E859 – 世界規模の図書館統計の再開に向けて(ユネスコ)

カレントアウェアネス-E

No.139 2008.11.19

 

 E859

世界規模の図書館統計の再開に向けて(ユネスコ)

 

 ユネスコ統計部は1999年まで,定期的に世界規模で図書館統計を集約していたが,ユネスコ統計研究所(UIS)が設立されてからは,データの質やカバー範囲に問題があることからこのような取組みは中断されていた。2006年1月,国際図書館連盟(IFLA),国際標準化機構(ISO)の図書館統計委員会(TC46/SC8),UISの三者が,世界規模での図書館統計データ集積を再開する方策を模索することで合意した。

 その第1段階として2007年8月に,図書館統計の国際規格ISO2789“International library statistics”(CA1460E652参照)に準拠した質問紙を用いた試験的な取組みが,カリブ・ラテンアメリカ地域をテスト地域 として実施された。これは,この地域の公共図書館・大学図書館統計を集積し分析する,というもので,このほどその成果がUISのウェブサイトで公表された。なお成果は,国際レポートとして,またユネスコの刊行物としても改めて発表される予定である。

 質問紙は,カリブ・ラテンアメリカ地域にある41か国に送付され,26か国から回答があった。今回の結果から,下記のようなことが分かった。

  • 公共図書館に関しては十分なデータが揃ったが,高等教育機関の図書館のデータはあまり集まらなかった。これは各国において,公共図書館と大学図書館の統計調査が義務付けられているわけではない,または同一の組織によって実施されているわけではないことに起因している可能性がある。
  • データの定義を明確化し,国家レベルで適用する必要がある。
  • 電子リソース,フルタイム換算の図書館員数,支出額などいくつかの重要な項目について,十分なデータが得られなかった。

 この試験的調査は,ISO規格の適用可能性を測ることを目的の1つにしている。UISの関係者は,ISOの規格は経済協力開発機構(OECD)加盟国を意識して作成されているが,今回十分なデータを得られなかった項目があったことは,OECD加盟国以外の国々に規格を適用するためにはさらなる改善が必要であることを示唆している,と指摘している。また対象や項目によるデータ量のギャップを埋めるためには,規格の洗練に加え,各国レベルでのデータ収集にも力を入れていく必要があることも明らかになった。

 UISおよび関係機関は,今回の試験的調査をモデルとして,カリブ・ラテンアメリカ地域以外でも統計データ集積の取組みが実施されること,各国で図書館統計の取組みが進展することに期待を寄せている。

Ref:
http://www.uis.unesco.org/template/pdf/cscl/IFLArept.pdf
http://www.uis.unesco.org/ev.php?ID=7253_201&ID2=DO_TOPIC
http://www.uis.unesco.org/ev.php?ID=6970_201&ID2=DO_TOPIC
http://www.ifla.org/VII/s22/project/GlobalStatistics.htm
CA1460
E652