カレントアウェアネス-E
No.67 2005.10.05
E384
歴史的録音資料の復刻の可能性−米国CLIRの調査報告
米国連邦法では,1972年以前に作成された録音資料は著作権の保護対象外であるが,州法または慣習法に基づいてその著作権が2067年まで保護されることになっている。そのため,他の著作物が一定期間後にパブリック・ドメインとなるのに対して,録音資料は一部を除いてパブリック・ドメインとなっていない。特に,1965年以前の録音資料は一般向けに復刻されることも殆どなく,現状では音源を保管している機関(主に大規模な研究図書館)を訪れなければ聞くことができない。
米国の図書館情報資源振興財団(CLIR)は8月,議会図書館(LC)の全米録音資料保存委員会(E053参照)の委託を受けて,こうした録音資料の復刻の可能性に関する調査報告書を出版した。権利者によって管理されている録音資料の割合,それらの録音資料が市場で入手できる割合などから,歴史的録音資料に権利者以外の人がどの程度アクセスできるかを調べている。
報告書は,研究者,学生やその他一般の利用者は録音資料をなかなか利用することができず,その理由としてこれら録音資料を再生できる機器がないこと,権利者のみが現在の技術による復刻を行わせることができると定めた著作権法の影響により新しいメディアへの移植が進んでいないことが大きいと述べ,録音資料の維持管理がこれ以上難しくならないうちに,早急な対応策の議論が必要であると結論付けている。
Ref:
http://www.clir.org/pubs/abstract/pub133abst.html
http://www.loc.gov/rr/record/nrpb/nrpb-2003act.html
E053