E1108 – デジタル時代における子どもの読書の実態(米国)

カレントアウェアネス-E

No.181 2010.10.21

 

 E1108

デジタル時代における子どもの読書の実態(米国)

 

 児童向けの出版・教育などを手掛ける米国のScholastic社が,2010年9月に,楽しみとしての読書に関する調査報告書“2010 Kids & Family Reading Report”を公表した。同様の調査は過去にも2回行われており,今回は2008年以来2年ぶりとなる。調査では全米の6歳から17歳までの子どもとその親が対象になっており,1,045組(2,090人)から回答が得られたという。報告書には,調査結果が「デジタル時代の読書」「読書の価値」「親の役割と選択の力」という3つのパートに分けてまとめられている。

 「デジタル時代の読書」の冒頭では,子どもたちがデジタルデバイスを使っていることの影響についての調査結果がまとめられており,回答した多くの親が,読書の時間に限らず,体を動かす活動や家族で過ごす時間などが減っていると感じているという。また,子どもの年齢層が高いほど,読書に費やす時間は少なく,逆にインターネットや携帯電話を使う時間が多くなっており,回答した親の56%が,デジタルデバイスが子どもの読書に対する関心を削ぐのではないかとの懸念を抱いている。そのほか,回答した子どもの25%はデジタルデバイスで読書をしたことがあるという結果や,66%の子どもが読書に際しては電子書籍よりも印刷版の本を読みたいと回答したという結果も示されている。

 「読書の価値」では,読書の重要性についての調査結果がまとめられている。楽しみとしての読書の重要な効果として,本が想像力を豊かにしてくれることを選択した回答者が最も多く,次いで登場人物などが刺激を与えてくれること,新しい情報を提供してくれることと続いている。しかし,楽しみとしての読書を重要であると回答した親が89%に達している一方で,同様の回答をした子どもは51%にとどまっている。さらに,62%の女の子が読書を重要であると回答したのに対して,男の子の同様の回答は39%と,性別による差も示されている。読書が好きかどうかという設問でも,女の子のほうが男の子よりも読書を好んでおり,この傾向は回答した親が子どもだった頃も同様のようである。

 「親の役割と選択の力」では,子どもたちの読書や本の選択に親がどういう役割を果たしているかを示している。親が週に5~7日,本を読むという熱心な読書家(frequent reader)である場合の方が,子どもが熱心に読書をする割合は高くなっている。また,子どもたちが本を選ぶときにアドバイスをくれる人物としては,教員・図書館員(57%)や友人(56%)よりも親(73%)が多い。しかしながら,直近に読んだ本については77%の子どもが自分で選択したと回答しており,子どもたちが自分で選択した本を最後まで読み切る割合は91%と高い数値を示している。

 2010年の報告書では,過去2回の報告書には見られなかった,回答した親や子どものコメントが掲載されている。「私は情報を得るために本を必要としていたが,息子は情報を得るためにウェブに行くことができる」「娘には,私の子どもの頃のように楽しみとしての読書をするための時間がない」という親のコメントや,「インターネットがダウンしたから庭の木の下で本を読んだ。3時間も熱中した」という子どものコメントなど,デジタル時代という背景を反映したものが多く見られる。

Ref:
http://mediaroom.scholastic.com/kfrr
http://mediaroom.scholastic.com/themes/bare_bones/2010_KFRR.pdf