カレントアウェアネス-E
No.92 2006.10.04
E550
「Orphan Works」関連法案に関する米議会の動向
「Orphan Works」とは,米国図書館協会(ALA)の定義によると「著作権者を見出すことが困難,もしくは不可能となっているものの,著作権がいまだ存続している著作物」とされている。米国では「ソニー・ボノ著作権存続期間延長法」(Sonny Bono Copyright Term Extension Act)により著作権の存続期間が延長されたため,著作権者の所在が不明となった著作物が急増したと言われており,米国議会図書館(LC)著作権局も2006年1月26日付けで報告書“Report on Orphan Works”を公表している。
このような状況下で,著作権者が不明となっている著作物の利用に関する法案“Orphan Works Act of 2006”(H.R.5439)が2006年6月22日に米議会下院に提出された。ALAは“2006 Copyright Agenda”において,デジタルミレニアム著作権法改正とともに,著作権に関する最重要法案の一つと位置付け,9月7日には議員に対するアドヴォカシー活動を各会員に呼びかけるなどしたものの,著作者団体による法案成立への阻止活動が激しいこともあり,支持する上院議員が全く見当たらないばかりか,下院法務委員会を通過するかどうかも危ぶまれていた。
だがここにきて法案への支持者確保のために,「Orphan Works」法案を提出したスミス(Lamar Smith)議員が,「Orphan Works」に音楽のオンライン配信や知的財産の侵害に対する処罰範囲の拡大を加えた「著作権近代化法案」(Copyright Modernization Act of 2006,H.R.6052)を9月13日に下院に提出した。しかしこの法案も著作者団体からの反対もあり,9月27日に成立の見込みが薄いとして取り下げられてしまった。
スミス議員は2006年中の法案成立を断念したものの,2007年開会予定の第110議会に,修正案を再提出する方針を示している。ALAも同様に,「Orphan Works」法の制定を目指しているが,一部の図書館員からは「著作権近代化法案」に対する違和感も表明されている。法案への反対活動を行う著作者団体の動きもあり,「Orphan Works」に関する法律案の行方は,ますます混迷の度を深めつつある。
Ref:
http://frwebgate.access.gpo.gov/cgi-bin/getdoc.cgi?dbname=109_cong_bills&docid=f:h5439ih.txt.pdf
http://frwebgate.access.gpo.gov/cgi-bin/getdoc.cgi?dbname=109_cong_bills&docid=f:h6052ih.txt.pdf
http://www.stockasylum.com/text-pages/articles/a6fa092006-new-ow.htm
http://www.law.com/jsp/article.jsp?id=1159347926565
http://www.ala.org/ala/washoff/WOissues/copyrightb/orphanworks/orphanworks.htm
http://www.ala.org/ala/washoff/washnews/2006ndx/091sep07.htm
http://www.ala.org/ala/washoff/WOissues/copyrightb/copyagenda.pdf
http://www.ala.org/ala/alonline/currentnews/newsarchive/2006abc/september2006a/orphanworks.htm
http://www.asmp.org/news/spec2006/orphan_update.php
http://www.libraryjournal.com/article/CA6346417.html
http://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/48/12/838/_pdf/-char/ja/
http://www.copyright.gov/