E1563 – 2013年から2014年の図書館システム市場動向は?(米国)

カレントアウェアネス-E

No.259 2014.05.22

 

 E1563

2013年から2014年の図書館システム市場動向は?(米国)

 

 米国図書館協会(ALA)の機関誌であるAmerican Libraries誌の5月号に,米国を中心とした図書館システム市場動向について,ブリーディング(Marshall Breeding)氏による分析レポート“Library Systems Report 2014”が公開された。2002年から2013年までLibrary Journal誌に掲載されてきたレポート“Automation Marketplace”が,掲載誌と名称を変えて発表されたものである。

 2013年から2014年の初頭にかけての米国の図書館システム市場は,全般的には緩やかに成長しており,多くの企業では従業員数の増加が見られるという。市場動向の大きな特徴としては「競争と戦略的な提携」が指摘されている。本稿では,ブリーディング氏のレポートを参考に,主要企業の提携の状況と,図書館サービスプラットフォーム(Library services platform;E1282参照),統合図書館システム(ILS),ディスカバリーサービスの主な状況を紹介する。

 ビジネス動向の変化の特徴として,競争が激化し,企業の戦略的な提携・合併,企業内の事業統合が進んでいることが指摘されている。Innovative社は,2013年3月に,書誌サービスを提供するSkyRiver社を吸収合併し,同社と共同で起こしていたOCLCへの訴訟(E1083参照)を取り下げた。また,2014年4月には図書館システムベンダPolaris Library Systems社を買収した。SirsiDynix社は,2013年9月にEOS International社を買収し,その統合図書館システムEOS.Web ILSの顧客であった専門図書館や小規模な図書館約1,100館を同社の顧客層に加えた。ProQuest社はSerials Solutions社を完全に合併し,その製品も“ProQuest”ブランドに統一した。EBSCO社では,図書館向け事業EBSCO PublishingとEBSCO Information Servicesを統合するとともに,2014年初頭に,研究成果評価分析ツール“PlumX”を提供するPlum Analytics社を買収した。国際的な動向としては,スウェーデンの主要図書館システムベンダであるAxiellグループは,アーカイブの管理システムで知られるAdlib Information Systems社を2013年3月に,カナダを拠点とするSalego Design社を11月に買収し,ビジネスの対象地域と分野を拡大しつつある。

 図書館サービスプラットフォームは,電子媒体と紙媒体のコレクションの両方を管理するための新たな図書館サービスのプラットフォームを指し,サービス指向のアーキテクチャで,SaaS型で提供されるものと説明されている。そのシェアに関しては,ExLibris社のAlmaが31の新規契約を含む329館と契約,OCLCのWorldShare Management Servicesは92の新規契約を含む177館と契約,Innovative社のSierraは33の新規契約を含む113件の契約があり,計336館に導入している。Civicaは,ILSであるSpydus8の大幅な拡張を行い,図書館サービスプラットフォームとなるSpydus9を発表した。シンガポール国立図書館委員会が2013年8月にSpydus9をベータサイトとして利用している。オープンソースのKuali OLEは,カーネギー・メロン財団から88万ドルの新たな助成を得て,Version2の開発が予定されている。実際の導入館はまだ報告されていないが,2014年には,シカゴ大学,ベツレヘムのLehigh大学等が既存のシステムからKuali OLEへ移行を行う予定である。ProQuest社は図書館サービスプラットフォームとしてIntotaの開発を進めている。VTLS社もOpen Skiesの開発を行っている。ILSは,公共図書館などで依然として競争力を維持しており,要求主導型の選書(Demand Driven Acquisition:DDA)などの新しい購入モデルへの対応や,電子書籍の検索と貸出,また,各端末にインストールが必要なクライアントソフトからウェブベースのインタフェースへの移行等の分野に注目が集まっている。

 ディスカバリーサービスの分野においては,EBSCO社のEBSCO Discovery Service(EDS)がトップを走っており,5,612館が契約している。次いで,OCLCのWorldCat Local(1,717館),Ex Libris社のPrimo(1,407館),ProQuest社のSummon(673館)等が主要なサービスとして挙げられている。ProQuest社は,2013年の半ばにSummonのVersion2.0を公開し,インタフェースを更新し,検索式に関連した情報源を提示する検索ツール等を提供した。Ex Libris社はPrimoのVersion4.5をリリースし,請求記号によるブラウジング,日付検索や検索速度の改善等を行った。OCLCはFirstSearchとWorldCat Localの機能を統合した新サービスWorldCat Discovery Servicesを発表した。公共図書館においては,ILSベンダによるOPACのディスカバリー機能を拡張した製品が普及しているが,BiblioCommons社のBiblioCoreがこれらに置き換わるものとして存在感を増しており,ニューヨーク公共図書館やシアトル公共図書館など,大規模館でも導入されている。なお2013年10月には,米国情報標準機構(NISO)のOpen Discovery Initiative WGが図書館のディスカバリーサービスについての推奨指針のドラフトを公開し,標準化も進められている。

 ディスカバリーサービスの領域においても,戦略的な提携が多く見られる。ProQuest社のプレスリリースによれば,2014年1月にEx Libris社と,2014年2月にOCLCと,それぞれのディスカバリーサービスからProQuest社のCentral databaseを使用できるよう,また,ProQuest社のディスカバリーサービスから,両社のデータベースが利用できるよう契約を結び,連携を強めている。EBSCO 社のEDSではAPIを開発し,ILSの提供企業と提携して,各社のILSにEDSのコンテンツを組み込んでいる。なお,このレポートが公開される直前の2014年4月には,EBSCO社は,メタデータ提供方針を公開し,他社との相互協力を推進する方向を打ち出している。

関西館図書館協力課・篠田麻美

Ref:
http://librarytechnology.org/AutomationSystemMarketplace.pl
http://www.americanlibrariesmagazine.org/article/library-systems-report-2014
http://www.americanlibrariesmagazine.org/sites/americanlibrariesmagazine.org/files/content/Charts_MarshallBreeding.pdf
http://www.proquest.com/blog/2014/ProQuest-is-accelerating-the-interoperability-of-its-products-and-services-on-all-fronts.html
http://www.ebscohost.com/metadata-sharing-policy
http://www.ebscohost.com/newsroom/stories/ebsco-information-services-creates-open-policy-for-data-sharing
E1083
E1282