カレントアウェアネス
No.268 2001.12.20
CA1441
英国の「アイディアストア」
ロンドンで新しいタイプのセンターが誕生する。金融ビジネス街と貧困地域の両方をかかえるタワーハムレッツ区は,2004年までにすべての公共図書館を閉鎖し,代わって七つの「アイディアストア(Idea Store)」を「開店」する予定である。アイディアストアは,住民のアンケートに基づいて,従来の図書館機能に,社会人教育,イベントスペース,託児所,小売店舗を付加したものであり,「街角大学」として,地域住民のニーズにより対応したサービスを提供する。ひとつのブランドとなるように,人のにぎわう立ち寄りやすい場所に構え,デパートやレストランのようにインテリアやレイアウトを工夫し,情報満載の「アイディアマガジン」を発信し,住民からの質問などを受けつけるホットラインも備えている。
部屋を壁で仕切らない開放的なスペースは,様々な用途に対応できるとともに,開講中の講座の見学も気軽にでき,くつろぎの場も与えてくれる。ストア内では,生涯学習関連の多くの講座が開かれるほか,ウェブを利用した講座や職業訓練も行われる。
増加する費用対策には,サービスへの課金ではなく,ストア内の店舗やカフェ,壁面のニュースやビデオ広告などの収益を見込んでいる。政府も宝くじ基金の一部から援助している。
図書館員もまた,大きく意識を変えていかなくてはいけない。情報技術などについての専門的な研修を受け,情報サービスの充実を図る一方,地域住民の要望を敏感に察知し,講師等と強固な連携をとって,学習する環境を整えるなど,アイディアストアのプランナーとして魅力的な施設となるよう工夫していかなければならない。
五十嵐 麻理世(いがらしまりよ)
Ref: Patterson, T. “Idea stores”: London's new libraries. Lib J 126(8) 48-49, 2001