カレントアウェアネス-E
No.99 2007.01.31
E596
図書館がコミュニティを変える!全米図書館行動計画策定へ
米国図書館協会(ALA)は2007年冬季大会を前にした1月19日,21世紀の図 書館サービスのための「全米図書館行動計画(National Library Agenda)」のドラフト版を公開した。
「全米図書館行動計画」草案は,2006年12月にワシントンで開催された“National Library Agenda Summit”における議論をもとに作成された。行動計画では冒頭で,情報技術の革新と情報へのアクセス性の向上を背景に,図書館はその存在意義が問われていると指摘する。そして図書館という組織の存在そのものに対する危機感を表明し,「21世紀の図書館サービス」を提供するために,今がまさに行動計画作成の好機であるとする。この行動計画は,(a)連邦,州,地域レベルそれぞれの図書館サービス構築に向けた,議論や合意形成に役立つ枠組みの構築,(b)社会と連携した図書館行動計画の明確化,(c)方針制定やアドヴォカシー活動に向けた,積極的なメッセージの発信,(d)今後のアドヴォカシー活動を主導する視点の提供,という目的のもと,図書館の行うべき行動を以下の6つのテーマごとにまとめ,それぞれ具体的な計画を挙げている。
- (1)過去の保存と未来への橋渡し;資料保存やデジタル資料保存への取り組みの支援,デジタル著作権管理(DRM)に関する著作権法の修正など
- (2)コミュニティの構築と発展;図書館の開館時間やバーチャル図書館の24時間サービスの提供,図書館刷新のための予算の獲得,図書館に直接つながる3桁の電話番号の取得など
- (3)生涯学習の支援;図書館による学校教育・生涯学習教育の支援,学校図書館員の配置,子ども・ヤングアダルト向けサービス専門家の養成など
- (4)情報・技術活用力をもったコミュニティの形成;図書館への高速インターネット通信設備や無線LAN装置の設置,地域の情報要求に応じた設備への更新,図書館員への技術教育など
- (5)経済発展の促進;起業やビジネスの発展に必要となる最新資料の提供,図書館における起業家支援制度の開発など
- (6)民主主義の育成;ブロードバンド環境や最新技術の導入による普遍的な利用環境の構築,市民の参加と対話を通じた民主主義への広範で積極的な参加の支援など
この行動計画の作成には,2006年7月にALA会長に就任したバーガー(Leslie Burger)の意向が反映されている。これまでALAでは,必要に応じて行動計画を策定・実行してきたが,対象領域ごとに計画や取り組みが分散し,モザイク状になる傾向が生じていた。バーガーは「図書館がコミュニティを変える」(Libraries Transform Communities)をテーマとして掲げており,これを実現するために国家レベルの行動計画作成が必要であるとして,政策立案者,財政支援者,図書館職員,図書館友の会関係者,ALA役員,利用者などと約1年間にわたり協議を重ねてきた。バーガーは行動計画の公表にあたり,このような計画は前例がないものであるとして,図書館職員ばかりではなく,広く意見を求めるとのコメントを出している。
この行動計画は2月15日までパブリックコメントを募集しており,5月1日の「全米図書館立法の日(National Library Legislative Day)」までに取りまとめられる予定である。また策定後も毎年,レビューと改訂が予定されている。
Ref:
http://wikis.ala.org/nationallibraryagenda/images/f/f4/Discussion_Draft_MW_2007_final_1-11-07.pdf
http://www.ala.org/ala/pressreleases2007/january2007/NationalLibraryAgenda.htm
http://wikis.ala.org/nationallibraryagenda/
http://www.ala.org/Template.cfm?Section=News&template=/ContentManagement/ContentDisplay.cfm&ContentID=144870
http://lb.princetonlibrary.org/nla.html