CA1204 – ドイツ図書館がオンライン出版物の収集を開始 / 山岡規雄

カレントアウェアネス
No.228 1998.08.20


CA1204

ドイツ図書館がオンライン出版物の収集を開始

ドイツ図書館(Die Deutsche Bibliothek)が1998年7月1日からオンライン出版物の収集を開始した。ドイツの現行の納本法規によると,電子出版物に関して納入義務が及ぶのは,CD-ROMなどオフラインの出版物までである。今回の試みは,出版者の自発的な協力を仰いで,オンライン出版物の収集の経験を積み,来るべき法律改正に備えるための実験段階と捉えることができる。

とりあえず,最初の1ヶ月で収集の対象とされたのは,学位論文,教授資格取得のための論文,その他出版者が自発的に納入する出版物である。納入すべきデータのフォーマットは,予めドイツ図書館によって何種類かに限定されている。まず,保存に適しているもの(グループA)として,SGML,HTMLなど7種類のフォーマット,優れたデータ表現能力を持つもの(グループB)として,PDF,PSなど5種類のフォーマットが指定されている。グループAとグループBとでは,前者の方が優先される。納入方法としては,電子メールによって,HTML形式でドイツ図書館のホームページに登録するといった,簡易な方法で納入することが可能となっている。

収集された電子出版物は,フランクフルトドイツ図書館のOPACでの検索が可能であり,Z39.50のゲートウェイ・サーバを通じて検索することもできる。本文を表示させることもできるし,プリントアウトやダウンロードも可能である。収集出版物の保存媒体としては,CDあるいはその後継媒体を考えているとのことである。

オンライン出版物については,ノルウェーやフランスなどが,すでに世界に先駆けて法定納本を実施してきているが,その実際の運用実績については,あまり情報が入ってきていないのが実状である。そうした意味からも,収集上の問題点なども含めて,今後の経過について積極的な情報の提供をドイツ図書館に期待したい。

山岡 規雄(やまおかのりお)

Ref: Die Deutsche Bibliothek sammelt Netzpublikationen. Nachr Dok 49(4) 230-231, 1998
山岡規雄 ドイツの納本制度 図書館研究シリーズ (34) 151-163,1997