カレントアウェアネス-E
No.113 2007.09.12
E694
IFLA,公共図書館における乳幼児サービスのガイドラインを発表
国際図書館連盟(IFLA)は,児童・ヤングアダルト図書館分科会の調整により,一般大衆にサービスする図書館部会の全分科会の協同プロジェクトとして,「乳幼児への図書館サービスのガイドライン(Guidelines for Library Services to Babies and Toddlers)」を作成し,2007年8月にウェブサイト(IFLANET)で公開した。
このガイドラインは,乳幼児(満1歳までの“Babies”および1歳から3歳までの“Toddlers”)とその家族,さらには保育士などの介護者,教育者,医療専門家といった乳幼児に関わる専門家に対し,公共図書館が提供すべき図書館サービスについて指針を示すものである。全体は4つのセクションから構成されており,第1セクションではガイドライン制定の背景,目的,対象読者について,第2セクションでは児童図書館の使命,ニーズ,サービスの対象利用者,目標,資料と選書基準,環境,人的ネットワーク形成,広報, スタッフの育成,サービスの管理と評価,財源の獲得について,となっている。また第3セクションは乳幼児サービスの進捗状況を評価するためのチェックリスト,第4セクションは世界19か国の合計30以上の優良事例の紹介となっている。日本からは,浦安市立図書館,大阪府立中央図書館の事例が紹介されている。
全体を通じて,乳幼児の言語習得にとって,話しかけ,歌いかけ,読み聞かせることが重要であると家族や乳幼児に関わる大人たちすべてに訴えかけること,また図書館がそのような場所・環境を醸成していくことの必要性が繰り返し提示されている。そして,実施すべきサービスとして,乳幼児との対話を促進するような歌・絵本・ICTツールの提供,大人や専門家向けのワークショップ,他の専門家との連携,病院の待合室や家族教育センターなどへ出向いての読書・音読プログラムの実施などが挙げられている。また,障害を持つ乳幼児や,バイリンガル家庭など多言語環境にある乳幼児に配慮した図書館サービスの必要性に加え,図書館サービス基盤が脆弱な地方や,貧困・識字率が低い・親が多忙・核家族化といった問題を抱えている大都市部など,居住環境についても配慮する必要性が提起されている。
なお,IFLA児童・ヤングアダルト図書館分科会では過去に,「ヤングアダルト向け図書館サービスのガイドライン」および「児童図書館サービスのガイドライン」(E200参照)も作成,公開している。これらについては,井上靖代獨協大学准教授による日本語訳が,IFLANETに掲載されている。
Ref:
http://www.ifla.org/VII/d3/pub/Profrep100.pdf
http://www.ifla.org/VII/s10/pubs/ChildrensGuidelines-jp.pdf
http://www.ifla.org/VII/s10/pubs/guidelines-jp.pdf
http://www.ifla.org/VII/s10/index.htm
E200