カレントアウェアネス-E
No.104 2007.04.11
E631
先取りレファレンス: 公共図書館と地元新聞社の協同の実践
レファレンスサービスは,狭義にいえば質問・回答サービスのことだが,広義に捉えれば,利用者のニーズを先読みして,情報ファイルを用意したり,調べ方に関する情報を提供したりすることも含まれるものであり,様々なサービスの形態が考えられる。Library Journal誌で,“先取りレファレンス”(preemptive reference)と名づけられた,興味深い実践事例が紹介されている。
この“先取りレファレンス”は,カンザス州ジョンソン郡図書館が,地元の新聞Kansas City Star紙と協同して実施しているものである。Kansas City Star紙が掲載しているビジネス関連の記事に,読者の質問を“先取り”して,ジョンソン郡図書館が情報を提供している。
ジョンソン郡図書館のビジネス・レファレンス・チームは,ウェブサイト,データベース,そして書籍の情報から構成される“ウェブべース・情報パッケージ”を,毎週Kansas City Star紙に提供する。この情報は,毎週同紙が掲載するビジネスと起業に関連する特集記事を補強するものとなる。同紙にはオンライン版もあり,ワン・クリックで,多様な情報へアクセスすることが可能である。逆に図書館のウェブサイトでも,同じ情報を掲載し,さらに記事へのリンクも張っている。図書館は5日から7日前に情報パッケージを作成し,新聞社に提供しているという。
両者の正式な契約はつい先日行われたが,実際には昨年夏から開始されている。実際,例えばゴルフコースでのビジネス,電子タグによるサービスの向上,カンザスシティ国際空港の成長など,多様な記事でこのタイアップが実現している。
利用者が必要とする前に,さらには利用者が質問を思い浮かべる前に,先取りして参考情報を提供する“先取りレファレンス”。図書館という枠にとらわれず,利用者が普段使っている情報源を入り口にして,より豊かな情報の世界へと誘うものであり,地域の住民にとっては,確かに便利なサービスであろう。
Ref:
http://www.libraryjournal.com/article/CA6424133.html
http://www.jocobusiness.net/templates/JCL_NewsList.aspx?id=882
http://www.kansascity.com/
http://www.jocobusiness.net/