CA693 – DIALOGがCASを告訴 / 坂本博

カレントアウェアネス
No.134 1990.10.20


CA693

DIALOGがCASを告訴

データベース提供業の最大手DIALOG社が,化学情報サービスであるChemical Abstracts Service(CAS)を提供している,アメリカ化学会(ACS)を独占禁止法違反で告訴した。データベース作成のみを行っていたACSが提供業にも乗り出し,日本のJICST,西独のFIZと共にSTN(Scientific and Technical Information Network)を創設し,CASの情報をこれを通じてのみ提供してDIALOGに扱わせなかったことは,独占を禁じたシャーマン法に違反しているとして,同社が1億5千万ドルを超える損害賠償(懲罰的なものを含む)と,独占行為の差止命令を求めたものである。著作権自体が独占使用を認めるものであり,その行使が独禁法違反になることはあり得ないが,同社はACSのような政府から補助金をもらっている非営利法人には,適正な対価により一般に情報を提供する義務があると主張している。一方ACSは,現在は補助金を受けていないし,過去に受けた際の条件はすべて満たしたという。

この訴訟は商事会社と非営利法人との間のものであり,図書館は関係していないが,この情報が金に結びつく時代にあっては(この訴状のコピーを別の情報会社が$20で売り出した)何時おこってもおかしくない事件であり,図書館の善意の無償行為が得べかりし利益を損ったとして営利企業から訴えられる可能性を示したものともいえる。Library Journalのエディトリアルも,競争は値下げにつながることが多いが訴訟とは金がかかるものであり,この訴訟が図書館界にプラスになるとは思えないとしている。

坂本 博

Ref: Dialog files suit against ACS. Library Journal 115 (12) 18, 1990.
Dialog files suit against ACS. Advanced Technology Libraries 19 (7) 1, 9-10, 1990.