E205 – 最新物理学による録音資料復元の試み(米国)

カレントアウェアネス-E

No.38 2004.06.16

 

 E205

最新物理学による録音資料復元の試み(米国)

 

 最先端の科学によって歴史的録音資料の保存と再生という難問が解決できるかもしれない。米ローレンス・バークレー国立研究所の素粒子物理学者ハーバー(Carl Haber)教授らは,米国議会図書館(LC)からの助成金を得て,蝋管(wax cylinder)やSPレコードといった歴史的録音資料に記録されている音声情報を取り出してデジタル情報として復元する技術の開発を進めている。

 蝋管やSPレコードは材質的に損傷を受けやすく,レコード針での再生は保存に適さない。そこで考えられたのが,素粒子物理学で使う光学式顕微鏡によってレコード溝の形状を読み取り,2次元または3次元のデジタル画像に変換し,針の動きを再現して音声を再生する,という方法である。こうして復元された音声はオリジナルよりも音質がよいという。LCでは47,000本の蝋管,65万枚のSPレコードを所蔵しており,破損したレコードからも音声を復元できるこうした技術に寄せる期待は大きい。

Ref:
http://news.com.com/2100-1027_3-5208224.html
http://www.lbl.gov/Science-Articles/Archive/Phys-quarks-to-blues.html
http://www.nature.com/nsu/040419/040419-4.html
http://www.sciencenews.org/articles/20040529/fob2.asp