カレントアウェアネス-E
No.238 2013.06.06
E1434
図書館の現場につなぐ(3):明治大学図書館情報学研究会
明治大学司書・司書教諭課程では,課程開設10周年を記念して,2009年6月に明治大学図書館情報学研究会(以下,研究会)を創設した。研究会の会員は,本学の卒業生と司書講習修了者であり,図書館関係者が大半を占める。図書館に関する会員相互の知識・技能を高めるとともに,交流と結束を深め,あわせて本学出身の図書館関係者の研究・人的ネットワークを構築することを目的としている。研究会では,勉強会(月1回),シンポジウム(年1回),例会(年2回)の企画・開催などを行っている。これらは,図書館員を目指す学生たちが,図書館や図書館員に関する情報を得られる貴重な機会となっている。以下では,こうした研究会の活動を紹介する。
勉強会は,研究会が発足する以前の2003年7月から,図書館員を目指す本学の学生と卒業生を対象に行われてきた。2009年の研究会発足を機に,以降は研究会の活動として実施することになり,本学の学生・卒業生のみならず,司書講習修了者も参加できるようになった。勉強会の参加者は,毎回5名前後であり,アットホームな雰囲気の中で進められている。勉強会では,卒業生を含む図書館員らに講師を依頼し,図書館界の最近のトピックスの紹介,図書館員の採用試験問題の解答・解説と出題傾向の把握,さらに模擬面接などを行っている。勉強会では,受験勉強の方法を知ることができるだけでなく,同じ目標をもつ仲間と知り合うこともでき,受験の際の情報交換にも役立っている。近年では,参加者の中から,若干名ではあるが図書館員として採用されるものが出てきており,成果を挙げている。勉強会で培われた人的ネットワークが,卒業後も図書館の現場において維持・継続していくことを期待している。
例会とシンポジウムでは,諸外国の図書館事情や普段司書課程の授業では取り上げきれないテーマを紹介している。例えば,2012年度の第1回例会では,東京ドイツ文化センター図書館との共催で「ドイツにおける青少年図書館サービス」と題した講演会を行った。その内容は,国立国会図書館員によるドイツの図書館事情の報告,ハンブルク青少年図書館(Hoeb4U)館長によるドイツの若者をターゲットにした同館のユニークなサービスの紹介などであった。また,同年度のシンポジウムでは,「文化資源としてのマンガ資料と図書館・博物館のサービス」と題して,マンガ資料に特化した専門図書館とミュージアムの関係者らを招き,所属機関における状況を紹介してもらった。
例年,第2回例会では,図書館員に内定した本学の学生・卒業生による報告と,主に本学出身の図書館員による職場や仕事の紹介を行っている。内定報告は,狭き門と言われる正規の図書館員の職を得られた貴重な体験談であり,さらに,図書館の現場の話は,図書館への就職希望者にとっては,具体的に図書館の内実を知ることのできる好機となる。
内定報告を聞いた学生たちからは,図書館員を職業として選択するに至った経緯や,具体的な勉強方法や面接の状況を先輩から聞くことができ,有益な情報を得られたという感想が寄せられている。学生たちは,進路決定や採用試験に関する情報に接することによって,図書館員を目指すための具体的なイメージを掴み,希望を見出すことができたようである。このように,第2回例会は,職業として図書館員を検討する学生たちを動機づけ,後押しするきっかけとなっている。
また,研究会の事務局が置かれている司書課程室では,正規の図書館員を目指す学生や研究会の会員を対象に,掲示や電子メールによる求人情報の提供,ならびに採用試験問題の収集・提供を通じた就職支援も行っている。
これまで述べてきた研究会での諸活動は,特に本学の学生の図書館や図書館員に対する興味・関心を喚起し,彼(女)らが職業として図書館員を検討する契機となってきた。しかしながら,研究会は創設5年目と日が浅いこともあり,その活動が学生や卒業生に周知されているとは言えない。そのため,学生に対しては,授業で積極的に勉強会などの紹介を行っている。卒業生に対しては,研究会のホームページとフェイスブックを作成し,活動の紹介に努めるとともに,図書館関係者を対象にしたメーリングリストを立ち上げ,研究会への参加を呼び掛けている。研究会では,引き続き,各種の活動を通して,冒頭で示した目的を達成するために,会員相互の交流の場となり,専門職としての知識・技能を高め合えるコミュニティへと発展することを目指していきたい。
(明治大学文学部・青柳英治)
(明治大学文学部・三浦太郎)
(明治大学文学部・齋藤泰則)
Ref:
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~shisyo/index.html
http://www.facebook.com/pages/明治大学図書館情報学研究会/113848698757950