カレントアウェアネス-E
No.43 2004.09.01
E237
最良の学術雑誌ビジネスモデル <文献紹介>
McCabe, M. & Snyder, C. The best business model for scholarly journals: an economist’s perspective. Nature web focus: Access to the literature. 2004. (online), available from < http://www.nature.com/nature/focus/accessdebate/28.html > (accessed 2004-08-16).
2003年はオープンアクセス元年と言えるほど,学術雑誌の出版について多くの進展と関心が見られた。それゆえ,図書館情報学分野だけでなく,たとえば本記事のように経済学分野からの研究成果も出始めている。
学術雑誌のビジネスモデルは大まかに,従来の機関購読や個人購読といった「読者支払い型」とオープンアクセスに代表される「著者支払い型」の二者にわけることができる。商業出版社は現在のビジネスモデルを支持し,図書館は基本的にオープンアクセスの立場を取るが,大規模な大学は生産性の高い研究者を抱えているため,著者支払い型では不利益になるかもしれない。研究者は著者としても読者としても,一概に著者支払い型を好む訳ではない。投稿料が上がれば結果として,発表される論文が減少し読者の不利益になる。読者支払い型にしても,図書館が購読をキャンセルし続ければ読者はもとより,間接的に著者にとっても読者数の減少が不利益となる。研究者にとってオープンアクセスの実質的な価値は複雑である。
世界情報社会サミット(E159参照)やイギリス・アメリカの報告書(E222参照)など国レベルでの関心が高まっている一方で,日本における関心や研究は心許ない状況であり,研究者・実務家双方の働きかけが求められる。
(慶應義塾大学大学院 三根慎二)