E1628 - 第11回電子情報保存に関する国際会議(iPRES2014)<報告>

カレントアウェアネス-E

No.270 2014.11.13

 

 E1628

第11回電子情報保存に関する国際会議(iPRES2014)<報告>

 

  2014年10月6日から10日までの5日間,第11回電子情報保存に関する国際会議(11th International Conference on Digital Preservation:iPRES2014;E990E1109E1354参照)が,オーストラリアのメルボルンにあるビクトリア州立図書館を会場に開催された。2004年に始まったiPRESは,電子情報の保存に係る戦略から具体的な事例の紹介,国際的な取組みから小さな機関の活動まで,様々なトピックを扱っている。

 参加者の属性は,図書館員やアーキビスト,IT技術者のほか,大学関係者や(物理的な)資料保存の専門家など,多岐にわたる。今回は約180人が参加し,国立国会図書館(NDL)からは筆者が参加した。例年参加者が多い欧米からは距離もあることから,地元オセアニアの参加者が約半数を占めた。iPRESでは期間中,複数の発表やワークショップが同時並行で進められる。本稿では,筆者が参加したプログラムのうち,印象に残ったものをピックアップして報告したい。

 そもそも,なぜ電子情報を長期に保存する必要があるのか。会議4日目(10月9日)の基調講演では,オーストラリア国立データサービス(Australian National Data Service:ANDS)のウィルキンソン(Ross Wilkinson)博士が,データの持つ価値を認識し,管理することの重要性を繰り返し強調した。ANDSは,「よいデータが,よい研究を生む」との考えから,オーストラリア国内の研究データや観測データ等を集積し,研究者らに有効活用してもらうことを目指している。

 こうした目標を実現するため,ANDSは, デジタルオブジェクト識別子(DOI)を活用した“Cite My Data”というサービスを提供しており,研究者はこのサービスを利用することで自身の研究データにDOIを付与することができる。他の研究者が関連した研究を実施する際には,このDOIを利用し,研究データにアクセスすることができるようにするなど,「データサイテーション」の仕組みを構築しているのである。

 また,会議では,電子情報として保存される重要なデータへのアクセスや,そのデータを長期的に保存するにあたり,リスクや障害となるものを分析して取り除く取組みも多く紹介された。ドイツ国立図書館(DNB)のシュタインケ(Tobias Steinke)氏は,同図書館のデジタル著作権管理(DRM)への対応について発表した。電子情報の利用や複製を制御するDRMは,現在多くの電子的な出版物に用いられており,その扱いは,電子情報の長期保存を目指す機関にとって難題となっている。

 DNBでは,電子書籍・雑誌等を受け入れる過程において,2012年末からDRMを自動的に検出するツールを用い,長期保存に対するリスクが中から高程度のものについては,出版者に対してプロテクトがないファイルの再提出を求めている。今後も,ファイルフォーマットの増加や変化,それに伴うDRM技術の増加が予想される。それら新たなDRM技術についても,できるだけ早い段階で検出できるよう,ファイルを分析するツールのアップデートは欠かせないという。

 さらに,ファイルフォーマットの陳腐化も,電子情報への恒久的なアクセスにとって大きなリスク要因である。ファイルフォーマットの存続の危急性を分析する取組みについても,複数の発表がなされた。デンバー大学(米国)のライアン(Heather Ryan)氏は,文献調査から得られたファイルフォーマットの分析指標のうち,存続の危急性を評価するのにふさわしい指標を見出す取組みについて発表した。ライアン氏はまず,過去の文献から,138もの指標を得た。このうち,似たような意味合いの指標をまとめることで,「コスト」や「法的な制約」,「保存するためのスペース」など,約20の指標にまで絞り込んだ。さらに,何人かの専門家に複数回に渡り質問を投げかけることで意見の集約を目指すデルファイ法などを用いて,「再生するソフトウェアの入手可能性」,「仕様の入手可能性」,「(オリジナルのソフトウェア開発者以外の)第三者のサポート」という三つの指標を浮かび上がらせたのである。

 導き出された結果は,きわめて妥当なものであるといえるかもしれない。しかし,ファイルフォーマットの存続の危急性を評価するための指標を,裏付けをもって見出すことは,長期保存の取組みを進める中で,限りある労力や資金をどこに投入するかを決定する手助けとなるであろう。

 NDLにおいても,長期にわたり電子情報を保存し,利用の保証を実現することは大きな課題となっている。発表やワークショップを通じて,国際的な動向や各機関の取組みを知り得たことは,当館が今後進むべき方向を検討する上で,大変有意義であった。

 第12回iPRESは,米国ノースカロライナ州チャペルヒルで,2015年11月2日から6日まで開催される予定である。

関西館電子図書館課・本田伸彰

Ref:
http://ipres2014.org/
http://www.ipres-conference.org/
http://www.ands.org.au/
http://ils.unc.edu/ipres2015/
E990
E1109
E1354
E1601