E1148 – Europeana,2011-2015年の戦略計画を公表

カレントアウェアネス-E

No.188 2011.02.17

 

 E1148

Europeana,2011-2015年の戦略計画を公表

 

 2011年1月14日,欧州デジタル図書館“Europeana”が2011-2015年の戦略計画“Strategic Plan 2011-2015”を発表した。戦略計画の冒頭では,Europeanaの目的を,文化への新たなアクセス方法を提供し,欧州の社会的経済的発展を促すこと,と明確にしている。そしてその目的の達成には,デジタル化における知的所有権法制やデジタル化事業を加速することの必要性,長期的な財政基盤の確保が課題であると指摘し,戦略計画ではそれらの課題に立ち向かうためのアウトラインを示している。戦略計画は,次の4つのキーワードからなる戦略トラックで解説されている。

  • 集約すること(Aggregate)
     Europeanaは,欧州文化遺産のコンテンツのオープンかつ信頼できる情報源を構築する。そのために,古代から現代まで,欧州の多種多様な文化を表わす様々なコンテンツにアクセスできる必要がある。国や機関を問わず,コンテンツ提供機関からEuropeanaに効率的にコンテンツを登録するための仲介者であるコンテンツアグリゲーターのネットワークを拡大させたり,コンテンツ提供機関に対してEuropeanaのガイドラインの説明や研修の提供等を通じて,コンテンツのメタデータの質を高めたりする取組みを行う。
  • 支援すること(Facilitate)
     Europeanaは,知識の伝達やイノベーション,アドヴォカシーを通じて,文化遺産保存機関を支援する。そのためには,Europeanaと,図書館員や学芸員,アーキビスト等との間で,デジタル環境にとっての共通の課題について連携を深めていく。Europeanaのコードをオープンソースとして提供し,その再利用を広く促すことで,ツールやサービス機能の開発速度を速める。Europeanaが20世紀の孤児作品(orphan works)を提供できるようにするため,欧州委員会(EC)や欧州各国の政策担当者等に働きかけていくことで,アドヴォカシーを行うという役割を強化していく。
  • 普及させること(Distribute)
     Europeanaは,利用者がいつでもどこでも文化遺産を利用できるようにする。そのために,検索エンジンの最適化,多言語対応やモバイルインターフェイスの開発等を通じてEuropeanaポータルの機能を高めたり,利用者自身がEuroepanaのコンテンツを再利用できるように,EuropeanaのAPI等の利用を利用者に促すことで,コンテンツが利用者のワークフローに加わるようにする。また,Europeanaのコンテンツを教育や観光といった新たな領域で利用されるようにするため,関係機関との連携を強化する。
  • 巻き込むこと(Engage)
     Europeanaは,利用者が文化遺産に触れるための新たな方法を開拓する。そのために,ポータルサイトのユーザビリティの向上を行ったり,現在の利用者あるいは将来の利用者のニーズ調査を実施したりすることで,利用者の経験を高めていく。また,コンテンツや機能等についてオンラインで議論できる場を提供する等,ウェブ2.0のツールの利用やソーシャルメディアプログラムを拡大させていく。さらにEuropeanaは,英国オックスフォード大学が進めている第一次世界大戦の資料デジタル化プロジェクトである“Great War Archive”のような,利用者主体のデジタル化プロジェクト等との連携を通じて,キュレーター,コンテンツ,利用者の三者の間に新たな関係を築く仲介者としての役割を果たしていく。

Ref:
http://version1.europeana.eu/c/document_library/get_file?uuid=ffba031f-b320-4119-b9bc-8412890fd5a5&groupId=10602
http://www.europeana.eu/portal/