図書館の「いま」を届ける「カレントアウェアネス」 / 田中敏

※本記事は、キハラ株式会社のご協力のもと、同社『LISN』第150号に掲載された記事を転載したものです。

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LISN

No.150 2011年12月

 

LISN150号記念特集:編集者が語る私たちとこれからの図書館
図書館の「いま」を届ける「カレントアウェアネス」

 

関西館図書館協力課調査情報係:田中敏(たなか さとし)

 本稿では,国立国会図書館が「カレントアウェアネス」という名称で行っている,図書館に関する情報を提供する業務の概要と,そこで紹介した図書館界での最近の動向等を紹介する。

 

■「カレントアウェアネス」とは

 『カレントアウェアネス』(Current Awareness,以下「CA」)は,1979年に創刊した,図書館や図書館情報学に関する動向等を紹介・解説する国立国会図書館の情報誌で,誌名は,「図書館その他の情報機関が利用者に対して最新情報を定期的に提供するサービス」1)を意味する「カレントアウェアネスサービス」という用語に由来している。

 2002年に国立国会図書館の機構改革で事務局が関西館に移ったのを機に,冊子版の刊行頻度を月刊から季刊へ変更し各記事の分量を増加させると同時に,最近の出来事や動向をコンパクトにまとめた『カレントアウェアネス-E』(以下「CA-E」)というメールマガジン(月2回刊)を開始した。

 2006年には,よりスピーディな情報提供を行うためウェブサイト「カレントアウェアネス・ポータル」2)(以下「CAポータル」)を開設し,ブログ形式のニュース速報「カレントアウェアネス-R」(以下「CA-R」)を開始した。CAポータルには,CAとCA-Eの記事本文も掲載している。それぞれの記事へのアクセス数やソーシャルブックマークの数等を,読者の反応として参考にしている。

 さらに,2010年1月からはTwitter(@ca_tweet)3)の利用を開始し,CA,CA-E,CA-Rの各記事のタイトルとURLを発信している。2011年9月時点でのフォロワー数は5,600人を超えており,読者の反応を素早く知る上でも有用なツールとなっている。また,これまで図書館になじみの薄かった人にもCAポータルや図書館を知ってもらうきっかけになっているのではないかと考えている。

 

■「カレントアウェアネス」の編集方針

 3つの「カレントアウェアネス」で提供している情報は,その名のとおり,最新の動向や情報が中心であり,その対象には,図書館や図書館情報学だけでなく,出版,学術情報,博物館・文書館,インターネット等の図書館関連領域も含んでいる。

 ただ,CA,CA-E,CA-Rではそれぞれ少しずつ位置づけが異なっている。季刊のCAは,外部の編集企画員による会議で刊行の約半年前に記事テーマを決定しており,分量も長めで,中長期的なテーマについての解説機能に重点を置いている。一方,CA-EやCA-Rは主に担当職員3名で情報収集から執筆・提供まで行っており,速報性を重視している。特にCA-Rでは,多くはニュース発生から数日中,早い時には数時間内に情報を掲載しており,最新の動向を素早く提供する媒体となっている。CA-Eは,日々収集している情報の中から,重要度の高いものやCA-Rで読者の反応の大きかったテーマを選択し,適度な分量にまとめて年に22回(記事数では年120本程度)提供しているもので,CAとCA-Rの中間的な位置づけとなっている。

 これらのコンテンツを掲載しているCAポータルの運営にあたっては,情報発信の継続性も意識している。CA-RはCAポータル開設以来,休日を除く毎日,記事を追加しており,その累計は1万本を超えている。こうした継続が信頼感の醸成につながることを期待している。また,学術的・技術的な話題ばかりでなく,やわらかめの話題も適度に交えることで,より広い範囲の人に図書館への関心や興味を持ってもらうきっかけになればと考えている。

 

■CA-Eから見る図書館界の最近の動向

 CAポータルでどのようなテーマを取り上げ,読者はどのようなテーマに関心が高いのかを紹介するため,CAポータル掲載のCA-Eの記事で2011年1月から8月までの期間でアクセスの多かった記事10本を表にまとめた4)

 

表:CAポータルでのアクセスの多かったCA-Eの記事(2011年1月~8月)

  1. E574 - 図書館ネコ「デューイ」,その生涯を終える(米国)(2006.12.06)
  2. E1155 - 東北地方太平洋沖地震発生後の図書館等の状況(速報版)(2011.03.17)
  3. E1133 - 電子書籍貸出サービスを開始した堺市立図書館にインタビュー(2011.01.20)
  4. E1201 - ウェブ本棚サービス「ブクログ」の図書館における活用(2011.08.11)
  5. E1150 - 電子書籍フォーマットEPUB3のパブリックドラフトが公開(2011.03.03)
  6. E1127 - 「ぬいぐるみの図書館おとまり会」現場の様子と舞台裏(日本)(2010.12.16)
  7. E967 - 福井県立図書館「覚え違いタイトル集」ができるまで(2009.09.02)
  8. E1152 - 研究者はオープンアクセスについてどう考えているか(2011.03.03)
  9. E1161 - 東日本大震災の被災者・被災図書館等への支援の輪が広がる(2011.04.07)
  10. E1166 - 東日本大震災の被災図書館等への支援状況(2011/4/27現在)(2011.04.28)
  11.  

     電子書籍や学術情報流通から公共図書館でのイベントまで,様々なテーマの記事が含まれているが,以下では,そのうちのいくつかを紹介する。

     この期間で最もアクセスが多かった「デューイ」の記事は,米国アイオワ州の公共図書館で飼われていた猫についてのもので,2006年12月に記事を掲載して以来,CAポータルで常に人気の高い記事となっている。なお,CAポータルやTwitterで使っている猫のマークも,このデューイにちなんだものである。

     東日本大震災による図書館への影響や復興,支援活動等に関しては,3月17日刊行号での記事以降,CA-Eのほぼ毎号で関連記事を掲載している。今後も,復興に向けた動きや支援活動,記録のアーカイブ活動等,様々な動向を継続してお伝えしていく。

     「覚え違いタイトル集」は,(誤)『ひとりになりたい』→(正)『ひとりたりない』など,カウンターで実際に遭遇した利用者の覚え違いタイトルと,司書が導き出した正解をまとめたものである。検索のヒントとしてだけでなく,図書館に興味を持ってもらうための娯楽性のあるコンテンツとしても意識しているとのことであり,ニュースサイトでもたびたび紹介されるなど,図書館のイメージアップにもつながっているのではないかと思う。

     個人的に思い入れのある記事としては,「ぬいぐるみの図書館おとまり会」の記事がある。子どもから預かったぬいぐるみが閉館後の夜の図書館で本を読んだり遊んだりしている(ような)写真を撮って子どもにプレゼントするというイベントが米国で行われているということを2010年9月にCA-Eの記事(E1088)で紹介した後,それを読んだ図書館でおとまり会を開催すると聞き,イベント当日に取材に行ったものである。発信した情報が具体的に役に立ったという喜びとともに,それを実際にやってみようと思い実現した図書館員の行動力を感じられる経験であった。

     今後も,図書館界の役に立てるよう,時代に応じた媒体での情報発信を続けていきたいと考えている。

     


    1)日本図書館情報学会用語辞典編集委員会『図書館情報学用語辞典』第3版 丸善 2007
    2)http://current.ndl.go.jp/
    3)https://twitter.com/#!/ca_tweet
    4)「E574」等はCA-Eの記事番号で,CAポータルのURLの最後の部分を該当の記事番号にすると,その記事に直接アクセスできる。(例:http://current.ndl.go.jp/e574