カレントアウェアネス-E
No.60 2005.06.15
E339
セマンティックウェブと高等教育
セマンティックウェブ(CA1534参照)の世界に向けて数多くの開発プロジェクトが進められている。次世代のウェブと言われるこの技術は,端的に言えば,構造化されたメタデータをリソースに埋め込むことで,コンピュータ自身が情報の意味を解釈し,推論することを可能にする技術といえる。
英国情報システム合同委員会(JISC)は4月,セマンティックウェブを概説し,高等教育界に与える影響を解説するレポートを発表した。レポートによると,影響の第一は,学習や研究における情報管理や相互作用が強化されることにあるという。既にウェブログやRSS(E263参照)などで一部実現しているように,溢れる情報を自動的に収集,整理し,興味を同じくする人たちと情報を共有するという効率的な情報活用が考えられる。また,eラーニングの分野では,リポジトリとメタデータによって,学習者一人ひとりに適切な学習資源を提供することが可能になるという。
影響はサポート役である図書館にも及ぶ。図書館は伝統的に書誌レコードというメタデータや統制語彙を扱ってきた歴史があるが,これらはメタデータを論理的に記述するモデルであるRDFや,語彙や概念を定義するためのオントロジなどを基盤とするセマンティックウェブと親和性が高い。実際,マサチューセッツ工科大学図書館はW3C等と合同で,DSpaceをセマンティックウェブ技術を用いて拡張しようとするSimileプロジェクトを進めている。レポートは,図書館はアーカイブというよりも,付加価値的な情報注釈を行う組織になっていくだろうと指摘している。図書館界はセマンティックウェブの開発にどのように貢献できるのか,協働の可能性を探る時期に来ている。
Ref:
http://www.jisc.ac.uk/uploaded_documents/jisctsw_05_02bpdf.pdf
http://simile.mit.edu/
http://www.kanzaki.com/docs/sw/
http://www.net.intap.or.jp/INTAP/s-web/index.html
CA1534
E263