書館・文 書館の重要性を強調している。2012年までの長期間に渡り,プログラムを通じて博物館・図書館・文書館が自らの存在感をどれだけ印象付けることができるのか,引き続き注目していきたい。

Ref:
西村太良. 特集 文化の力 交流の営み: ギリシャの文化政策 オリンピックと文化オリンピアード. をちこち. 2004, (1), p. 33-36.
http://www.mla.gov.uk/news/press_releases/Olympiad_100
http://www.mla.gov.uk/webdav/harmonise?Page/@id=82&Document/@id=26321
http://www.mla.gov.uk/programmes/settingthepace
http://www.mla.gov.uk/resources/assets//S/setting_the_pace_11937.pdf
http://www.london2012.com/get-involved/cultural-olympiad/index.php