CA1774 - 関西館の10年:構想段階と現況とを対比して / 南 亮一, 木目沢 司, 鈴木昭博, 渡邊幸秀

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カレントアウェアネス
No.313 2012年9月20日

 

CA1774

 

 

関西館の10年:構想段階と現況とを対比して

 

関西館図書館協力課長:南 亮一(みなみ りょういち)*1
関西館電子図書館課長:木目沢 司(きめざわ つかさ)*2
関西館文献提供課長:鈴木昭博(すずき あきひろ)*3
関西館アジア情報課長:渡邊幸秀(わたなべ ゆきひで)*4

 

1. はじめに

 国立国会図書館(NDL)関西館は、2002年10月7日に開館して丸10年となり、この間の総括を通じて、今後の発展を期すべき時期を迎え、NDL全体として、その検討に取り組んでいる最中である。

関西館は、1982年の検討着手以来20年もの歳月を経てようやく実現した。その構想としては、1991年8月に策定された「国立国会図書館関西館(仮称)設立に関する第二次基本構想」(1)(以下「第二次構想」という)が基礎となっており、これをほぼ具体化して実現する形で関西館が誕生している。開館に当たっては、電子図書館事業、図書館協力事業、利用者サービス(遠隔利用サービス、アジア情報サービスおよび館内利用サービス)を、関西館の三つの柱として設定(2)し、これまで活動を進めてきた。

 本稿では、2012年10月に関西館の開館10周年を迎えるにあたり、これらの三つの柱を切り口として、当初に「第二次構想」が掲げた目標との対比を通じ、実務担当者の立場から、到達している現況及び今後の展望を整理したものである。

 

2. 電子図書館事業

2.1 開館時の目標

 NDLの電子図書館事業は、上記「第二次構想」に遡る。その後、1998年の「国立国会図書館電子図書館構想」(3)、2000年の「電子図書館サービス実施基本計画」(4)を経て、2004年の「国立国会図書館電子図書館中期計画2004」により、NDLの電子図書館事業の三つの目標、「デジタル・アーカイブの構築」、「情報資源に関する情報の充実」、「デジタル・アーカイブのポータル機能の開発」が掲げられた。関西館は、それらのうちのデジタル・アーカイブの構築に主要な役割を果たしてきた。デジタル・アーカイブは、次の三点を目標として構築することとした(5)

①利用における地域的格差を改善し、利用者の利便性を高めるために当館所蔵の資料の電子化を推進する。
②オンライン系情報資源を広く収集し、消失を防ぐ。
③収集した資料の永続的な利用確保に力を注ぐ。

 

2.2 NDL所蔵資料のデジタル化の進展

 NDL所蔵資料のデジタル化は、1998年の「電子展示会」と2000年の「貴重書画像データベース」の提供に始まる(6)。明治期以降に発行された図書の電子化は、2002年10月の関西館開館と同時にサービスを開始した「近代デジタルライブラリー」(7)で図書約33,000点をインターネット公開したのが始まりで、その後、毎年数万点ずつ公開資料数を増やしてきた(8)

 2009年の著作権法改正(著作権法第31条第2項の追加)により、NDLでは、著作権保護期間内の資料でも原本を保存するためのデジタル化を行い、NDLの施設内でデジタル化資料を提供することができるようになった。さらに同じく、2009年度の補正予算で大規模なデジタル化予算が計上されたことからデジタル化は一挙に進み、2012年7月現在、表1に掲げるデジタル化資料を提供している。これらの資料は、2011年度に新しくサービスを開始した「国立国会図書館デジタル化資料」(9)で利用することができる。これらのうち、インターネットで利用可能な図書・雑誌は「近代デジタルライブラリー」でも継続して公開している。

 

表1 デジタル化資料の公開点数(単位:万点)
資料種別 デジタル化資料
インターネット公開 NDL施設内限定公開 合計
古典籍 7 2 9
和図書 30 59 89
和雑誌 0.5 102 102.5
官報 2 2
博士論文 1.5 12.5 14
合計 41 175.5 216.5

 ※「NDL施設内限定公開」の資料は、東京本館、関西館、国際子ども図書館内のみで利用可能である。
出典:国立国会図書館のウェブサイト「資料デジタル化について」をもとに作成(10)

 

2.3 デジタルコンテンツの図書館向け配信

資料のデジタル化に関する最近の動きとして、「歴史的音源の公共図書館送信」、「視覚障害者等へのDAISYデータの送信」、「デジタル化資料の公共図書館への送信」の3つの図書館向け送信サービスについて説明する。

 「国立国会図書館デジタル化資料」では2.2で述べた資料の他に、歴史的音盤アーカイブ推進協議会(HiRAC)によってデジタル化された、1900年初頭から1950年頃に国内で製造されたSPレコードおよび金属原盤等に収録された音楽・演説等を「歴史的音源」(15)として2011年6月から配信している。現在、インターネットから利用できるのは600点程度であるが、NDL施設内およびNDLに申請して所定の要件を満たした公立図書館(16)では約26,000点の音源すべてを利用することができる(17)

 また、「視覚障害者等サービス実施計画」(18)に基づき、2013年度以降、DAISY形式のデータの収集を開始し、配信を行う予定である。これにより、収集したDAISYデータを、全国の公共図書館、大学図書館や視覚障害者等の個人宅で利用していただくことが可能となる。

 さらに2012年6月20日、絶版資料の図書館等への自動公衆送信等を含んだ改正著作権法が成立し(E1303参照)、2013年1月に施行される。これにより、表1にあるNDL施設内限定公開資料のうち絶版資料については、全国の公共図書館、大学図書館でも利用することが可能となる。

このようにNDL館内限定で利用できる資料が、公共図書館、大学図書館でも利用できるようになることで、デジタル・アーカイブ構築の目標の一つ目にある「利用における地域間格差の改善」がさらに進展しつつある。

 

2.4 インターネット資料の収集

 デジタル・アーカイブ構築の二つ目の目標であるオンライン系情報資源の収集を実現するため、インターネットで公開されている情報を収集する「インターネット資源選択的蓄積実験事業(WARP)(現インターネット資料収集保存事業)」を関西館開館直後の2002年11月に開始した。

 インターネット資料の収集は当初実験事業としてウェブサイトの発信者の許諾を得て行われてきたが、2009年7月に国立国会図書館法が改正され、国、地方公共団体、独立行政法人等の公的機関が一般に公開しているインターネット情報については、NDLは、発信者の許諾を得ずに収集、保存できることになった(11)。この法改正により、2012年3月末までに、収集したサイト数は7,053件、収集回数は延べ45,662回、データ量は173TBに達している(12)

 インターネット資料の収集は、自動収集プログラム(収集ロボットと呼ぶ)(13)で行っているが、インターネットには収集ロボットでは収集できないデータベース等の「深層」に格納された情報もある。NDLではそのような「深層ウェブ」を、タイトル、作成者、分類、内容説明等から検索し、案内するサービスとして、Dnavi(国立国会図書館データベース・ナビゲーション・サービス)を提供しており、2012年7月現在約16,500件のデータベースの検索が可能となっている(14)

さらに、2012年6月15日に、国立国会図書館法の一部を改正する法律が成立し(19)、インターネット等で出版される電磁的記録で、図書または逐次刊行物に相当するもの(いわゆる電子書籍や電子雑誌等)の収集を2013年7月から開始することとなった。ただし、当面は、有償またはDRM(Digital Rights Management System:技術的制限手段)が付されたものは当面収集しないこととされている。

 

2.5 今後の展望

 以上のようにデジタル・アーカイブ構築の三つの目標のうちの二つは順調に進展してきた。しかし三つ目の目標である「収集した資料の永続的な利用確保」については課題が残っている。NDLでは、「電子情報の長期的な保存と利用」をテーマに、調査研究を行ってきた(20)。しかし、大規模に収集した電子情報の長期利用の対策を本格的に実施するに当たっては課題も多く残されていることが分かった(21)。今後、2011年10月に設立された東京本館の電子情報部とともに、この課題の解決を図っていく必要がある。

 新局面として、「東日本大震災アーカイブ(仮称)」(22)の構築が開始されたが、関西館は震災に関するインターネット資料の収集を強化する等の任務で活動を進めている。

 

3. 図書館協力事業

3.1 当初の構想

 関西館設立後の図書館協力事業の在り方については、「第二次構想」において触れられており、①図書館に対する文献情報の提供、②図書館情報ネットワークの形成、③研究開発・研修交流プログラム、④資料の保存協力が四本柱として掲げられていた(23)。①には「図書館の図書館」としての情報提供バックアップ機能が、②では全国的な文献所在情報サービスの提供と館種を超えたオンライン相互協力システムの構築や各館システムのゲートウェイサービスが、③では共同研究開発施設や研修交流施設を設置の上での研究開発・研修交流事業の実施が、④では他館の不用資料を活用する「共同保存利用プロジェクト」の推進、保存修復センターでの他館資料の修復、資料保存職員向けの研修、マイクロ・ネガ・フィルム保存庫の他館との共同利用が、それぞれ掲げられていた。

 

3.2 「第二次構想」の構想と現状との比較

 この「第二次構想」による構想と現状とを比較すると、以下のとおりである。

 ①については、NDL-OPACの一般公開と申込機能の搭載、主に関西館所蔵資料を用いた迅速な処理方法の確立による円滑化等により、一層の充実強化が図られたといえる(4.1参照)。また、「歴史的音源」事業等のように、電子図書館事業の枠組みの中で、一次情報を図書館に直接送信する形態の事業も登場しつつある(2.3参照)。他方、文献要求に対して他館に協力を求めて解決を図るというサービスは実現されていない。

 ②については、NDL-OPACの一般公開と申込機能の搭載、総合目録ネットワーク事業(24)やレファレンス協同データベース事業(25)の実施、国立国会図書館サーチ(26)の提供により実現されている。

 ③については、共同研究施設や共同研修交流施設の設置は実現しなかったものの、図書館分野の調査研究事業(27)、研究開発事業(28)の実施とその成果の事業化または共有、国際的な研修プログラム(29)や様々な国内向けの研修プログラムの実施という形で実現している。なかでも国内向けの研修プログラムについては、当初想定されていた集合型よりも更に発展した形である、インターネットを使った遠隔型の研修が行われている(30)

 ④については、保存修復事業は、東京本館において実施している。なお、「第二次構想」にある「共同保存利用プロジェクト」は、総合目録データベースの整備等による図書の相互利用が可能となった現在では必要性に乏しくなったこともあり、実現していない。また、マイクロ・ネガ・フィルム保存庫は関西館に設置されているが、他館のフィルム保存は行っていない。

 このように、国内外の図書館や図書館関係団体との連携型の施策は、そのほとんどが当初想定してた形ではなく、別の形で実現しているといえる。また、その他の部分については、「第二次構想」で示された骨格を具体化しただけでなく、電子図書館をめぐる様々な技術革新を踏まえ、当初の構想よりも一層発展した形で実現しているものと評価できる。

 

3.3 今後の展望

 以上のとおり、図書館協力事業については、情報ネットワークをめぐる状況の進展を背景として、その多くのものが、当初の構想を上回る成果を挙げているといえる。

 当館の図書館協力事業は、今後においても、情報ネットワークを用いた遠隔的な形をとる方向に進むものと思われる。ただ、各館のニーズに沿った形での図書館協力の実施には、各館の協力担当者との人的ネットワークの構築が必要と考える。図書館協力に関する相談窓口を設け、そこで各種照会に対応する等で実績を積み上げるという方法が考えられる。

 今後は、「第二次構想」において掲げられた相互協力の実現を目標として、主に情報ネットワークを用いる方法に人的ネットワークを構築する方法を加味する方法により、各種施策を行うことになるものと考える。

 

4.利用者サービス

4.1 遠隔利用サービス

 「第二次構想」において、関西館は「利用者がどこにいても、いつでも、必要とする文献や情報を、利用者に迅速・確実に送り届けるサービス」を行う文献情報の発信拠点としての役割が期待されていた。そこでは、文献情報の発信の具体例として、①図書館に対する資料の貸出し(図書館間貸出し)(31)と、②図書館および個人への遠隔複写サービスで構成される遠隔利用サービスが中核的な業務の一つとして挙げられていた。

 このような構想を受け、開館当初から、関西館は①と②のサービスの窓口を担うこととなり、東京本館と連携してサービスを行ってきた。

 関西館における各サービスについて、開館当初である2003年度と、統計数値がある直近の年度である2010年度の数値を比較すると表2のようになる。

 

表2 関西館遠隔利用サービス
  図書館間貸出制度加入館数 図書館間貸出点数 遠隔複写処理件数(論文単位)
2003年度 3,167館 1,361点 66,293件
2010年度 3,597館 5,255点 119,103件

 出典:『国立国会図書館年報』の平成15年度版および平成22年度版ならびに内部資料に基づき作成(32)

 

4.1.1 図書館間貸出し

 関西館の貸出点数は、開館当初と比べ増加しており、2008年度以降は5,000点を超えて推移している(33)。開館当初と比べ増加しているのは、総合目録ネットワークシステム(34)により公共図書館同士の相互貸借が活発に行われる中で、図書館間貸出しの意義を再認識させるものであるといえる。

 また、2009年度から、京都府内の図書館間貸出し制度加入館に対する図書館間貸出し資料の受渡しについて、関西館所蔵資料に限って、京都府立図書館が運行する連絡協力車を通じて行えるようにする等、近隣の図書館等との連携も着実に強めてきた(35)

 

4.1.2 遠隔複写サービス

 関西館の遠隔複写サービスの処理件数は、開館当初と比べ増加し、2005年度以降は100,000件を超えて推移している(36)。複写物を提供できるまでの期間についても、2010年度は3.9日となっており、提供の迅速化にも努めてきた。

 また、近年では電子媒体の資料が増加していることにともない、電子媒体の資料から紙への出力(プリントアウト)が伸びていることを開館後の顕著な変化として挙げることができる。プリントアウト・サービスは2006年度に開始されたが、関西館での処理件数は、2010年度においても349件にとどまっていた(37)。しかし、国立国会図書館デジタル化資料と電子ジャーナルのプリントアウトの受付を2011年度に開始したことにともない、同年度には5,538件となり、大幅な伸びを示している(38)

 

4.1.3 今後の展望

 上記のように、遠隔利用サービスについては、開館当初と比較すると、利用件数を伸ばしており、遠隔利用サービスの拠点としての所期の役割を一定程度果たすことができたのではないかと思われる。しかし、図書館間貸出しにせよ遠隔複写にせよ、貸出・処理数は開館当初に比べ増加しているものの、ここ数年は横ばい状態である。来館利用にとっても有用な和図書や雑誌記事索引採録誌等需要の多い和雑誌等の資料を今後とも積極的に収集することにより、遠隔利用サービスの利用促進を図りたい。

 さらに、遠隔利用サービス(とりわけ図書館間貸出し)は他の図書館等との連携協力により成り立っている。今後より一層、他の図書館等との連携協力を強め、より多くの利用者に向けて求められる情報や資料を効率的に提供する可能性を広げていきたい。

 

4.2 アジア情報サービス

4.2.1 経緯

 NDLにおけるアジア情報専門の資料室は1948年の創立時の中国資料閲覧室にまで遡る。その後幾度か組織・名称の変更はあったが、1986年からのアジア資料室時代には、アジア言語資料の選書、整理、保管、利用を一貫して行う体制が整えられていた(39)

 「第二次構想」において関西館の基本機能の一つとして「アジア太平洋文献情報センター機能」が初めて提起され(40)、1994年の「国立国会図書館関西館(仮称)建設基本計画概要」(41)で「アジア文献情報センター機能」と名を変えて正式に位置づけられた。アジア情報室はその機能実現のため関西館に設置され、東京のアジア資料室の後身として図書館業務を引き継ぎ発展させるとともに、「第二次構想」で掲げられた関西館の三つの基本的役割である「文献情報の発信」「世界に広がるサービス」「新しい図書館協力」(42)に対応するため情報発信の高度化、国内外関係機関との連携協力活動等をめざすことになった。

 

4.2.2 閲覧サービス

 閲覧サービスでは、関西館に移ったことで閲覧室が大幅に拡張され、約3万冊の資料を開架できるようになった。特にアジア関係の雑誌2,400タイトル、新聞230タイトルが開架で閲覧できるのは当室の大きな特長といえる。また所蔵資料数の面では、図書だけで見ても2002年12月の約115,486冊(43)が2012年3月には約347,000冊(44)に増加した。これには2006年5月に整理を終えた上海新華書店旧蔵中国語図書約15万冊が大きく寄与している(45)。また電子情報でもCNKI(46)やKISS(47)等のオンラインデータベースを導入している。こうした情報資源をバックボーンにして、来館利用者にはアジアカウンターを通じて、遠隔地からは電話や文書(図書館経由)等によりレファレンスサービスを行っている。

 

4.2.3 情報発信

 情報発信の面では、アジア言語OPACが関西館開館に合わせて公開され、これまで冊子目録やカード目録でしか検索できなかったアジア言語資料の書誌情報がインターネットを通じて広く館外でも検索できるようになった。公開当初は中国語資料と朝鮮語資料のみについて検索可能であったが、2012年1月にアジア言語OPACとNDL-OPACとの統合が実現し、ビルマ語図書(48)以外のすべてのアジア言語資料がNDL-OPACで検索できるまでになった。また『アジア情報室通報』の刊行および当館ホームページへの掲載(49)、リサーチ・ナビの「調べ方案内」(50)やアジア関係のリンク集である“AsiaLinks”(51)の整備にもつとめている。

 

4.2.4 国内外関係機関との連携協力

 国内の関係機関との連携協力の場としてはアジア情報研修(52)やおよびアジア情報関係機関懇談会を設けた。後者についてはその活動成果の一つとして「アジア情報機関ダイレクトリー」の作成・公開(53)がある。そのほか、中国、韓国等国外の機関と業務交流や海外出張等を通じて交流を行った。ただし、新規に本格的な交流や協力関係を構築するまでには至っていない。

 

4.2.5 今後の展望

 この10年の活動を通じて、資料収集の量的な面での整備やアジア言語OPACのNDL-OPACへの統合等基礎的な土台を整えることができた。今後は情報発信の質的量的充実、収集資料の質的強化、蔵書構成における中国語、朝鮮語以外のアジア諸言語資料の充実等が課題である。

 また、「第二次構想」における「アジア文献情報センター機能」の重要な柱の一つであった国内外の関係機関等との連携協力のうち、国外との連携については目立った成果を挙げることができなかった。国内においては関係機関との連携を通じてサービスの向上を目指し、国際的には当館の国際協力事業へのより積極的関与等を通じて国際貢献に少しでも寄与できるよう努力していきたいと考えている。

 

4.3 館内利用サービス

 関西館は、その地理的特性を踏まえ、関西文化学術研究都市や近畿圏における文化学術研究のための情報拠点として(54)、開館当初から来館サービスにも力を注いできた。

 このため、総合閲覧室には現在、参考図書を中心とした10万点を超える開架資料を排架している。手軽に利用できる開架資料の増加に努めるとともに、排架場所が分かりにくい等の利用者の声を受け、2006年度には大規模な資料の再配置を行い、開架資料を利用する際の利便性の向上を図った。

 また、電子情報の利用体制の整備にも力点を置いてきた。開館時は、パッケージ系電子出版物7タイトルが専用端末で利用できるに過ぎなかったが(55)、現在では、国立国会図書館デジタル化資料を始め、数多くの電子ジャーナル、オンラインデータベース、インターネット情報を利用することができるようになった。コンテンツの量的な増加を図ると同時に、2012年1月には利用者用端末を一新し、蔵書検索・申込システムと電子情報サービスを同一の端末で利用可能にする等の改善を図った。

 これらの改善にもかかわらず、来館利用者数は開館当初と比べて減少し、ここ数年は一か月当たり4,900人から5,200人の間で落ち着いている。その一方で、館内利用サービスの提供に係る主な数値はいずれも開館当初と比較し増加しており、来館利用者一人当たりの資料の利用割合は高まっている(表3を参照)。

 

表3 関西館来館サービス
  閉架資料閲覧点数 来館複写件数 来館口頭レファレンス数 年間入館者数
2003年度 88,394点 47,922件 35,292件 78,060人
2011年度 113,864点 74,104件 45,388件 60,580人

 出典:『国立国会図書館年報』の平成15年度版、平成16年度版および平成23年度版に基づき作成(56)
※この項目のみ平成16年度版年報を参照した。

 

 研究者をはじめ、より多くの国民に調査・研究に役立つ豊富な資料が身近にあることを知ってもらい、利用してもらうために、関西館では、立地環境をいかし、近隣機関に出向き所蔵資料等の案内を行うガイダンス、関西館見学デーや所蔵資料を用いた様々な展示会等のイベント等を通じ広報活動を行ってきた。今後とも広報活動を通じ、利用の促進を図りたい。

 また、関西館に特徴的な科学技術関係資料や国内博士論文等の資料群を始めとする調査研究に有用な資料の拡充や、電子情報の利用体制のより一層の整備を図り、関西文化学術研究都市や近畿圏における大規模な調査研究図書館としてより利便性の高い閲覧空間を用意し、閲覧や調査・研究の満足度を高めていきたい。

 

5. おわりに

 「第二次構想」では、関西館の基本的な役割と機能は、「文献情報の発信」「世界に広がるサービス」「新しい図書館協力」の三本柱からなるとされている。以上みてきたように、このうち「文献情報の発信」および「世界に広がるサービス」については、インターネットやデジタル化技術の発展等もあって、電子図書館事業の発展、遠隔利用サービスの利便性向上、アジア資料情報の発信等により、構想の段階での想定よりもはるかに上回る成果を挙げているものと考える。また、「新しい図書館協力」についても、各種のネットワーク型データベースの構築等により、ある程度は実現されているといえる。

ただ、連携型の図書館サービス、共同研究事業アジア情報における関係機関との連携協力については、発展の余地がある。今後は、電子図書館事業や遠隔利用サービス等を発展させる一方で、これらの連携協力についても、様々な技術の発展を踏まえた新たな方法を検討する等、実現に向けて努力する必要があるものと考える。

 

*1 第1章、第3章、第5章を担当
*2 第2章を担当
*3 第4章第1節と第3節を担当
*4 第4章第2節を担当

 

(1) 国立国会図書館. 国立国会図書館関西館(仮称)設立に関する第二次基本構想: 情報資源の共有をめざして. 1991. 76p.
http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/about/199108_2.pdf, (参照 2012-07-27).

(2) “関西館の建設目的・基本機能”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/about/functions.html, (参照 2012-07-27).

(3) “平成10年5月 「国立国会図書館電子図書館構想」”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/elib_plan.html, (参照 2012-07-20).

(4) “平成12年国図企第17号「電子図書館サービス実施基本計画」”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/elib_standardproject.html, (参照 2012-07-20).

(5) “国立国会図書館電子図書館中期計画2004”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/elib_plan2004.html, (参照 2012-07-20).

(6) 国立国会図書館総務部企画課. 蔵書のデジタル化 資料を守り、活用する. 国立国会図書館月報. 2010, (586), p. 31-34.

(7) “近代デジタルライブラリー”. 国立国会図書館. http://kindai.ndl.go.jp/, (参照 2012-07-20).

(8) “近代デジタルライブラリーのあゆみ”. 国立国会図書館.
http://kindai.ndl.go.jp/ja/KDL_history.html, (参照 2012-07-20).

(9) “国立国会図書館デジタル化資料”国立国会図書館.
http://dl.ndl.go.jp/, (参照 2012-07-20).

(10) “資料デジタル化について”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/digitization.html, (参照 2012-07-20).

(11) “改正国立国会図書館法によるインターネット資料の収集について” . 国立国会図書館.
http://warp.da.ndl.go.jp/houkaisei.pdf, (参照 2012-07-20).

(12) 国立国会図書館編. 活動実績評価に見る平成23年度の国立国会図書館―平成23年度国立国会図書館活動実績評価事業報告書. 2012, p. 9.

(13) “改正国立国会図書館法によるインターネット資料の収集について”. 国立国会図書館.
http://warp.da.ndl.go.jp/houkaisei.pdf, (参照 2012-07-20).

(14) “Dnavi-国立国会図書館データベース・ナビゲーション・サービス”.
http://dnavi.da.ndl.go.jp/, (参照 2012-07-20).

(15) “歴史的音源”. 国立国会図書館デジタル化資料.
http://dl.ndl.go.jp/#music, (参照 2012-07-20).

(16) 「公立図書館への歴史的音源の配信提供サービス参加規定」第1項により、歴史的音源の配信提供サービスへの参加資格は、図書館法(昭和25年法律第118号)第2条が定める公立図書館とすることとされている。
“公立図書館への歴史的音源の配信提供サービス参加規定”. 国立国会図書館.
http://dl.ndl.go.jp/html-resources/kitei.pdf, (参照 2012-07-20).

(17) “公立図書館への歴史的音源の配信提供に関するページ”. 国立国会図書館デジタル化資料.
http://dl.ndl.go.jp/ja/rekion4Lib.html, (参照 2012-07-09).

(18) “視覚障害者等サービス実施計画”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/service/service_plan.pdf, (参照 2012-07-20).

(19) “オンライン資料の収集等に関する国立国会図書館法の一部改正について”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2012/__icsFiles/afieldfile/2012/06/15/pr120615.pdf, (参照 2012-07-20).

(20) “電子情報の長期的な保存と利用”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation.html, (参照 2012-07-20).

(21) “電子情報の長期利用保証に係る調査研究(平成18年度~平成22年度)総括報告書(平成23年8月)”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/pdf/review_2011.pdf, (参照 2012-07-31).

(22) “国立国会図書館東日本大震災アーカイブ構築プロジェクト~震災に関するあらゆる記録・教訓を、次の世代へ~”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/311earthquake/disaster_archives/index.html, (参照 2012-08-06).

(23) 国立国会図書館. 国立国会図書館関西館(仮称)設立に関する第二次基本構想: 情報資源の共有をめざして. 1991.

(24) “国立国会図書館総合目録ネットワーク”. 国立国会図書館.
http://iss.ndl.go.jp/somoku/, (参照 2012-07-31).

(25) “レファレンス協同データベース”. 国立国会図書館.
http://crd.ndl.go.jp/jp/public/, (参照 2012-07-31).

(26) “国立国会図書館サーチ”. 国立国会図書館.
http://iss.ndl.go.jp/, (参照 2012-07-31).

(27) “調査研究”. カレントアウェアネス・ポータル.
http://current.ndl.go.jp/research, (参照 2012-07-31).

(28) これまでに「レファレンス協同データベース実験事業」、「電子情報保存のための調査研究」、「資料デジタル化の手引き」および「電子情報の長期利用保証」をテーマとしてきている。『国立国会図書館年報』各年度版に掲載されている「電子図書館に関する研究開発」の項目を参照のこと。
“国立国会図書館年報”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/annual/index.html, (参照 2012-07-31).

(29) 2007年までは「日本研究情報専門家研修」を、2010年から3年間は「日本専門家ワークショップ」(日本研究者も対象者に含む)を実施している。

(30) 基礎的な内容の研修を主に遠隔研修で、資料の実見や演習的な内容が含まれる内容の研修を主に集合研修で、それぞれ実施している。実施科目については以下を参照のこと。
“図書館員の研修”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/library/training/index.html, (参照 2012-07-31).

(31) 図書館間貸出しは、国内外の図書館のうちNDLの図書館間貸出制度に加入した機関に対し、NDLの所蔵する図書を貸し出すサービス。

(32) “国立国会図書館年報平成15年度”. 国立国会図書館.
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1000784_po_nen15.pdf?contentNo=1, (参照 2012-08-06).

(33) 『国立国会図書館年報』記載の業務統計による。

(34) 2012年1月、総合目録ネットワークシステムは情報探索サービスシステムに統合された。

(35) 是住久美子. 京都府図書館総合目録ネットワーク-分散型と集中型を統合した書誌・所蔵データベースの紹介-. びぶろす, 2010, 電子化49号.
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/2010/08/01.html, (参照 2012-08-20).

(36) “国立国会図書館年報”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/annual/index.html, (参照 2012-07-31).

(37) “国立国会図書館年報平成22年度版”. 国立国会図書館.
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3192134_po_nen22.pdf?contentNo=1, (参照 2012-08-06).

(38) 国立国会図書館編. 国立国会図書館年報平成23年度版. 2012, p. 245.

(39) “(7) アジア資料室” 国立国会図書館五十年史編纂委員会編. 国立国会図書館五十年史. 本編.国立国会図書館. 1999. p. 309.

(40) 国立国会図書館. 国立国会図書館関西館(仮称)設立に関する第二次基本構想: 情報資源の共有をめざして. 1991.

(41) “国立国会図書館(仮称)建設基本計画概要”. 国立国会図書館. 1994.
http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/about/199412_3.pdf, (参照 2012-07-31).

(42) 国立国会図書館. 国立国会図書館関西館(仮称)設立に関する第二次基本構想: 情報資源の共有をめざして. 1991.

(43) アジア情報課. “アジア情報室の概要”. アジア情報室通報. 2003, 1(1), p. 3.
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3489461_po_bulletin1_1.pdf?contentNo=1, (参照 2012-08-01).

(44) 国立国会図書館編. 前掲. p. 43.

(45) 関西館資料部アジア情報課. “上海新華書店旧蔵書遡及入力の終了について”. 国立国会図書館月報. 2006, (547), p. 26-27.
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1001562_po_geppo0610.pdf?contentNo=1, (参照 2012-08-01).

(46) 中国学術情報データベース(China National Knowledge Infrastructure)のこと。
“アジア情報室所蔵資料の概要:中国関係資料:電子資料”. リサーチ・ナビ.
http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/asia-02data-chn-elect.php, (参照 2012-07-31).

(47) 韓国における総合的な学術情報データベースであるKorean Studies Information Service Systemのこと。
“アジア情報室所蔵資料の概要:韓国・北朝鮮関係資料:電子資料”. リサーチ・ナビ.
http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/asia-02data-chn-elect.php, (参照 2012-07-31).

(48) ビルマ文字がWindows等の一般的OSで標準装備されていないためNDL-OPACでは検索できない。

(49) “アジア情報室の刊行物(『アジア情報室通報』)”. リサーチ・ナビ.
http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/asia-pub.php, (参照 2012-08-06).

(50) “アジア情報の調べ方案内”. リサーチ・ナビ.
http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/research-guide-asia.php, (参照 2012-07-31).

(51) “AsiaLinks - アジア関係リンク集”. リサーチ・ナビ.
http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/asialinks.php, (参照 2012-07-31).

(52) “アジア情報研修”. リサーチ・ナビ.
http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/asia-workshop.php, (参照 2012-07-31).

(53) “アジア情報機関ダイレクトリー”. リサーチ・ナビ.
http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/directory.php (参照 2012-07-31).

(54) “国立国会図書館. 国立国会図書館関西館(仮称)設立に関する第二次基本構想: 情報資源の共有をめざして. 1991.

(55) “国立国会図書館年報平成14年度版”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/annual/h14/01.pdf, (参照 2012-08-01).

(56) “国立国会図書館年報平成15年度”. 国立国会図書館.
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1000784_po_nen15.pdf?contentNo=1, (参照 2012-08-06).
“国立国会図書館年報平成16年度”. 国立国会図書館.
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1000783_po_nen16.pdf?contentNo=1, (参照 2012-08-06).
国立国会図書館編. 前掲. p. 43-44, p. 245.

[受理:2012-08-20]

 


南 亮一, 木目沢 司, 鈴木昭博, 渡邊幸秀. 関西館の10年:構想段階と現況とを対比して. カレントアウェアネス. 2012, (313), p. 2-7.
http://current.ndl.go.jp/ca1774