E1080 – 公共テレビのデジタル番組の保存プロジェクトの報告書(米国)

カレントアウェアネス-E

No.176 2010.08.05

 

 E1080

公共テレビのデジタル番組の保存プロジェクトの報告書(米国)

 

 ニューヨークの公共テレビ局WNET,ボストンの公共テレビ局WGBH,全米規模の公共放送ネットワークPublic Broadcasting Service(PBS),ニューヨーク大学によって組織された,公共テレビのデジタル番組の保存に関するプロジェクト“Preserving Digital Public Television”が,2010年7月6日に最終報告書を公表した。このプロジェクトは,米国議会図書館(LC)が主導する全米デジタル情報基盤整備・保存プログラム(NDIIPP)の援助を受けて2004年9月から2010年3月まで活動していた。

 報告書は,プロジェクトが目標として掲げた,ボーンデジタルのテレビ番組の保存用リポジトリのプロトタイプの構築,標準的なメタデータやフォーマット等の開発,長期保存の対象となる番組を選定する基準の提言,長期的なアクセス保証と継続的保存に係る論点の整理,デジタル保存の重要性の広報,等について活動の内容と成果をまとめている。なお,このプロジェクトにはアナログ番組のデジタル化は含まれていない。

 プロジェクトでは,適正なメタデータがコンテンツの検索を可能にし長期的なアクセスを保証するものであるとして,メタデータ標準の研究が重要視された。公共のラジオやテレビ用に策定されたPBCore等のメタデータ標準の分析と評価が行われており,放送業界で使われているそれらのメタデータ標準が,LCの視聴覚資料保存センター(CA1711参照)で導入されているメタデータ標準と親和性を持つかどうかが問題になってくる,とも記されている。

 プロジェクトの中心に位置付けられているのが,OAIS(Open Archival Information System;CA1489参照)準拠のリポジトリの実践・検証である。ニューヨーク大学の電子図書館技術サービスチームが構築したこのリポジトリは,様々なタイプのコンテンツを保存するために「コンテンツ・ニュートラル」なシステムとして設計されている。コンテンツのサンプルとして,様々な画質の番組を,様々なフォーマットで,様々なメタデータを伴った形で収録することができ,保存環境の構築には成功したとされている。ただし,リポジトリの機能を自動化するためには,標準的なメタデータやファイルフォーマットが不可欠である,と指摘されている。

 今回のプロジェクトの最大の成果として,公共放送業界に対して,テレビ番組のデジタル保存が任意のものではなく必須のものであるとの位置づけを示すと共に,保存することの重要性や保存のための基本的な行程を示すことができたことが挙げられている。

Ref:
http://www.thirteen.org/ptvdigitalarchive/files/2010/07/FinalReport.pdf
http://www.thirteen.org/ptvdigitalarchive/uncategorized/final-report-preserving-digital-public-television/124/
CA1489
CA1711