E2092 – 名古屋なんでも調査団「鶴舞公園に龍がいた?!」実施報告

カレントアウェアネス-E

No.361 2019.01.17

 

 E2092

名古屋なんでも調査団「鶴舞公園に龍がいた?!」実施報告

 

    名古屋なんでも調査団(以下「調査団」)は,2018年3月17日に,1928年の鶴舞公園附属動物園平面図に記載された「龍」の文字の謎を調べる公開調査を開始し,その後の情報提供機関等での現地調査,動物園関連資料のデジタル化を含む,延べ223日にわたる調査の結果を同年10月27日の報告会「鶴舞公園に龍がいた?!」で発表した。

●名古屋なんでも調査団

    調査団は,2012年に開始した名古屋市鶴舞中央図書館(以下「図書館」)の事業で,レファレンスサービスのPR及び地域情報の発信を目的としている。レファレンス記録風の「調査団報告書」,見て楽しい,調べて役立つ本を紹介する「こんななごや本あります」,知られざる名古屋の偉人を参考文献とともに紹介する「発見!名古屋の偉人伝」,名古屋であったその日の出来事を紹介する「なごやカレンダー」,名古屋を舞台にした小説を紹介する「名古屋物語」,などレファレンスサービスの一環として徹底的に名古屋にこだわった活動を行っている。
 

●鶴舞公園の歴史と「龍」の文字の発見

    鶴舞公園は1909年に名古屋市が設置した最初の公園であり,名古屋を代表する総合公園である。公園内に,1918年4月に鶴舞公園附属動物園(1929年に市立名古屋動物園と改称,鶴舞公園時代の動物園を総称して以下「動物園」)が開園し,1923年10月に市立名古屋図書館(図書館の前身)が動物園隣接地に開館した。動物園は1937年に移転して名古屋市東山動植物園(以下「動植物園」)となったが,図書館は戦災による焼失と再建,建て替えをへてもなお公園内の同じ場所に位置している。

    2018年4月に名古屋市の動物園が100周年を迎えることから,動植物園から図書館に協力依頼があった。図書館では3月17日より「記念パネル展名古屋市動物園100年の軌跡」(動植物園提供,4月19日まで),「みんなで作ろう!おりがみ動物園」(折紙の本の展示と合わせて動物のおりがみを作ってもらう参加型展示,4月19日まで),「鶴舞公園に動物園ができるまで」(貴重資料などの展示,6月14日まで)を実施することになった。そして,「みんなで作ろう!おりがみ動物園」の準備中,1928年の動物園平面図に「龍」の文字を見つけ,調査を開始したのである。

●龍の調査

    調査開始時点では,1927年(卯年)に動物園で干支にちなんだ「兎に関する趣味の展覧会」が開催されたこと,鶴舞公園内に龍ヶ池があることが判明していた。一方,動物園に「龍」と呼ばれた動物がいた,あるいは「龍」の文字がつく動物がいた,又は似た漢字である「瀧」があったことのいずれも図書館資料で確認できなかった。しかしながら,1928年(辰年)に動物園で干支にちなんだ催しが行われた可能性はあると考え,調査団初の公開調査と称して8月31日まで情報提供を呼びかけた。

   名古屋市図書館全館でのちらし配布,図書館ウェブサイトへの掲載,マスコミへの情報提供のほか,鶴舞学区連絡協議会(図書館が所在する小学校区の組織)を通じて呼びかけ,41件(文字や地形から「瀧」だと思う22件,滝の目撃証言8件,滝らしき写真の情報2件,その他9件)の情報提供があった。

   また,情報提供の募集終了前の8月4日から10月20日まで,毎週土曜日に,調査プロセスを絵日記風に紹介する調査日誌を図書館ウェブサイトで順次発表した。9月から実施した名古屋市市政資料館所蔵の滝らしきものが写った動物園開園記念絵葉書(以下「絵葉書」)や,1938年に造られた動植物園の恐竜像などの現地調査の様子も調査日誌で紹介した。合わせて,調査で明らかになった動物園関連資料(図書館所蔵の動物園要覧,市政資料館所蔵の絵葉書,動植物園所蔵の鶴舞公園時代のアルバム)のデジタル化を行った。

   当初から予定していた報告会が迫る中,辰年ではないが,1932年(申年)から1939年(卯年)まで動物園及び動植物園で行われた干支にちなんだ催しを紹介する目的で鶴舞公園時代のアルバムの写真をくまなく調べたところ,報告会3日前の10月24日に,恐竜の造り物と「恐龍横行時代」と書かれた看板が写っている1935年(亥年)5月の動物祭のスタンプが押された写真の存在に気づいた。さらに翌25日に,同写真を拡大し,その看板に「恐龍の化石の實物が標本室に陳列してあります」と書かれていることを発見した。

    これらの調査結果を10月27日の報告会で発表し,翌28日(区民まつりの開催日,会場は鶴舞公園)から11月15日まで,調査団報告書,調査日誌(全12回),名古屋の龍伝説マップの展示を実施した。また,名古屋市図書館デジタルアーカイブ「なごやコレクション」でデジタル化した動物園関連資料を11月11日に公開した。

●調査団長談

   絵葉書や目撃証言から「龍」の文字の場所には「瀧」があったことが確認できたが,一方,1928年(辰年)の干支の催しはわからずじまいで,調査団初の未解決事例として報告することを覚悟した。ところが,報告会直前に,亥年の1935年の動物園に「恐龍の化石の實物」があったと判明する予想外の結末となった。

   こういうことがあるからレファレンスは面白い。

名古屋市鶴舞中央図書館・高木聖史

Ref:
https://www.library.city.nagoya.jp/reference/nandemo.html
http://e-library2.gprime.jp/lib_city_nagoya/da/top
http://e-library2.gprime.jp/lib_city_nagoya/da/detail?tilcod=0000000018-00154091
http://e-library2.gprime.jp/lib_city_nagoya/da/detail?tilcod=0000000018-00154095