E1836 – オンライン資料の納本制度の現在(4)韓国

カレントアウェアネス-E

No.310 2016.09.01

 

 E1836

オンライン資料の納本制度の現在(4)韓国 

 

●選択的収集から網羅的収集へ

 韓国国立中央図書館(NLK)は,2004年1月に韓国国内のオンライン資料の収集・保存プロジェクトOASIS(Online Archiving & Searching Internet Sources)の試験運用を開始し,2005年から本格的な収集を行っている。2006年2月からは一般にも公開され,現在では,資料の有用性,希少性等を判断基準として,政府,地方公共団体,教育研究機関,商業機関,民間団体や,選挙・災害といったテーマごとのウェブサイト等を選択的に収集している(E457参照)。

 OASISの運用開始以降も,オンライン資料の収集・保存の法的根拠が不十分な状況での収集が続いていたが,2009年3月,図書館法が改正され,図書館資料としてのオンライン資料の定義(情報通信網を通じて公衆送信される資料)(第2条),NLKによる,保存価値の高いオンライン資料の選択的な収集・保存等に関する規定(第20条)が新設され,法的根拠が明確となった(E976参照)。ただし,この時の改正では,オンライン資料の納本制度の法制化にまでは至らなかった。

 2009年の図書館法改正とは別に,2007年9月,「オンラインデジタル資料の納本及び利用に関する法律案」が国会に提出された。同法案の準備過程にはNLKも関わっており,オンライン資料の納本制度の導入が目指されたが,国会審議において納本主体,納本対象などが不明確といった法案の不備が指摘され,2008年5月に審議未了により廃案となった。

 その後も,オンライン資料の網羅的収集に向けた動きは継続し,大統領直属の図書館情報政策委員会が図書館発展のために5年ごとに策定する(E797参照)「図書館発展総合計画(2009~2013)」,「第2次図書館発展総合計画(2014~2018)」や,NLKの中期計画「国立中央図書館2014~2018」において,オンライン資料の納本制度の導入が目標に掲げられた。 

●2016年の図書館法改正によるオンライン資料の納本制度の導入

 2016年2月,図書館法が再改正され,同年8月4日に施行された。部分的ではあるが,図書館界の念願であったオンライン資料の納本制度の導入が実現した。オンライン資料の納本に係る主な改正点は以下の2点である。 

  • オンラインで発行・制作される図書及び逐次刊行物に国際標準資料番号(ISBN又はISSN)を付与することを義務付けるとともに,NLKから国際標準資料番号を付与されたオンライン資料を,発行日又は制作日から30日以内にNLKに納本することを義務化(第20条第1項及び第21条)
  • 国,地方公共団体及び大統領令で定める公共機関が発行・制作した紙媒体の資料をNLKに納本する際,そのデジタルファイルの納本も義務化(第20条第2項) 

 前者の改正は,オンライン資料のうち,電子ブックと電子ジャーナルを納本の対象とするものであり,有償・無償,DRM(技術的制限手段)の有無に関わらず納本が義務付けられる。なお,DRM(技術的制限手段)がある資料は,すでに2009年の図書館法改正において,原則,当該オンライン資料の提供者が,技術的制限手段の解除等に関するNLKの協力要請に応じることが義務付けられている(第20条の2第2項)。

 後者の改正は,国,地方公共団体及び公共機関の研究報告書,事業報告書,白書,年鑑,統計,便覧等をデジタルファイルでも納本させることにより,効率的にデータベースを構築することを意図している。 

●今後の課題

 オンライン資料の納本制度の定着のため,納本主体,納本対象,納本方法,納本代償金,資料データの流出防止策,NLKでの資料の提供方法,利用活性化案の策定等の体系的な整備や,オンライン資料の納本制度に対する利害関係者の理解と協力を得ることの必要性が指摘されている。  

 また,これまで電子出版物の資料番号は,出版文化産業振興法施行令(第3条第2項但書)により,国際標準資料番号の代わりに,社団法人韓国電子出版協会が付与する識別番号を用いることも認められていたが,今回の法改正により,国際標準資料番号に一元化されていくのではないかとの見方が出版関係者からは出ている。

調査及び立法考査局海外立法情報課・藤原夏人

Ref:
http://www.oasis.go.kr/
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006836863
https://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/bulletin8-1-1.php
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1166466_po_024204.pdf?contentNo=1&alternativeNo=
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/cooperation/pdf/nlk11_3_ko.pdf
http://likms.assembly.go.kr/bill/billDetail.do?billId=PRC_J0Z7L0J9L0P6G1B5M1C7S0W7J7Q6X2
http://doi.org/10.4275/KSLIS.2010.44.4.435
http://www.mcst.go.kr/web/s_data/deptData/deptDataView.jsp?pSeq=106
http://www.mcst.go.kr/web/s_data/deptData/deptDataView.jsp?pSeq=205
http://www.nl.go.kr/servlet/contentPdf?site_code=nl&file_name=2014-2018.pdf
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/cooperation/pdf/2014_kankoku_theme1.pdf
http://www.mcst.go.kr/web/s_notice/press/pressView.jsp?pSeq=14936
http://likms.assembly.go.kr/bill/billDetail.do?billId=PRC_W1N5X1T2S0I4O1Q8J3C1Q0U9X3L7G7
http://likms.assembly.go.kr/law/jsp/law/Law.jsp?WORK_TYPE=LAW_BON&LAW_ID=A0742&PROM_DT=20160203&PROM_NO=13960
http://www.nl.go.kr/nl/commu/libnews/notice_view.jsp?board_no=8670¬ice_type_code=1&cate_no=1&site_code=nl
http://www.kla.kr/jsp/fileboard/cultureboard.do?procType=view&f_board_seq=49639
http://blog.naver.com/parkisu007/220618881894
E457
E797
E976