E345 – NDL,電子情報の長期的保存と利用に関する報告書を刊行

カレントアウェアネス-E

No.61 2005.07.06

 

 E345

NDL,電子情報の長期的保存と利用に関する報告書を刊行

 

 国立国会図書館関西館事業部電子図書館課は,「電子情報の長期的保存とアクセス手段の確保のための調査」について平成16年度の結果をまとめ,報告書を当館ホームページに掲載した。

 電子情報の保存と再生(CA1520参照)は技術的要素に依存しているため,紙媒体の情報に比べて非常に脆弱であるとされている。一例として,新しいOSや記憶媒体の出現により,古いソフトウェアが使えなくなるといった問題がある。これを解決するために,当館では平成14年度より様々な調査を行ってきた。3年目に当たる昨年度は,当館資料提供部電子資料課が所管する,平成11年度までに受け入れたWindowsおよびMS-DOS用CD-ROMについてマイグレーション(異種媒体へのデータ移行)とエミュレーション(旧式再生環境の仮想的な再現)を試行した。

 その結果,マイグレーションはほぼ問題なく行うことができたものの,完全な形でのエミュレーションを行うことができた資料はサンプル全体の3割に留まった。また,データの再生に必要なプログラムが,一般的な方法では既に入手できなくなっている資料もあった。このことから,電子情報の長期的な保存と利用に有効とされてきたエミュレーションが,現時点では包括的な解決手法にならないことが明らかになった。

 今回の調査ではCD-ROMのみを扱ったが,当館ではフロッピーディスクやゲーム機用カセット等も所蔵しており,これらを永続的に再生可能とするにはCD-ROM以上の困難が予想される。今回の結果を基にして,今後も調査を進めると共に,より具体的な保存手段についても検討する予定である。

Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation.html
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/pdf/report_2005.pdf
CA1520