E2056 – 平成30年7月豪雨による図書館等への影響

カレントアウェアネス-E

No.354 2018.09.13

 

 E2056

平成30年7月豪雨による図書館等への影響

 

 2018年6月28日以降の台風第7号や梅雨前線等の影響による大雨(平成30年7月豪雨)により,西日本を中心に広い範囲で様々な被害が生じた。本稿では,2018年9月10日までの情報を基に,豪雨の影響を受けた図書館等の状況を中心に紹介する。

●図書館への影響

 豪雨により,多くの公立図書館,大学図書館が臨時休館を発表した。鳥取県立図書館,広島県立図書館,愛媛県立図書館,京都府立図書館は,各府県内の公立図書館の休館状況等を公表した。
https://www.facebook.com/tottori.pref.library/posts/2104265469787051
https://www.facebook.com/tottori.pref.library/posts/2105164643030467
https://www.facebook.com/tottori.pref.library/posts/2107198602827071
https://web.archive.org/web/20180717035348/https://www2.hplibra.pref.hiroshima.jp/
http://www01.ufinity.jp/ehime/index.php?key=josjxtnsg-413
https://www.library.pref.kyoto.jp/?p=15244

 多くの館では,臨時休館後,数日で再開が発表されたが,被害等のために再開が遅れた館もあった。公立図書館については,市立竹原書院図書館(広島県)が,復興対策のため7月13日まで臨時休館し,移動図書館車の巡回も休止した。三原市立中央図書館(広島県)は,7月18日に再開した。大洲市立図書館(愛媛県)については,本館が床上浸水し,長浜分館及び河辺分館はそれに伴い図書館システムが利用できなくなったことから休館していたが,システムの復旧に伴い長浜分館及び河辺分館は7月24日に再開した。本館は,応急復旧が済んだため8月1日に再開したが,フローリング床の一部で反りや波打ちが発生していることもあって仮の再開としている。倉敷市立図書館(岡山県)の中央図書館及び地区館は,真備図書館を除いて8月1日に再開したものの,9月30日までの予定で開館時間を短縮するとともに業務を縮小して開館している。大学図書館については,尾道市立大学附属図書館(広島県)が,断水のため7月21日まで休館した。
https://twitter.com/takehara_city/status/1016605006697398273
http://www.city.mihara.hiroshima.jp/soshiki/4/shisetukyuukanngyoujityuushi.html
http://www.city.ozu.ehime.jp/soshiki/toshokan/28563.html
https://library.city.ozu.ehime.jp/
https://lib.kurashiki-oky.ed.jp/
https://www.lib.onomichi-u.ac.jp/blogs/blog_entries/view/69/f5cf373c81cf9db5cc171b88e3371b57?frame_id=86

 開館したものの,一時期サービスを休止または制限した館や,被害への対応を要した館も見られた。公立図書館については,高梁市図書館(岡山県)が,豪雨の影響により移動図書館を運休とし,8月の再開後も積載冊数やサービスを縮少しての代替車による運行を行っている。尾道市立図書館は,各館とも断水のため7月10日から時間を短縮して開館し,移動図書館も7月16日まで休止した。その後断水が解除されたため,中央図書館,瀬戸田図書館,向島図書館は7月18日から,因島図書館は7月19日から,みつぎ子ども図書館は7月21日から,通常どおり開館している。また,伊万里市民図書館(佐賀県)では,雨漏りが発生したことが公表された。大学図書館については,広島大学図書館が,他大学からの文献複写及び図書借用取寄せの受付を各館とも停止し,7月17日までには全館で再開した。愛媛大学中央図書館では,閲覧室と書庫で雨漏りがあり書庫資料の一部が濡れたこと,同大学図書館農学部分館では,地下書庫が浸水し片付けが終わるまで立入禁止としたことが公表された。
https://takahashi.city-library.jp/library/ja/info_page/806
https://www.onomichi-library.jp/?p=2152
https://www.onomichi-library.jp/?p=2166
https://www.onomichi-library.jp/?p=2246
https://www.onomichi-library.jp/?p=2280
https://www.library.city.imari.saga.jp/H300706h-rain.html
http://www.lib.hiroshima-u.ac.jp/index.php?key=job7fhibm-619
https://twitter.com/Ehime_Univ_Lib/status/1016231024173305856
https://twitter.com/Ehime_Univ_Lib/status/1016189328031019008

 一方,現在も,休館中または利用に一部制限のある館が見られる。宇和島市立簡野道明記念吉田町図書館(愛媛県)が,館内施設が利用できなくなったため休館している。大洲市立図書館肱川分館も,床上浸水被害のため再開は未定となっている。倉敷市立真備図書館は,浸水による被害が甚大なため当分休館するとしており,館内の状況を撮影した写真を公開している。福知山市立図書館大江分館(京都府)は,浸水被害から復旧するまでとして休館していたが,9月7日に,同分館のある大江町総合会館1階から同じ建物の2階に移動して臨時図書館を設置し,本の貸出し等を再開した。
https://www.city.uwajima.ehime.jp/site/uwajima-city-library/
http://www.city.ozu.ehime.jp/soshiki/toshokan/28563.html
https://lib.kurashiki-oky.ed.jp/
https://www.lib100.nexs-service.jp/city-fukuchiyama/info.html

●博物館等への影響

 博物館,美術館,資料館等についても,被害等のためしばらくの間休館した館があった。今治市伊東豊雄建築ミュージアム(愛媛県)は,7月7日から周辺道路での陥没や土砂崩れのため臨時休館し,7月15日に再開した。圓鍔勝三彫刻美術館(広島県)は,豪雨による交通網寸断及び断水のため,7月12日から7月16日まで臨時休館した。福山市神辺歴史民俗資料館(広島県)は,豪雨による崩落で通行止めとなったため臨時休館し,復旧後7月21日に再開した。大洲市立肱川風の博物館・歌麿館は,豪雨により営業を中止し,8月16日に一部の営業を再開した。同館のうち,歌麿館は展示替え料金で観覧でき,風の博物館は9月14日から観覧可能とする予定である。また,同館ロビーで「西日本豪雨 災害写真展」が8月末まで開催された。府中町歴史民俗資料館(広島県)は,豪雨の影響により臨時休館し,9月1日に再開した。なお,倉敷市真備歴史民俗資料館については,8月29日現在,床上浸水の被害を受けたことが発表されている。
http://www.tima-imabari.jp/blog/infomation/3391/
https://twitter.com/bijutsu1/status/1016918683237605376
http://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/kannabe-rekishiminzoku/124512.html
http://www.kazehaku.jp/?p=8983
http://www.kazehaku.jp/?p=8959
https://www.town.fuchu.hiroshima.jp/soshiki/17/11829.html
http://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/574773_4683866_misc.pdf

●被災地を支援する動き

 7月5日,国立研究開発法人防災科学技術研究所が,災害対応支援を目的として,同研究所が運用する府省庁防災情報共有システム(SIP4D)に収集された情報を目的別に集約・公開する「平成30年7月豪雨 クライシスレスポンスサイト」を公開した。
http://crs.bosai.go.jp/DynamicCRS/index.html?appid=3ab51465efc8429789b3edcdb42a59bf

 7月10日,全国学校図書館協議会が,各地の学校図書館協議会と連携して,学校図書館の被害状況や支援が必要な状況などの情報を収集し,復興支援のための寄附金を広く呼び掛けると発表している。
http://www.j-sla.or.jp/news/sn/
http://www.j-sla.or.jp/news/sn/post-165.html

 7月12日から,広島市立図書館が,災害対応に役立つ情報のリンク集「平成30年7月豪雨災害情報」を同館ウェブサイトで公開している。
https://www.library.city.hiroshima.jp/news/city/2018/07/1564.html

 日本医学図書館協会は,6月18日の大阪府北部を震源とする地震の被災地の大学・病院・医療機関等に無償で文献複写サービスを提供するなどの支援を行っている会員館に加え,7月17日から,平成30年7月豪雨の被災地に同様の支援を行っている会員館についても情報を公開している。
http://plaza.umin.ac.jp/~jmla/info/info.html
http://plaza.umin.ac.jp/~jmla/info/hisaichi_kanrentaio_2018.html

 日本図書館協会は,豪雨の被害を受けた図書館の復興支援及び今後の災害支援での活用を目的に,募集期間を2018年8月1日から2019年3月31日までとして,「西日本豪雨による図書館災害復興支援のための指定寄附金」を募集している。
http://www.jla.or.jp/jla//tabid/457/Default.aspx#nishinihon
http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/content/aboutJLA/nishinihongouu.pdf

 鳥取県立図書館は,被災地支援を目的として,岡山県,広島県,愛媛県の主な観光地のパンフレット約100種を同館で配布する「平成30年7月豪雨 被災地応援観光パンフレット配布事業」を,配布期間を8月10日から当分の間として実施している。
http://db.pref.tottori.jp/pressrelease2.nsf/webview/A010071F0E2BAD53492582E900208319?OpenDocument

●被災資料保全のための動き

 7月8日,岡山史料ネットが,民間所在の歴史資料の保全を呼び掛けるとともに,岡山県内の歴史資料の被害に関する情報や相談を寄せるよう呼び掛けた。東京文化財研究所は,水損資料の取扱い等をまとめた資料について周知を行った。7月9日には,文化財防災ネットワークが,豪雨に伴う文化財の被災情報の提供を呼び掛けた。歴史資料ネットワークは,2018年6月18日の大阪北部を震源とする地震からの緊急事務局体制を継続しており,豪雨に伴う歴史資料に関する被害や対応状況をまとめた「2018年西日本豪雨まとめ」を公開した。久留米市(福岡県)では,市民文化部文化財保護課が,市のウェブサイトで,被災した資料の保全を呼び掛けるとともに,被災資料の取扱いや保存の方法について同課に相談するよう呼び掛けた。特定非営利活動法人映画保存協会も,被害を受けた8ミリフィルムやビデオテープの洗浄について相談を受け付けると発表している。7月11日には,岡山県立記録資料館が,水や泥の被害を受けた資料の取扱いに関する相談を受け付けると発表している。また,広島県立文書館でも,同様の相談を受け付けている。7月15日には,愛媛資料ネットが,水損した民間所在の歴史資料の取扱いや支援についての相談を寄せるよう呼び掛けた。そのような中,全国歴史資料保存利用機関連絡協議会は,8月8日に内閣総理大臣宛てに,また8月15日に総務大臣及び文部科学大臣宛てに,「平成30年7月豪雨被災地における公文書等の保全・保存に関する要望書」をそれぞれ提出した。9月3日には,西予市(愛媛県)が,全国歴史資料保存利用機関連絡協議会のウェブサイトで「愛媛県西予市役所の水損行政文書レスキューと関連資材支援のお願い」を公表した。
https://twitter.com/okayamasiryonet/status/1015922594921439233
https://twitter.com/NRICPT/status/1015945284075917317
https://twitter.com/NRICPT/status/643305114380275712
https://twitter.com/NRICPT/status/643311200139243520
https://twitter.com/NRICPT/status/643592999608291329
https://twitter.com/NRICPT/status/1016158003307864064
https://ch-drm.nich.go.jp/news
https://ch-drm.nich.go.jp/news/【速報】台風7号と前線による西日本を中心とする
http://siryo-net.jp/disaster/westjapan_hevyrain_201807/
https://www.city.kurume.fukuoka.jp/1500soshiki/9125bunkazai/3010oshirase/2018-0709-0916-280.html
http://filmpres.org/whatsnew/9436/
http://archives.pref.okayama.jp/topic.html
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/monjokan/
https://twitter.com/ehime_s_n/status/1018441631937150976
http://www.jsai.jp/file/index.html
http://jsai.jp/file/20180808petition.pdf
http://jsai.jp/file/20180815petition.pdf
http://www.jsai.jp/
http://jsai.jp/rescueA/NishinihonHR2018/20180830request_from_Seiyo.pdf

 水損した資料を修復する動きも広がっている。特定非営利活動法人おもいでかえるが,豪雨で水損被害を受けた写真・アルバムを受け入れ,洗浄作業を行っている。愛媛資料ネットは,7月11日,愛媛県歴史文化博物館で水損資料の修復作業を開始し,7月14日から7月16日にも,宇和島市の公民館で水損資料の修復作業を行った。7月17日には,広島大学文書館が,広島市公文書館・広島県立文書館からの支援要請を受けて,水損した学校文書の修復作業を同3館の関係者により行った。7月19日には,山陰歴史資料ネットワークが,美郷町(島根県)で水損した石見銀山領に関する古文書約100点への応急処置を施した。7月21日には,岡山史料ネットが,倉敷市内で水損資料への処置を行った。岡山県立記録資料館では,水損した倉敷市立真備図書館の文書を7月24日に受け取り,修復作業を行った。7月30日には,八幡浜市教育委員会(愛媛県)が,愛媛資料ネット,宮崎歴史資料ネットワークの協力を得て,同市の旧双岩中学校で,体験講習「災害にあった写真を救おう 水に浸かった写真を捨てないで!~誰でも簡単にできる水損写真の応急処置~」を開催した。その際に配布されたハンドブック『写真をまもるために。』が,同市のウェブサイトに掲載されている。7月30日及び31日には,歴史資料ネットワークが,広島県立文書館からの応援要請により,国立歴史民俗博物館の天野真志氏,NPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク及び山陰歴史資料ネットワークと共に,同館が救出した水損資料の冷凍処置と吸水乾燥作業に協力した。また,岐阜県博物館協会でも,豪雨で浸水被害を受けた同県関市で水損した写真の修復作業を実施している。
https://ameblo.jp/omoide-kaeru/entry-12390298782.html
https://ameblo.jp/omoide-kaeru/entry-12391439634.html
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201807120055
https://twitter.com/ehime_s_n/status/1018791980568965121
https://twitter.com/ehime_s_n/status/1018792386112020480
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/46391
https://www.facebook.com/sanin.siryou.net/posts/1043904525764814
https://twitter.com/okayamasiryonet/status/1020674940251467776
http://archives.pref.okayama.jp/pdf/H30_gouu_mabitosyokan.pdf
https://www.facebook.com/ozu.museum/posts/1934836339908714
https://twitter.com/ehime_s_n/status/1024256119345037314
http://www.city.yawatahama.ehime.jp/docs/2018080700046/
http://www.city.yawatahama.ehime.jp/docs/2018080700046/files/handbook.pdf
http://siryo-net.jp/disaster/201807hiroshima-rescue/
http://miyagi-shiryounet.org/netnews320/
https://www.facebook.com/sanin.siryou.net/posts/1057487094406557
https://twitter.com/gifukenpaku/status/1023344679465627649
https://twitter.com/gifukenpaku/status/1024088379107885056
https://twitter.com/gifukenpaku/status/1036821764297244673

●図書館等関係団体の動き

 7月9日から,日本図書館協会が,被害を受けた図書館に関する情報を提供するよう呼び掛けている。あわせて,7月12日現在の豪雨による図書館の臨時休館及び被害状況を公開している。7月12日には,全国歴史資料保存利用機関連絡協議会が,「西日本豪雨 資料保存利用機関等被災状況」を公表し,8月15日,8月30日にも情報を追加している。また,文部科学省は,学校施設,社会教育・体育・文化施設,文化財,同省関係の独立行政法人等における被害情報を公開している。
http://www.jla.or.jp/home/news_list/tabid/83/Default.aspx?itemid=4083
http://www.jsai.jp/
http://jsai.jp/rescueA/NishinihonHR2018/201807HR1.html
http://www.mext.go.jp/a_menu/h30gouu7/index.htm

●刊行物

 『図書館雑誌』112巻8号(2018年8月)が,「平成30年7月豪雨による図書館の被害状況」を掲載した。
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I029135257-00

関西館図書館協力課調査情報係