カレントアウェアネス-E
No.34 2004.04.07
E189
オランダ国立図書館における電子情報保存事業の実際 <報告>
国立国会図書館は,オンライン系情報資源の収集及び電子情報の保存・提供の確立を目指している。その実現へ向けて,当該事業を業務(名称:e-depot)として既に実践するオランダ国立図書館(KB)から専門家を招き,3月3日(水)と5日(金)の2日間にわたり,東京本館において講演会及び意見交換会等を開催した。招聘者は次の3名である。ステーンバッカース(Johan Steenbakkers)情報技術・施設管理部長,ヤンセン(Hans Jansen)研究開発課長,ファン・ウィインハーデン(Hilde van Wijngaarden)研究開発課電子情報保存担当官。
KBはウェブのアーカイビングより電子ジャーナルの長期保存を第一課題とし(CA1490参照),エルゼビア等の納入契約を結んでいる出版社から1日55,000件の論文を受入れている。保存には,KBが開発したDIAS (Digital Information Archiving System)という,電子情報保存の国際標準参照モデルOAIS(CA1489参照)に準拠したシステムが利用されている。
彼らは「電子情報を収集する時に<国>という概念で範囲を限定できる時代環境ではない」と言い,「KBは概して変革に対して動的である」と言う。オランダでは納本は義務ではなく,KBは出版社と自発的な協定によって収集しており,それゆえ出版社との合意形成理解が醸成されているという背景があるものの,こうした時代感覚や姿勢に裏付けられた強い意志こそがe-depotを実現させた原動力だったに違いない。
詳細は『国立国会図書館月報』6月号に報告の予定である。
(報告:電子情報企画室)