E1008 – 公共図書館が廃刊になった地方紙アーカイブの管理者に(米国)

カレントアウェアネス-E

No.164 2010.01.20

 

 E1008

公共図書館が廃刊になった地方紙アーカイブの管理者に(米国)

 

 米国ミシガン州・アナーバーの地方新聞“The Ann Arbor News”は2009年7月,174年の歴史に幕を下ろし,その役割を地方ニュースウェブサイト“Ann Arbor.com”に譲った。そして2009年12月には,アナーバー地域図書館(Ann Arbor District Library:AADL)と“The Ann Arbor News”のオーナーであるHerald Publishing社との契約に基づき,AADLが“The Ann Arbor News”のアーカイブの管理者となることが発表された。

 AADLが管理することになったアーカイブには,何千枚もの写真とネガ,“The Ann Arbor News”のスタッフが何十年にも渡り維持してきた切抜きファイルのハードコピー,製本された1800年代以降の“The Ann Arbor News”と“Ypsilanti Press” といったものが含まれる。AADLは契約により,100万点以上の資料から成るこのアーカイブの一部をデジタル化する権利を得た。資料の目録作成等の組織化だけで最低一年間を要し,その作業後にデジタル化の範囲や順序を決定することになるが,AADLは最終的に,写真や切り抜きの多くをデジタル化し,オンラインで検索・閲覧可能な形で公開する計画である。

 ただし,デジタル化の権利を巡っては,両者の間で複雑な契約が交わされている。AADLに認められたデジタル化の権利は限定的なもので,新聞全体のデジタル化の権利はHerald Publishing社が保有している。AADLは製本された古い新聞や,商業的価値のあるミシガン大学のアメリカン・フットボールやバスケットボールに関連する写真をデジタル化できないことになっている。

 今回の件に対し,“The Ann Arbor News”の元出版者で“Ann Arbor.com”の現取締役副社長であるチャンピオン(Laurel Champion)氏は,「私たちは新聞のアーカイブを,管理が行き届き,コミュニティの人々のアクセスも確保できる場所に置きたいと考えていました。AADLはパーフェクトな場所で  す」とコメントしている。一方AADLの館長,パーカー(Josie Parker)氏は,「図書館がアーカイブの管理者としてふさわしいと“The Ann Arbor News”のオーナーが考えてくれたのは,非常に喜ばしいことです。今後,他の新聞もこの先例に倣ってくれるよう願っています」とし,プロジェクトへの期待を表明している。

Ref:
http://www.libraryjournal.com/article/CA6712682.html
http://www.annarbor.com/news/ann-arbor-news-archives-will-be-made-available-through-ann-arbor-district-library/
http://annarborchronicle.com/2009/11/18/library-nears-deal-on-newspaper-archives/