E1180 – 2011年のISO/TC46国際会議<報告>

カレントアウェアネス-E

No.194 2011.06.09

 

 E1180

2011年のISO/TC46国際会議<報告>

 

 2011年5月2日から6日まで,オーストラリアのシドニーにおいて,ISO/TC46(国際標準化機構/情報とドキュメンテーション専門委員会)の国際会議(E942E1059参照)が開催された。TC46は,図書館を中心とした情報サービス提供機関における情報の作成や流通の円滑化を目的とした標準化を担当しており,個別のテーマを担当する分科委員会(SC)を下位に持つ。日本からは,国立国会図書館(NDL)からSC8(品質-統計と評価分科委員会)に上原が,SC9(情報源の識別と記述分科委員会)に河合が参加したほか,他機関からの3名を合わせ,計5名が参加した。以下,NDLから参加したSC8,SC9及びTC46総会について簡単に報告する。

 SC8は,統計と評価に関する標準化を担当しており,扱う国際規格ごとに作業部会(WG)を設置している。今回は,WG2(図書館統計),WG4(図書館パフォーマンス指標),そしてSC8内に昨年設置されたばかりのWG10(図書館のインパクト評価のための方法及び手続)が開かれた。日本のほかに,SC8の事務局を担当するドイツをはじめ,スペイン,フィンランド,ノルウェー,デンマーク,米国,ニュージーランド,中国から参加があった。

 「図書館統計(ISO2789)」の作業部会であるWG2では,第5版となるISO2789の改訂作業を進めている。2011年内に委員会原案をまとめるべく,改訂条項について議論した。参加型・双方向型のソーシャルメディアや携帯電子機器など,新しい情報手段を用いた図書館サービス等の文言につき,一部意見がまとまらず,9月にヘルシンキで行われるSC8の次の会合に議論が持ち越された。

 「図書館パフォーマンス指標(ISO11620)」の作業部会であるWG4では,改訂第3版の委員会原案を2012年春に作成することを目指している。WG2で作業中の図書館統計に関する改訂条項を反映させる必要があること,今回は開かれていないWG7で扱う「国立図書館のための評価指標(TR28118)」(CA1653参照)についても,関連する部分を見直す必要があることなどを確認した。

 WG10では,既存の図書館に関する国際規格ではまだ把握しきれていない,図書館のインパクト(効果)を測定する方法についての規格の策定を目指している。2011年末までに作業原案を作成するため,その骨格となる図書館のインパクトの定義,インパクト評価の課題,指標や測定方法等について意見交換をした。特に,図書館がコミュニティや国の経済に及ぼし得る経済的なインパクトについては,定義等が難しいが盛り込むべき重要事項との認識で一致し,詳細は次の会合までの課題とされた。

 SC9は,情報の識別子の標準化を担当している分科会である。事務局は米国で(議長は韓国人),参加者は,日本のほか,近年積極的な参加が目立つ中国,中心メンバーである英国やフランス等から集まった。2010年に引き続き,識別子同士の連携が大きなテーマとなっていた。それぞれの識別子には,番号ごとに付与するメタデータが規定されているため,たとえば,「ISMNの作者」と「ISBNの作者」に共通のIDが付与されていれば,リンクが可能になる。そのために,今後はメタデータの中に「作者等の名称」のIDを含んでいくことが決議された。また,識別子同士の関係についてセマンティックウェブを活用して表現する方法を検討するグループを作ることも決議された。運用面においては,国際機関に登録をしていない団体が,識別子(に見える数字)を無断で発行している問題が取り上げられた。

 TC46総会では,ISO本部や各SCからの報告,リエゾン関係にあるIFLAの目録部門からのメッセージの紹介などがあった。ISO本部からは,「識別子(コード)」についてのわかりやすい図がISOの刊行物に掲載されたとの報告があった。普段は意識しなくても,日常生活のあちこちに「識別子」が用いられている。そのうち,情報の識別子を扱うのが,TC46,特にSC9である。図の右上の解説には,“Hundreds of ISO code standards routinely contribute to saving time, space and energy”とあるが,この言葉は識別子に限らず様々な規格に当てはまる,いわば「国際規格」というものの本質をあらわしているのではないか。

 2012年のISO/TC46の大会はベルリンで開催される予定である。

(総務部企画課・上原有紀子)
(収集書誌部収集・書誌調整課・河合将彦)

Ref:
http://www.iso.org/iso/iso_catalogue/catalogue_tc/catalogue_tc_browse.htm?commid=48750
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/geppo/pdf/geppo0710.pdf
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004759541/
http://www.iso.org/iso/iso-focusplus_centerfold_11-04.pdf
CA1653
E942
E1059