E1365 - カレントアウェアネスサービスは情報の配信だけで十分か?

カレントアウェアネス-E

No.227 2012.11.29

 

 E1365

カレントアウェアネスサービスは情報の配信だけで十分か?

 

 “カレントアウェアネスサービス”とは,図書館などの情報機関が,新着図書の情報や,学術誌の最新号の目次情報などを利用者に提供するサービスである。書誌データベースの進化,電子メールの普及,RSSの登場など,図書館とその利用者を取り巻く情報環境の変化と共に新しい形が模索され,情報技術の援用によるサービスの向上が注目されてきた。

 2012年10月10日,Library Journal誌において,大学・研究図書館協会(ACRL)会長のベル(Steven J. Bell)氏が,自身の連載コーナー“From the Bell Tower”で,“Current Awareness Service and Academia Never Really Mixed”と題する記事を掲載した。カレントアウェアネスサービスに関するベル氏の思い出と理解を紹介しつつ,機械的で非個人的なサービスとなっている現状に対し疑問を投げかけるものとなっている。

 ベル氏は1970年代に図書館学を学んでいる。彼の理解によれば,当時の課程では,カレントアウェアネスサービスを,図書館のプロモーションの手段として構築する重要性について強調していた。彼は,社会に出て最初に働いた専門図書館において,専門家約50人に対するカレントアウェアネスサービスを構築したが,実際このサービスは利用者から感謝され,図書館業務の品質に対する信用を確立するのに役立ったという。

 一方,カレントアウェアネスサービスの現状はどうか。ベル氏は,医学図書館や法律図書館でカレントアウェアネスサービスの名称のもとに行われているものは,おおむね,学術雑誌の目次情報を自動配信するものとなっていることを指摘する。そして,彼の考え方によれば,これらは本物のカレントアウェアネスサービスではないという。本来は,サービスの受容者との関係構築に依拠するアナログなサービスであり,その品質は,個人の情報ニーズに対する深い理解に立脚しているものであると説いている。さらに,数千,数万という単位の利用者を抱える大学図書館では,このようなパーソナライズされたカレントアウェアネスサービスが代表的なサービスになることはないことに理解を示し,教員や役員などに対象者を限定してサービスを提供するのがよいとの考えを示している。

 RSSや検索エンジンのアラートサービス,あるいはソーシャルメディアなど,個人が最新情報を集めるのに役立つ技術は,多数存在する。これらの技術はこの数年の間に,もはや先進的なことではなく,多くの人にとって日常的なこととなっている。ベル氏は,これらの技術が存在してもなお,カレントアウェアネスサービスが,図書館員と利用者との関係を創りだすものだという考えを好んでいる。そしてむしろ技術があることは,良質な情報をタイムリーでかつパーソナライズされた形で提供することのできる図書館員たちにとって素晴らしいチャンスであると,前向きに捉えている。

 ベル氏が重要視する,関係を創るカレントアウェアネスサービスとは,現在の情報環境においては,どのような実現形態がありえるのだろうか。

 例えば,コーネル大学図書館では,サービスを管轄するカレントアウェアネス・チームが,最新情報の入手に役立つ各種のサービスやツールを整理して案内している。この中では,JournalTOCsのような学術雑誌の目次情報の自動配信サービスから,ソーシャルブックマークや文献管理ツール(CA1775参照)のような新しい情報収集手段まで,総合的に案内している。このチームでは,一方的な案内を行うだけでなく,相談にも応じており,関係構築に配慮したサービスのあり方の1つの試みとも見受けられる。

 なお,本誌が含まれる“カレントアウェアネス・ポータル”も,このカレントアウェアネスサービスという用語に因んでいる。その名が示すとおり,国立国会図書館という情報機関が図書館関係者に対して図書館に関する最新情報を届けることをサービスの基本とし,1979年の開始以来,カレントアウェアネスサービスとしての性格を意識して継続しつつ,その形態を発展させてきている。しかし読者との関係構築という側面を考慮すると,まだまだ改善の余地はありそうである。

(関西館図書館協力課・依田紀久)

Ref:
http://lj.libraryjournal.com/2012/10/opinion/steven-bell/current-awareness-service-and-academia-never-really-mixed-from-the-bell-tower/
http://www.library.cornell.edu/resrch/current
https://confluence.cornell.edu/display/CULAWARE/Home
http://www.journaltocs.hw.ac.uk/
CA1775