E1906 – 京都府立総合資料館が京都学・歴彩館として再出発

カレントアウェアネス-E

No.324 2017.04.27

 

 E1906

京都府立総合資料館が京都学・歴彩館として再出発

 

●京都府立京都学・歴彩館が目ざすもの

 京都は日本文化の心のふるさとであり,京都に関する歴史・文化の研究は,日本文化全体と大きく繋がっている。京都府立京都学・歴彩館(以下,京都学・歴彩館)では,京都や京都との関わりの中で成立・発展してきた特色豊かな文化について,国内外からの幅広いアプローチにより研究していくことを「京都学」ととらえ,これを推進・発信することで京都文化のさらなる発展を目ざすことを目標としている。

 「京都学・歴彩館」の名称については,これまでの京都府立総合資料館(以下,総合資料館)としての役割に加え,新たな機能である京都文化の研究推進を「京都学」に込めている。そして,「順を追っていく」,「代々にわたる」といった意味を持つ「歴」と,色どりの美しさを表す「彩」により,文化や歴史の数々が時代を超えて輝きを放ちつづけ,次代へと受け継がれていくことを「歴彩」と表現している。

●総合資料館の閉館から京都学・歴彩館の全面開館へ

 京都学・歴彩館の前身である総合資料館は移転作業のため2016年9月13日をもって53年の歴史に終止符をうち閉館した。閉館の日には「ありがとう資料館『感謝の集い』」として,ファイナル館内ツアー,ギャラリートーク,コンサートを行った。このうちギャラリートークは「館蔵資料がつなぐ“過去の記録と未来の創造”」として,職員4名による京都学・歴彩館への提案と参加者とのディスカッションを行った。

 当日は120人を超える参加者があり,ディスカッションでも総合資料館についての思いを語る方が多く,利用者に愛されているということを再認識できた。

 閉館後は移転作業を行っていたが,利用可能な部分は少しでも早く利用してもらいたいとの思いがあり,展示室やホールなど1階交流フロアの一部を2016年12月23日にプレオープンした。そして,資料の閲覧など館の中心的機能である2階部分の探究フロアを含めたグランドオープンを2017年4月28日に迎えることになった。この探究フロアは開館時間が平日は午前9時から午後9時までと長くなり,京都府立大学及び京都府立医科大学の図書も利用可能とすることで使いやすい施設を目指している。サービスの詳細は,決まり次第京都学・歴彩館のウェブサイトに掲載する予定である。

●京都学・歴彩館の建物について

 条坊制による京都の街並みをイメージした重なり合う屋根,鉄骨を菱格子に組んだ空間やガラスの壁などで構成した,光あふれ風が通る開放感に満ちた造りが特徴である。また,太陽光や地中熱,雨水の利用など環境にも配慮している。

 建物は隣接する京都府立大学の附属図書館や文学部研究室も同居する複合施設となっており,先行オープンした1階は交流フロアとして展示室や大小ホール,ワークショップやパネル展等を開催できる京都学ラウンジなどがあり,新たなにぎわいと交流が生まれることを期待している。2階は探究フロアとして総合資料館から移転した京都に関する各種図書,古文書や行政文書,大学の蔵書が閲覧できるよう約350席を設けた閲覧室があり,3・4階は京都府立大学文学部の研究室が設置されている。

 探究フロアの京都資料総合閲覧室では,従来別々の場所だった古文書や行政文書と図書資料の閲覧がワンストップで提供され,より幅広い情報を提供することができ,利便性が高まった。また,グループ閲覧室や大型資料の閲覧室もあり,史料を閲覧する環境が整えられている。開架スペースにある図書資料は約2万冊であり,京都の歴史・地理に関する資料や京都の官公庁が発行した冊子を多く配架している。

●京都学・歴彩館における今後の取組等について

 京都学・歴彩館の目標は3つある。1つ目は,京都関係資料の収集・保存・公開拠点として,これまで総合資料館が収集・所蔵してきた京都に関する図書資料,古文書,行政文書,写真資料など約74万冊(点)の公開を進めること。2つ目は府内各地域の文化資源を発掘し,府内の大学と連携しながら研究を深めること。3つ目は海外の研究者を招聘し,京都文化を研究してもらうこと。この3点を柱として交流を進め,講演会やシンポジウムを通じて,「京都学」を国内外に広く発信していきたいと考えている。

 2016年12月の一部オープンから多くのイベントが開催されており,特に京都学の研究については,府内の大学・研究機関との連携及び京都府域の文化資源の発掘を目指して発足した共同研究会の成果報告会である「京都を学ぶセミナー」なども開催されている。

 また,アーカイブズ関連では2017年9月に開催される「アーカイブサミット2017 in 京都」や11月に国文学研究資料館の主催で開催される「アーカイブズ・カレッジ短期コース」の会場予定になっており,図書だけでなく古文書や行政文書など様々な資料を所蔵しているという特徴を活用している。

 今後は府民や京都文化を学び研究する様々な方々が研究や調査を進め,その成果を発表したり,交流したりすることが出来るような拠点としていきたいと考えている。

 これまでの総合資料館の長い歴史があるとはいえ京都学・歴彩館としてはまだまだこれからである。まだ知らない京都の深みを発信できるように努力していきたい。

京都府立京都学・歴彩館

Ref:
http://www.pref.kyoto.jp/rekisaikan/
http://www.pref.kyoto.jp/rekisaikan/about.html
http://www.pref.kyoto.jp/shiryokan/iinkai.html
http://www.pref.kyoto.jp/shiryokan/arigato.html

 

 

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