CA1477 – OCLC Connexion−目録作成サービスの統合− / 中井惠久

カレントアウェアネス
No.274 2002.12.20

 

CA1477

 

OCLC Connexion―目録作成サービスの統合―

 

 OCLCは,2002年7月1日,ウェブベースの新しい目録作成システム,OCLC Connexionの第1フェーズを開始した。

 これまでOCLCは,世界最大の書誌ユーティリティとして,オンライン総合目録・書誌データベースであるWorldCatを提供してきた。WorldCatは,紀元前1000年から現在に至る4,800万件以上の情報を書誌レコードとして蓄積し,目録作成サービスやFirstSearch,ILLなどOCLCが行う様々なサービスの基盤として活用されてきた。

 一方CORC(Cooperative Online Resource Catalog)は,1999年1月,インターネット情報資源の共同目録作成のために始められた研究プロジェクトで,2000年7月に本稼動した。CORCによる目録作成はいかなる媒体に対しても可能であるが,主にインターネット情報資源について行われてきた。また,CORCを利用することにより,パスファインダー(主題別情報源案内。サブジェクト・ゲートウェイやウェブリオグラフィー(webliographies)とも呼ばれる。)も作成することができた。記述はMARCあるいはダブリン・コア形式で行い,両者の互換性も実現している。多くの図書館員が連携して作業することで,必要となるローカル情報を世界規模で共有されたインターネット情報資源から見つけ出し,共同目録作成で実績のあるモデルを使用して,最小限の作業で最大限の知識情報を得ることを達成した。

 今回OCLCは,WorldCatのインターフェースを変更し,CORCと統合した。こうして新しい目録作成サービスとして生まれ変わったのがConnexionである。

 新サービスConnexionは,従来OCLCが提供してきた様々な目録作成支援ツールやWorldCatへのワンストップアクセスを可能とする。Connexionによる目録作成は,現在,英語等が用いている文字セットであるローマン・スクリプトに対応し,将来的には,他の文字セットにも対応する予定である。さらに,各館で必要な機能だけが表示されるようにインターフェースをカスタマイズすることもできる。今後さらなる機能強化により,データの組織化は,より容易に,かつ,効率的になると見られる。他にも,インターフェースが統合されたことにより,Connexionを使用するための訓練や支援コストが削減できるといった利点もある。

 次に,Connexionにおけるインターネット情報資源を扱う機能について紹介する。インターネット情報資源の目録作成には,Connexionインターフェースを用いる。URLを入力すれば,インターネット情報資源に関するデータを,ある程度自動的に生成させることが可能であり,短時間かつ容易にMARCあるいはダブリン・コア形式のどちらかにフォーマットできる。さらに,ソフトウェアにより,URLのリンク切れあるいは変更を検出し,レコード作成館に連絡する。どこかの図書館でマスターレコードが1箇所でも更新されると,その結果は直ちに他の全ての図書館にも反映される。さらに,パスファインダー内にある目録データを流用して,各コンテンツの目録作成のためにカスタマイズすることも可能である。Connexionを用いることにより,インターネット情報資源をパスファインダーから案内することも可能となる。

 その他,WorldCatおよびCORCから引き継がれた機能も含めて,Connexionの主な機能としては以下のものがある。

 現在の図書館および図書館情報学が置かれているこのような状況を踏まえたとき,近年クローズアップされてきた「知識組織化論」が,図書館情報学が周辺諸学と切り結び,より広い立場から図書館(的)機能を実現するアプローチとして,戦略的にも極めて重要な位置を占めている点に着目するべきであると考える。

  • (1)ウェブを利用した操作性の向上
     従来のコマンド検索に加えて,メニューによる検索も可能となった。
  • (2)多様なレコード形式への対応
     全てのレコードの編集や出力が,MARCあるいはダブリン・コア形式で可能であり,既存レコードからの新規レコード作成,あるいは,フォーマットの異なる新規レコードの作成が可能である。
  • (3)その他
     書誌レコードの容量制限を気にすることなく,より大きなサイズでの書誌レコードの作成が可能である。アーカイブなどの各種オプション機能も用意されていて,これらのオプションを追加すると,Connexionに新しいタブが現れ,シングルクリックで使用することができる。また,典拠コントロールでは,典拠レコードと標目が関係付けられているため,典拠レコードを変更すると,自動的に全ての関連する書誌レコードを更新できる。これにより構造化された,質の高いデータベースが構築され,より効率的な検索が可能となる。

 最後に,Connexionに関する今後の予定について紹介する。

 現時点では,ブラウザでの公開であるが,2003年の春頃には,目録作成のための専用ソフトも提供される。専用ソフトでは,ブラウザ同様,多くのカタロギング機能や典拠機能などが組み込まれ,さらに,ブラウザでは使用が困難なマクロ機能やラベル印刷などの機能も提供される。ブラウザ,専用ソフトとも原則,四半期毎に機能強化がなされる。

 なお現在,Connexion以外のOCLC目録作成ツールを使用している図書館では,Connexionへの移行方法も考慮する必要がある。

 共同目録事業の老舗ともいうべきOCLCが,今後Connexionで,より効率的な目録作成作業を行えるようにインターフェースを統合していくことに注目していきたい。

関西館事業部電子図書館課:中井 惠久(なかいやすひさ)

 

Ref.

OCLC Connexion [http://www.oclc.org/connexion/](last access 2002.10.4)

OCLC Connexion: Guide to Migration. [http://www.nelinet.net/tech/cat/connex.htm](last access 2002.10.4)

OCLC. Boost your library’s Net value with CORC. http://www.oclc.org/oclc/promo/10520corc/](last access 2002.10.4)

OCLC CORC (Cooperative Online Resource Catalog).[http://www.kinokuniya.co.jp/03f/oclc/corc.htm](last access 2002.10.4)

逸村裕 ディジタル情報資源の評価 情報の科学と技術 50(5) 266-272,2000

鹿島みづき CORCプロジェクトに参加して 情報の科学と技術 51(8) 409-417,2001

 


中井惠久. OCLC Connexion―目録作成サービスの統合― カレントアウェアネス. 2002, (274), p.3-4.
http://current.ndl.go.jp/ca1477