カレントアウェアネス-E
No.117 2007.11.14
E718
米国学校図書館員協会,「21世紀の学習者のための基準」を公表
米国図書館協会(ALA)の1組織である米国学校図書館員協会(AASL)は2006年から,学校図書館メディアプログラム(CA1361参照)のための新しい学習基準の作成に取り組んでいたが,2007年10月25日にネバダ州リノで開催された第13回AASL年次大会の場で,その内容が発表された。
新基準ではまず最初に,以下のような土台を成す9つの信念を明示している。
- 読書は世界に繋がる窓である。
- 質問は学習のための枠組みを与える。
- 情報利用における倫理的な振る舞いを教えなければならない。
- テクノロジーに関するスキルは将来の雇用のために不可欠である。
- (情報への)公平なアクセスは教育にとって鍵となる要素である。
- インフォメーションリテラシーの定義は,情報資源とテクノロジーの変化に伴なってますます複雑化している。
- 情報が拡大し続けていることにより,個々人が自分自身の力で学習するための思考能力を身につけることが求められている。
- 学習には社会的コンテクストが存在する。
- 学校図書館は学習スキルの発達にとって,必須のものである。
これらの信念を押さえた上で新基準では,「尋ね,批判的に考え,知識を得る」,「結論を導き,根拠に基づいた決定をし,新しい状況に知識を応用し,新しい知識を生み出す」,「民主主義社会の一員として,知識を共有し,倫理的かつ生産的に参加する」,「人間的,審美的成長を目指す」という4つの学習目標を定義している。さらに目標の下には各目標の達成度を測るための「スキル」,「行動傾向」,「義務」,「自己評価戦略」という4つの指標が定義されている。各指標では具体的で詳細な能力が記述されているため,メディアスペシャリストたちが生徒たちが身につけるべき知識や行動とは何かを把握し,それらを身につけるための授業設計を考える上で役立つよう工夫されている。例えば,「尋ね,批判的に考え,知識を得る」という目標における「スキル」として,「カリキュラムのテーマにおける知識探索において質問に基づいたプロセスをたどる,さらに自分自身の生活でこのプロセスを利用するため,現実世界との結びつきを作る」,「新しい学習のためのコンテクストとして,既に有している知識及びバックグラウンドにある知識を利用する」等をはじめ,全9項目を挙げている。
学校図書館のメディアプログラムの充実度と生徒の学習達成度の間に相関関係があることは複数の研究成果によって指摘されている。このような中2007年6月には,連邦議会の超党派の議員が各公立学校に少なくとも1人以上の学校図書館メディアスペシャリストを置くことを求める法案“SKILLs Act”を提出し,現在審議中である(E680参照)。今回の新学習基準の導入の効果とともに,法改正の動きも含めて,米国の学校図書館を取り巻く動向を引き続き追っていく必要があるだろう。
Ref:
http://www.ala.org/ala/aasl/aaslproftools/learningstandards/standards.cfm
http://www.ala.org/ala/pressreleases2007/october2007/standards07.htm
CA1361
CA1487
E680