カレントアウェアネス-E
No.198 2011.08.11
E1204
NDL,電子情報の長期保存に関する調査研究総括報告書を公開
国立国会図書館(NDL)は,2011年8月,同館ウェブサイトの「電子情報の長期的な保存と利用」ページにて「電子情報の長期利用保証に係る調査研究(平成18年度~平成22年度)総括報告書」を公開した。以下,本報告書の概要について説明する。
NDLは,図書や雑誌といった紙媒体の出版物と同様,収集した国内の電子情報についても,その保存と利用を長期的に可能とする責務を負っている。しかし,電子情報は,記録媒体の寿命や再生環境の旧式化等により再生できなくなる恐れがあるなど,紙に記録された情報に比べて脆弱である。そのため,NDLでは,2006(平成18)年度から2010(平成22)年度まで,電子情報を長期的に保存し,利用を可能とするための調査研究を実施してきた。本報告書は,これらの5か年にわたる調査研究について総括し,成果及び課題を提示するとともに,NDLの今後の取組の方向性について述べたものである。
調査研究の主なテーマは次の通りである。
- 電子情報を長期的に保存するためのシステムに必要な機能等の調査及びプロトタイプシステムの構築
- アナログ形式の録音・映像資料(カセットテープ,レコード及びビデオテープ等)のデジタル化に必要な技術要件及び手法等の調査並びにデジタル化の試行
- フロッピーディスクのマイグレーション(異媒体へのデータ移行)及びエミュレーション(旧式再生環境の仮想的な再現)に関する調査
調査の結果,電子情報を長期的に保存し,利用を可能とするために必要な機能や要素技術について,実現可能性及び実装方法が明らかになった。また,フロッピーディスクやカセットテープ等一部の資料については,その媒体変換の手法をある程度確立することができた。
これらの成果を踏まえ,NDLでは今後,どのような電子情報をどのように長期的に保存・利用可能とするかといった長期的な実施方針,予算・人員等の制約や技術的な実現可能性を考慮に入れた上での短・中期的な実施計画を策定し,その着実な遂行に向けた環境整備に取り組んで行く。また,こうした取組を効果的・効率的に進めるため,国内外の最新の動向を引き続き調査し,国内外の図書館及び関係機関との一層の協同を図っていく。
なお,ウェブサイトの同ページにて,NDLが各年度に実施した調査研究の概要及び報告書も公開している。各調査研究の詳細については,これらをご参照いただきたい。
(関西館電子図書館課)
Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/pdf/review_2011.pdf
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation_02.html
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