カレントアウェアネス-E
No.122 2008.02.06
E746
韓国の図書館界に衝撃−「図書館法」改正案が国会に提出
2008年2月25日にイ・ミョンバク氏が新大統領に就任する韓国では,2007年12月の選挙直後から,次期大統領の公約の具体化,新政府運営基盤の準備などを行う大統領職引継ぎ委員会が設置され,活動している。この大統領職引継ぎ委員会が1月21日,議員130名の連名で,ノ・ムヒョン大統領政権下で2007年6月に設置された図書館情報政策委員会(CA1635参照)の設置規定の削除を含む「図書館法一部改正法律案」を韓国国会に提出した。
この改正法案の提案理由は,「図書館政策に対する主要事項決定の迅速性を向上して責任行政を具現する」こと,および,「政府組織法の改正に伴う中央行政機関の名称変更などを反映する」こととされている。このうち,後者は政府組織の再編に伴い「文化観光部」が「文化部」に改編されることに対応するものである。前者に関しては,
- 図書館政策の策定・施行の主体を図書館情報政策委員会から文化部長官に改め,図書館情報政策委員会に関する記述を削除(第12条)
- 図書館情報政策委員会を支援するための図書館情報政策企画団の設置規定の削除(第13条)
- 国立中央図書館に2007年6月に設置された図書館研究所の設置規定の削除(第19条第2項・第3項)
- 国立中央図書館に2007年6月に設置された国立障害者図書館支援センターの設置規定の削除(第45条)
の4点が提案されている。なお法案では,施行日は2008年2月25日となっている。
この法案が提出されるや否や,韓国図書館協会(KORLA)をはじめとする21の学協会が,この引継ぎ委員会の決定に反対し撤回を求める声明書を出した。KORLAのウェブサイトの掲示板には,この声明に賛同する図書館司書のメッセージが多く寄せられている。またKORLA名誉会長を務める国会議員のシン・ギナム国会情報委員会委員長も個人名で,図書館情報政策委員会の存続を訴える文書を国会議員に送ったとのことである。
2008年2月4日現在,国会では検討報告書が所管の文化観光委員会に上程され,委員会審査の段階にある。イ・ミョンバク次期大統領の政権与党となるハンナラ党が少数与党であること,引継ぎ委員会による政府組織法の改正法案に対してノ・ムヒョン大統領が拒否権を発動する可能性が報じられていることなどから,今後,この改正法案がどのように扱われるのか,先行きは不透明である。
Ref:
http://likms.assembly.go.kr/bill/jsp/BillDetail.jsp?bill_id=PRC_Q0M8J0U1M2H1C1T7M0N8M4A3B2L5L8
http://www.korla.or.kr/community/bbs/view.asp?BBSCode=F0005&pkid=38
http://www.korla.or.kr/community/bbs/view.asp?BBSCode=F0005&pkid=42
CA1635