カレントアウェアネス-E
No.91 2006.09.20
E547
オープンアクセス入門<文献紹介>
Jacobs, Neil ed. Open Access: Key Strategic, Technical and Economic Aspects. Oxford, Chandos Publishing, 2006, 243p.
オープンアクセス(OA)への抗しがたい流れの中で,一度立ち止まって考えてみるのも良いかもしれない。本書はOAの入門書という位置づけになっており,5章から構成されている。「1.OA 歴史,定義,論拠」では学術コミュニケーションの概説, OAの定義やメリットについて基本的項目の説明がなされている。「2.OAと研究者」では研究者がOAに対してどのような意見や態度を取っているのか,調査結果などをもとに現状やその理由が解説されている。「3.OAと他の関係者」では,出版社,学協会,研究助成機関,大学のOAに対する見解が述べられている。「4.世界の状況」では,OA先進国であるアメリカ,イギリス,インド,オーストラリア,オランダの事例が報告されており,特にインドの状況などは興味深い内容である。「5.未来」では,リンチやハーナッドといった先駆者が,将来の学術情報流通の展望を述べている。
執筆陣は全てOAについて積極的に発言をしている錚々たる面々であり,基本的にOAを推進する立場から書かれている。多少私見が強く感じられるなど,全体としてのまとまりには欠けているものの,重要な項目は押さえられており,こうした多様性もOAの現状を表しているように思われる。
なお,本書の大半はWWWから無料で読むことができるので,興味を持たれた方はまずはWWW版を参照してはいかがだろうか。
(慶應義塾大学大学院:三根慎二)
Ref:
http://www.eprints.org/community/blog/index.php?/archives/93-Open-