ラテンアメリカにおけるオープンアクセス Jeffrey Beall氏への反論(記事紹介)

COARのウェブサイトにおいて、2015年8月17日付けで「ラテンアメリカにおけるオープンアクセス:他の地域にとっての模範」(”Open Access in Latin America: A paragon for the rest of the world”)と題した記事が公開されています。この記事は米コロラド大学の図書館員Jeffrey Beall氏がブログ”Scholarly Open Access”で2015年7月30日付けで公開した記事「SciELOは出版の貧民街か?」(”Is SciELO a Publication Favela?”)に対する反論として、COARのKathleen Shearer氏や米SPARCのHeather Joseph氏ら9名の署名入りで公開されたものです。

Beall氏のブログ記事ではブラジルやラテンアメリカ諸国を中心とするオープンアクセス(OA)の電子ジャーナルプラットフォームSciELOと、メキシコを中心とする同じくOA電子ジャーナルプラットフォームRedalycについて、商業出版社の電子ジャーナルプラットフォームに比べビジビリティも低く、多くの北米の研究者は収録誌を聞いたこともないと批判しています。

これに対し、COARで公開された記事では北米の研究者の中にSciELOやRedalycについて知らない者がいることは両者が論文の発表場所としてふさわしくないことを示すものではないとし、Beall氏は著しいエリート主義と視野狭窄に陥っていると指摘しています。地域コミュニティにおいては両サービスのビジビリティは高いことに加え、南米の多くの研究者は商業出版社のプラットフォームにはアクセスできないことも指摘し、「人々が論文にアクセスすることもできないのに、ビジビリティが高いことになんの価値があるのか」と述べています。

Open Access in Latin America: A paragon for the rest of the world(COAR、2015/8/17付け)
https://www.coar-repositories.org/news-media/open-access-in-latin-america-a-paragon-for-the-rest-of-the-world/

Is SciELO a Publication Favela?(Scholarly Open Access、2015/7/30付け)
http://scholarlyoa.com/2015/07/30/is-scielo-a-publication-favela/

参考:
ブラジルのSciELOの15年のオープンアクセスの取組みをまとめた書籍が刊行
Posted 2015年1月29日
http://current.ndl.go.jp/node/27884

単なる“金もうけ”の疑いのあるオープンアクセス出版社のリスト(2014年版)
Posted 2014年1月7日
http://current.ndl.go.jp/node/25205