CA1007 - 電子出版物の法定納本化:世界の動向 / 春山明哲

カレントアウェアネス
No.190 1995.06.20


CA1007

電子出版物の法定納本化−世界の動向−

電子出版とグローバル・ネットワークの時代の到来とともに,出版物の法定納本制度とこの制度を担ってきた国立図書館の役割とが,今,根源的に問い直されている。

世界の国立図書館は,1980年代後半から「電子出版に対応した法定納本制度のあり方」について検討を開始し,調査研究を重ねてきた(CA736参照)。1990年代に入り,実際に法令を改正し,新しい制度に基づく電子出版物の収集に着手した国も次第に増加している。

ノルウェーは,1990年「公衆の利用に供される文献の納本義務に関する法律」を改正し,「電子的又はデジタル化されたデータを内容とするすべての種類の情報媒体」を納本対象に追加した。しかし,「オンライン納本」を実現するには電子文献に関する国家的センターの設立と,技術開発投資による国立図書館のデジタル情報へのアクセス機能の確立が課題となっている。

フランスの新しい制度は現時点でもっとも体系的完成度を持つものと言えよう。1992年の新しい法定納本に関する法律及び1993年の政令は,データベース(CD-ROM,フロッピーディスク等を含む),コンピュータ・ソフトウェア,エキスパートシステム,及びその他人工知能による文献で,コンピュータ可読媒体によって公衆に頒布(有料,リース,無料を問わず)されたものを納本対象とした。出版者(場合によっては製作者,輸入業者)は,発行又は更新の都度,電子文献を2部,マニュアル等の付属資料を添えて,無償でフランス国立図書館等に納入しなければならない。ただしソフトウェア,エキスパートシステム等については,省令で定める選択基準により,国の文化遺産とみなされるもののみが対象となっている。また,注目されることは,「法定納本のための科学的協議会」が設置されたことである。この機関は関係諸機関の代表者によって構成され,納本に関する科学的首尾一貫性と手続きの統一性を確保するため,制度の運用等について,国立図書館長に勧告し助言する諮問機関である。

アメリカ合衆国では,1992年に議会図書館(LC)への出版物納入に関する著作権法の規則を改正し,CD-ROMフォーマット資料,操作用ソフトウェア,及びマニュアルを納本対象とした。さらに,LCは電子情報の納本,アクセス,著作権処理を総合的に行う「国立デジタル図書館」の構想を提案している。

イギリスでは,英国図書館研究開発部(BLRDD)が専門家等による「電子出版研究会」を組織し,1994年にその成果を「電子出版が図書館に与える衝撃」という報告書にまとめた。この中で,電子出版物の法定納本制度の導入と「国家的な電子アーカイブ」の設立が勧告されている。

なお,ヨーロッパ統合が進む中,EU加盟国の「納本制度統合」への動きが注目される。

国立国会図書館でも,1995年5月から,電子出版物の収集・利用等に関する検討班を設置し,納本の問題を含め調査研究を開始した。

春山明哲(はるやまめいてつ)

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