E1494 - Crowd4Uとヤフーがクラウドソーシングで共同研究

カレントアウェアネス-E

No.247 2013.10.24

 

 E1494

Crowd4Uとヤフーがクラウドソーシングで共同研究

 

 2013年9月13日,筑波大学を中心とするCrowd4Uプロジェクトとヤフー株式会社は,5年間の計画でクラウドソーシングに関する共同研究を開始することを発表した。クラウドソーシングとは,インターネットなどを通じて不特定多数の人々に仕事(タスク)を委託することであり,Crowd(群衆)とoutsourcing(外注)(もしくはsourcing)の合成語である。2006年にハウ(Jeff Howe)氏がWired magazineで書いた記事で広く知られることとなり,近年注目を集めている。

 クラウドソーシングが注目を集める理由は数多くあるが,日本において注目を浴びたきっかけの一つは,2011年の東日本大震災である。当時,Google Person Finderやsinsai.info等のクラウドソーシングによる活動が展開された。Google Person Finderはクラウドソーシングを利用した安否確認サービスであり,sinsai.infoは提供された情報を地図上に表示するサービスである。非常時に限らず,世の中にはクラウドソーシングが有効な問題は少なくない。例えば,下記のいずれかの条件が当てはまる場合,クラウドソーシングは問題解決のための唯一の現実的なアプローチとなる事がある。(1)人名の同定など,計算機では難しいが人間には比較的容易な作業が大量に必要とされる。(2)専用ソフトウェアを開発すれば解決できるが開発の時間がない,あるいは専任の職員がいれば解決できるが雇用できない。

 クラウドソーシングという言葉がカバーする領域は広いため,多様な視点から分類することができる。例えば,タスクを行う動機が金銭報酬などの外発的なものか,それとも内発的動機なのかで分類可能である。また,タスクの大きさが数日かかるような大きな仕事なのか,それとも1分などの短時間で終わる簡単なタスク(マイクロタスク)なのか,といった視点からも分類可能である。

 今回の共同研究では,特にマイクロタスク領域における研究を,筑波大学を中心とするCrowd4Uプロジェクトと,ヤフー株式会社が連携して推進する。ヤフー株式会社は2012年よりクラウドソーシングサービスを開始しており,大規模なクラウドソーシングサービスを展開している。また,Crowd4Uプロジェクトは2011年にはプラットフォームを公開し,2013年10月時点で18大学・組織からの協力を得て全国的なマイクロボランティアネットワークを構築している。どちらもマイクロタスクを用いたクラウドソーシング領域における産業界,学術界の重要なプレイヤーであることから,共同研究を進めるという今回の提携に至った。

 本共同研究の目標は“高度な分業による問題解決”である。様々な問題が生じた時に,迅速にその問題解決を行うための適切なマイクロタスクの集まりを設計することができれば,より速く適切に問題解決を行える可能性がある。これまでも,Crowd4Uでは,Web上にアップロードされた写真などを手がかりに,クラウドソーシングを用いて竜巻の経路推定を行う研究等を行ってきた。これは,竜巻の経路推定という難しい問題を,単純なマイクロタスクの集合で解決するというアプローチの一例である。このようなアプローチを,様々な問題に対して適用するための技術開発が,今回の共同研究の重要課題の一つである。

 Crowd4U上では現在いくつかのプロジェクトが動いているが,主要なプロジェクトの一つにL-Crowdプロジェクトがある。L-Crowdプロジェクトでは,図書館関係者,図書館情報学研究者,計算機科学の研究者が集まり,図書館情報学領域の諸問題に対して,ボランティアによるマイクロタスクによる解決方法を研究開発し,実践している。海外などでの図書館領域の問題に対するクラウドソーシングの事例(E1321参照)はあるが,我々の知る限り,L-Crowdは単に1図書館によるクラウドソーシングの適用事例を越えて,本領域におけるクラウドソーシングの科学的アプローチを試みる世界的にも例を見ないプロジェクトである。現在は,その第一弾として,国立国会図書館のデータを用いて,書誌情報のクリーニングにつながる作業を多くの参加者が行っている。ここでは,ISBNの使い回しなどに起因する書誌誤同定を発見するためのマイクロタスクが行われている。結果は公開し,図書館などのシステムでこのリストを使うことで,問題を回避することができるようになる。また,今まであまり判っていなかったISBNの重複の規模などについて知見が得られるという,学術的な価値も期待されている。

 L-Crowd/Crowd4Uへのボランティア登録(匿名可能)は,Crowd4Uのサイトから行う事が出来る。登録すると,各プロジェクトの貢献者としてサイトに掲載される。また,関連する各種情報も同サイトから入手可能である。今後,Crowd4Uは図書館情報学領域を含む様々な非営利・公益・学術の問題解決に利用されると同時に,クラウドソーシングを支える各種技術の研究基盤として利用される計画である。

(筑波大学知的コミュニティ基盤研究センター/
図書館情報メディア系教授・森嶋厚行)

Ref:
http://www.wired.com/wired/archive/14.06/crowds.html
http://crowd4u.org/
http://crowd4u.org/lcrowd
http://www.google.org/personfinder/japan/
http://www.sinsai.info/
E1321