E1695 – 鳥取県で「読みメンになろう!」プロジェクトをスタート

カレントアウェアネス-E

No.286 2015.08.06

 

 E1695

鳥取県で「読みメンになろう!」プロジェクトをスタート

 

1.はじめに

 鳥取県では2015年度,鳥取県立図書館(以下当館)を中心に,「えほんでHAPPY!パパもじぃじも 読みメンになろう!」というキャッチフレーズのもと,「読みメンになろう!」プロジェクトを開始した。「読みメン」とは,子どもに絵本の読み聞かせをする男性を意味する言葉で,お父さんやおじいさんなど多くの男性に,もっと子どもと一緒に本を楽しんでほしいという願いを込めている。

 近年,当館では,子どもと一緒に絵本等を楽しんでいる父親などの姿をよく見かけるものの,2013年に鳥取県教育委員会が行った「子どもの読書アンケート」によると,読み聞かせを全くしない家庭も多く,家庭での子どもの読書環境には格差があるといえる。このような中,「読みメン」の普及は,子どもが幼い時から本に親しむ機会を増加させることができ,また男性の育児参加にもつながるため,県が掲げる「子育て王国鳥取県」の施策に貢献できると考えた。

 当館では,具体的な活動に入る前に,「読みメン」普及事業を全国に先駆けて行っている島根県を視察した。島根県では,2012年度から,「読みメンはイクメンの第一歩」として,興味深い取組みを行っている。視察を受け,鳥取県でも島根県と同じく父の日のある6月を「読みメン月間」とし,島根県の取組みを参考にしながら,「読みメン」を普及・啓発する様々な取組みを行うこととなった。

2.鳥取県立図書館の取組

 当館の児童サービス担当職員と,家庭で読みきかせを行っている男性職員とでチームをつくり,企画を進めていった。

(1)普及用ポスター,リーフレットの作成

 子どもと絵本を楽しむポイント等を紹介し,読みメン司書が描いた「読みメン」をイメージしたイラストをあしらったポスターとリーフレットを,県内の公共図書館,書店等で掲示・配布した。リーフレットは,県内の全保育園・幼稚園,子育て支援センター,保健センター等の協力を得て,乳幼児のいる家庭に届けた。

(2)「読みメンてちょう」の配布

 島根県の「読みメンてちょう」を参考に,読んだ本とその感想,子どもの反応等を記録できる手帳を作成し,県内の公共図書館で配布した。この手帳は,将来子どもが大きくなった時にプレゼントすることもできる。

(3)「読みメンぱーくinとっとり」の開催

 島根県の「読みメンパークinしまね」を参考に,「読みメン」に興味をもってもらうイベントを3名の読みメンを講師に,6月13日と14日に開催した。鳥取県出身でおもちゃづくり研究家の木村研氏によるお父さんが興味を持つおもちゃ作り,島根県で「読みメン」を推進している元祖読みメンの島根県立大学短期大学部岩田英作教授による,男性ならではの本選びのポイントや絵本の魅力等を盛り込んだおはなし会,鳥取県の「鳥の劇場」芸術監督の中島諒人氏による劇遊びなどを取り入れたおはなし会を親子で楽しんだ。参加者からは,「父親をターゲットにした,親子で参加できるイベントはうれしい」「今日から読み聞かせを始めたい」などと好評であった。

(4)読みメンにおすすめの絵本選定・購入と企画展示

 「のりもの」「こわい本」「笑える・あそべる」など7つのテーマで,読みメン初心者におすすめの絵本を約120タイトル選定し,ブックリストも作成した。それぞれ10冊程度複本を購入し,県内の公共図書館等へも要望により貸し出している。そして,児童図書室に「読みメンにおすすめ絵本コーナー」を新設し,読みメン月間には,一般図書室にもコーナーを設け,男性の育児書と一緒に展示し,のべ約1,700冊の貸出があった。

(5)読みメンのおはなし会

 当館では,毎週日曜日に「おはなし会」を開催しているが,毎月第3日曜日は男性職員が担当することとした。子どもと一緒に絵本の読みきかせを聞く父親もあり,家庭で読みきかせをする時の参考にもなっているようである。

3.成果

 当館のみならず,県内の公共図書館等でも「読みメンにおすすめ絵本コーナー」の設置や男性職員によるおはなし会の実施など,普及の取組みが広がっている。また,多くのマスコミにも取り上げられ,県民に「読みメン」を少なからず周知できた。

 また,これらの取組みにすぐに反応したのは母親など女性だった。「リーフレットを夫に読んでもらった」「『読みメンてちょう』をパパにあげよう」などという嬉しい声が,図書館のカウンター等によせられた。「読みメン」の普及には女性の応援が欠かせないことを感じた。

4.課題と今後の取組

 県内の公共図書館,子どもの読書や子育てに関係する鳥取県庁の各課,保育園・幼稚園,「子ども読書アドバイザー」(子どもの読書に関する専門的な知識や読み聞かせ等の豊富な経験を持つ県が認定したアドバイザー)等との協力を図りつつ,島根県とも連携し,同じ山陰の両県で「読みメン」の普及に取り組みたい。そして,子どもたちが楽しい本と出会い,心豊かに成長するよう,取組みを継続していきたい。 

 なお,今秋の読書週間には,今回のプロジェクトに関連した,親子で参加できる催しを予定している。

鳥取県立図書館・中尾有希子

Ref:
http://www.library.pref.tottori.jp/hp/menu000003100/hpg000003048.htm
http://www.pref.tottori.lg.jp/220318.htm
http://db.pref.tottori.jp/pressrelease2.nsf/webview/B443F139E61E4D2B49257E540031F116?OpenDocument
http://www.library.pref.tottori.jp/ct/other000003700/yomimen-leaflet.pdf
http://www.library.pref.tottori.jp/hp/menu000003100/hpg000003087.htm
http://www.library.pref.tottori.jp/hp/menu000003100/hpg000003097.htm
http://www.pref.tottori.lg.jp/171039.htm