カレントアウェアネス-E
No.199 2011.08.25
E1208
スペインで電子出版物等の納本を定めた法定納本法が成立
2011年7月21日,スペイン下院議会において法定納本法(La Ley de Depósito Legal)が可決され,同法が成立した。7月30日付けの官報(Buletín Oficial del Estado)で公示され,6か月の期間をおいて施行される。
スペインの法定納本制度は,17世紀初頭にエル・エスコリアル王立図書館に対して,アラゴン王国およびカスティーリャ王国領において印刷された図書を一部ずつ受け取る特権が与えられたことに始まる。その後,1716年に国王フェリペ5世が,王立図書館(現在のスペイン国立図書館)に対して,上述の特権を拡大させた権限を与えた。1957年12月23日の政令によって法定納本に関する規則が定められ,法定納本制度は体系化された。特に,納本対象資料の多様性と,まだ存在しない類の資料についても将来を予見して予め納本対象とする等,当時としては先進的な法定納本制度であったという。現在の法定納本制度は,1971年10月30日および1973年2月20日の教育科学省令に基づくものである。
2011年7月21日と8月3日に,スペイン国立図書館(Biblioteca Nacional de España:BNE)は,法定納本法成立についてのプレスリリースを発表し,また,同館の法定納本部門の長であるオリヴァン(Montserrat Oliván)氏による解説資料を公開している。オリヴァン氏の解説資料によると,同法のポイントは,インターネット資料等の電子出版物を納本対象としたことと,納本を行う主体をこれまでの印刷者に代わり出版者としたことにあるという。
同法の前文では,EUからの提案・推奨に基づいて,物理的な媒体に収録された電子資料と同様に,インターネットのみで流通される資料についても納本対象として含めることが特に示されており,このための法整備が同法の一つの目的であることがうかがえる。これに関し,同法第2章第4条第3項では,これまでに納本対象として定められていた図書や雑誌,CD,DVD等に加えて,「その時々の技術が許容しうる,インターネットでは自由にアクセスできないあらゆる媒体の電子資料」および「そのコンテンツが時間によって変化しうるもので,ある時点でコピーを作成することが可能な,固定または収録できるウェブサイト」等が規定されている。なお,政府は今後1年以内にそれら電子出版物の納本体制を整えることになっている。
またこれまでの制度では,納本する主体が印刷者であったため,例えば著作集の場合には印刷者が必ずしもそのシリーズの出版物を全て所有しているわけではないことから,納本される資料に漏れが生じていた。オリヴァン氏は,新法によって納本する主体が出版者と定められたことで(同法第2章第6条第1項),出版物を確実に収集・保存できるようになると指摘する。関連して,納本を受け付ける自治州(Comunidades Autónomas)は,新法に合わせた納本のための行政手続き等を定める法整備を,新法の施行までの間にそれぞれ独自に進める必要がある。オリヴァン氏は,法定納本の確実な実施のためには,BNEおよび自治州の図書館が納本図書館としての責務を全うするとともに,新たに納本主体となった出版者側の協力を得ることが必要であるとしている。
Ref:
http://www.congreso.es/portal/page/portal/Congreso/Congreso/SalaPrensa/NotPre?_piref73_7706063_73_1337373_1337373.next_page=/wc/detalleNotaSalaPrensa&idNotaSalaPrensa=4663&anyo=2011&mes=7&pagina=1&mostrarvolver=S&movil=null
http://www.bne.es/es/NavegacionRecursiva/Cabecera/Prensa/noticias2011/AprobadaLeyDL.html?pagina=0
http://www.bne.es/es/NavegacionRecursiva/Cabecera/Prensa/noticias2011/doc/noticia_DL.pdf
http://www.bne.es/es/NavegacionRecursiva/Cabecera/Prensa/noticias2011/BOEDL.html
http://www.boe.es/boe/dias/2011/07/30/pdfs/BOE-A-2011-13114.pdf