E573 – 電子メールを組織的に管理・保存するためのマニュアル<文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.95 2006.11.22

 

 E573

電子メールを組織的に管理・保存するためのマニュアル<文献紹介>

 

Maureen Pennock. Curating E-Mails: A life-cycle approach to the management and preservation of e-mail messages. Version 1.0. Digital  Curation Manual, 2006. (online), available from < http://www.dcc.ac.uk/resource/curation-manual/chapters/curating-e-mails/ > , (accessed 2006-11-20).

 電子環境下における業務コミュニケーションのツールとして,電子メールはもはや不可欠のものとなっている。このような電子メールは,組織のコンプライアンスの一環として,また組織の業務インフラの一部をなす記録文書として,適切に管理・保存されるべきものである。また図書館や文書館においては,組織内の記録文書を管理・保存することはもとより,現代版の「書簡」と位置付けられる個人/組織の電子メールを,文化的・歴史的な資料という文脈から管理・保存していくこともあるだろう。

 ところが,このような電子メールの管理・保存の重要性については,まだ十分に認識されているとは言えない。英国のデジタルキュレーションセンター(DCC: E178, E548参照)が2006年7月に,デジタルキュレーションマニュアルの一章として刊行した本書は,この問題を考える格好の材料となる。

 本書では,単に電子メールの管理・保存だけでなく,その前後に位置する「作成」「再利用」のプロセスも考慮した取り組みが不可欠であるとして,電子メールのライフサイクルを視野に入れた「キュレーション」の必要性が論じられている。まず,キュレーションの概念と必要性を説明した上で,データ保護法や情報自由法といった関連する法律を紹介し,電子メールの記録文書としての位置付けを確認している。次いで,電子メールの発信者,受信者,キュレーター,再利用者の各役割ごとに,求められるタスクを解説している。例えば,発信者は電子メールのメタデータを適切に作れるよう,発信者の正確な署名を付し,直接の受信者の氏名・所属を明確にし,意味のある件名をつけて電子メールを発信することが求められている。また受信者は,すべてのメールを“inbox”(標準の受信箱)に入れておくのではなく,保存期間も意識して適切に振り分けることが求められている。

 このほか本書には,電子メールの保存時の推奨フォーマットや標準,長期保存・アーカイビングを行う際に考慮すべき点,電子メールのポリシーを立案・実行するための手順,すでにポリシーを履行している機関の事例紹介なども掲載されている。DCCの他のマニュアル同様,幅広く活用できよう。

Ref:
http://www.ukoln.ac.uk/ukoln/staff/m.pennock/publications/docs/RMS-b_mngmt-pres-emails.pdf