E989 – 「日本のMLA連携の方向性を探るラウンドテーブル」<報告>

カレントアウェアネス-E

No.160 2009.11.04

 

 E989

「日本のMLA連携の方向性を探るラウンドテーブル」<報告>

 

 2009年10月19日に,特定非営利活動法人「知的資源イニシアティブ(IRI)」主催による「日本のMLA連携の方向性を探るラウンドテーブルI 」が,東京都港区の鹿島建設株式会社KIビル多目的ホールで開催された。

 MLAとはミュージアム(Museum)・図書館(Library)・文書館(Archive)の頭文字であり,今回のラウンドテーブルでは,施設ごとの違いと共通の課題,それらを取り巻く経済的・社会的環境要因,情報・文化政策等における諸問題について,各分野の専門家14名による公開討論が行われた。

 討論では,まずそれぞれのパネリストから,自己紹介に絡めてMLAに関する現状認識や興味・関心が述べられた。次いで提起された問題について議論が行われ,その中でもコレクション・マネジメントが主な話題となった。

 各館がコレクションをどう扱うかについて,つまり館ごとのコレクション収集の基準・方法,資料の提供方針などのサービスの異同を背景に,コレクションは誰のためのものかという観点から,連携の可能性やメリットについて討論が進められた。その上で,館ごとの資料保存・管理体制の意識統一,そして資料に関する二次情報の共有といった,館を越えて資料を利用できるための共通した環境作り,それから同じ施設の内部に同居するMLA機能の協同という,内なるMLA連携(例:美術館の中にある図書室)などについて指摘がなされた。

 全体を通じ,MLAの別を問わず文化施設が危機的状況にあるという共通認識の上で,市民などの利用者や施設への関係者たちのニーズを満たしていくためにも,MLAは協同して文化施設の存在意義を政治的・社会的に発信していくべきだという点が強調された。

 約4時間と言う長丁場であったが,それでも話は尽きなかったことはMLA連携に寄せる期待と課題の複雑さを物語っているといえよう。2009年12月4・5日には,アート・ドキュメンテーション学会主催の「MLA連携の現状,課題,そして将来」が開催される。今後もMLAの定期的な意見交換の場が設けられることが不可欠であろう。

(資料提供部・松永しのぶ)

Ref:
http://www.iri-net.org/forum/mlart01.html
http://www.jads.org/news/2009/20/20091204.html
CA1644