E617 – MLAは公共図書館をどこへ導くのか?(英国)

カレントアウェアネス-E

No.102 2007.03.14

 

 E617

MLAは公共図書館をどこへ導くのか?(英国)

 

 英国博物館・図書館・文書館国家評議会(MLA)は,今後数年間で,英国の公共図書館をどのような方向に進化させていこうと考えているのだろうか?

 2007年2月23日,MLAは,「優れたものとなるための青写真(A blueprint for excellence: Public Libraries 2008-2011)」と題する文書を提示した。これは今後の方向性に関して公共図書館,政策決定者等の関係者間の意識の共通化を図ろうとするものであり,あわせてMLA自身がどのようなコンサルティングを行っていくのかを明らかにするものでもある。

 英国の図書館界は,2003年に長期的な公共図書館政策として「将来への枠組み」(E056参照)が示されて以降,「実行計画2003-2006」(E131参照)にしたがって図書館サービスの向上に努めてきた。その成果は2007年1月に示された「実行計画2003-2006に対する評価報告書(Evaluation of the Framework for the Future Action Plan 2003-2006)」の中で評価されている。今回の文書は,これらの文脈を総括した上で,さらなる進化を目指す必要性があると説いている。

 その具体的な方向として,現代の図書館の重要な役割を以下の3点にまとめて提言している。すなわち,

  • コミュニティが集い,読み,学び,発見する場所となること(Community Place) 
  • 市民のスキルと知識を開発する事業主体となること(Development Agency) 
  • 図書館の情報資源と専門的支援を,24時間,遠隔地にも提供する電子図書館となること (Digital Library)

である。その上で,これを達成し現状を改善するための課題,成功への重要な要素,市民や出資者が何を優れているとみなすのか,そして,2008年から2011年の期間内の具体的行動とアウトカムがどのようなものであるべきなのかを,それぞれ簡潔にまとめている。さらに,今後のこの文書の内容の普及を図っていくとし,文書内で,2007年秋までの意見募集やキャンペーン活動等のスケジュールを具体的に示している。

 MLAが,このように,まず「青写真」という形で戦略の手の内をわかりやすく提示し,それを核にして公共図書館,政策決定者,関係団体等の利害関係者の合意形成を図っていることは,興味深い。既にCILIP等の関係団体はこの文書に示された内容を歓迎しているとのことであり,まずは順調な滑り出しを見せている模様である。

Ref:
http://www.mla.gov.uk/resources/assets//B/blueprint_11126.pdf
http://www.mla.gov.uk/webdav/harmonise?Page/@id=82&Document/@id=27266
http://www.mla.gov.uk/resources/assets//E/evaluation_of_framework_for_the_future_action_plan_2003_2006_10651.pdf
http://www.mla.gov.uk/webdav/harmonise?Page/@id=73&Document/@id=18382
E056
E131