E241 – NIHオープンアクセス勧告が巻き起こす波紋(米国)

カレントアウェアネス-E

No.44 2004.09.15

 

 E241

NIHオープンアクセス勧告が巻き起こす波紋(米国)

 

 国立衛生研究所(NIH)に関する米国議会のオープンアクセス化勧告(E222参照)が大きな波紋を呼んでおり,出版業界からは強固な反対の声が挙がっている。全米出版社協会(AAP)など業界3団体は8月23日,NIH所長宛てに今回の提案・勧告に反論する公開状を提出した。それによると,勧告が出される前に関係者との公聴会が開かれていないことを問題とした上で,競争市場に対する政府の不当な介入であること,医学情報へのアクセスは出版社自らの努力によって向上しつつあること,どのように研究成果を発表するかは著作者自らの判断によるべきであることなど,9つの論点を指摘している。

 一方,この勧告を歓迎する動きも活発になっている。SPARC,米国図書館協会(ALA)などの図書館団体や公益団体41機関は,8月24日,納税者アクセス同盟(Alliance for Taxpayer Access:ATA)を結成した。ATAは,NIHの提案を支持し,研究成果のオープンアクセス化は納税者の権利であることを訴えていくとしている。また,オープンアクセスこそ科学研究が飛躍的な進歩を遂げるための重要なカギであるとして,ノーベル賞を受賞した科学者25人が連名で,勧告を支持するよう議員に求める公開状を議会に送る動きも出てきており,勧告の影響は広がりつつある。

Ref:
http://www.libraryjournal.com/article/CA448662
http://www.pspcentral.org/committees/executive/Open%20Letter%20to%20Dr.%20Zerhouni.doc
http://www.arl.org/ata/
http://www.fas.org/sgp/news/2004/08/nobel082604.pdf
E222