E1905 – 韓国国会図書館の取組:国立国会図書館との業務交流から

カレントアウェアネス-E

No.323 2017.04.13

 

 E1905

韓国国会図書館の取組:国立国会図書館との業務交流から

 

    国立国会図書館(NDL)は,韓国国会図書館(NAL)及び韓国国会立法調査処(NARS)と,それぞれの立法支援サービスについて相互理解を深めることを目的として業務交流を行っている。1年ごとに日韓が交互に職員を派遣して意見交換や互いの経験を共有することとしており,直近では2017年1月11日と12日に日本で開催し,日韓両国から各2名が報告を行った。韓国の2機関の報告のうち,本稿では,「国会発生情報への国民のアクセスの整備」をテーマに行われたNALとの報告から,NALの取組の一端を紹介する。

●NALの概要

    NALは,国会事務処,立法調査業務を行なうNARSや,予算や財政の調査・分析を行う国会予算政策処と並んで,立法府である韓国国会に属する機関である。NALは,国会議員の立法活動や国政審議に必要な議会・法律情報を網羅的に収集・提供することで国会の立法活動を支援するとともに,収集した資料を用いた一般利用者へのサービスも積極的に行っている。

   組織は,館長の下に2室(議会情報室,法律情報室),3局(情報管理局,情報奉仕局,国会記録保存所),1官(企画管理官)が置かれ,これらの下に全部で19の部署が設置されている。2016年度の定員は304名,予算は417億6,700万ウォン(約39億9,300万円)である。また,一般図書417万点,電子書籍等117万点,非図書資料49万点,計583万点を所蔵しており,来館利用者は年間86万人,電子図書館の年間アクセス数が1,800万件ある。

●NALのサービス

    NALの報告では,NALの取組を「インターネットを利用した国民サービス」と「国会に特化したサービス」に分けて紹介した。

   前者では,NALが作成した各種法律情報と法制処(日本の内閣法制局に相当)の作成した法令・判例情報など法律関係コンテンツの統合検索サービスを提供するウェブサイト「国会法律図書館」や,立法や政策審議等に関する知識や情報を提供する議会情報ポータルサイト「立法知識サービス」などが説明された。また,後者では,海外の主要政策や法律などの翻訳を提供する「議会・法律情報翻訳サービス」や,国会議員及び各分野の専門家を掲載し,多様なネットワーク形成を支援する人的資源情報データベース「国会ヒューマンネットワーク」などが説明された。

   ここでは,国民向けサービスのうち,上に挙げたほかに特に興味深かった2つのサービスを取り上げる。

●国会記録情報の公開

    国会記録保存所は,2000年に国会事務処内に設置され,2009年にNALに移管された。国会記録情報の公開を通じて,国民の知る権利を保障し,議会制民主主義の発展に貢献する役割を担っている。具体的には,国会会議録や議案資料を始めとする国会所属機関が作成した記録物や,議員の演説文や著書などの議員活動関連の記録物の収集・管理等を主要な業務としている。

   また,2016年4月にはウェブサイトを開設した。議長・副議長経験者に在職時の活動に関して聴取した口述記録や,国会史年表などの所蔵する国会記録物をもとに作成したコンテンツ及び国民が利用可能な記録物の目録23万件をオンラインで提供し,サービスを拡大している。

   記録情報サービス課と記録情報管理課の2課からなる国会記録保存所の2016年度の定員は27名(うち,記録研究者7名,司書14名)であり,予算は約10億5,443万ウォン(約1億83万円)である。

●国会・地方議会議政資料共有統合システム

    国会・地方議会議政資料共有統合システムは,APIを通じて自動収集した地方議会の会議録,議案,条例,公聴会資料,政策報告書等に加えて,国会及びNALの立法情報や政策情報を統合的に検索できるシステムである。

   2015年6月からサービスを開始しており,現在,全国17の広域自治体(道・特別自治道・特別市・広域市・特別自治市)の議会及び15の基礎自治体(市・郡・区)の議会との間で相互情報協力協約を締結している。今後,段階的に75の市議会との協約締結を予定しているとのことである。

   このサービスにより,全国の地方議会の立法能力及び専門性の強化を支援するとともに,地方議会間における情報格差を解消することを目指している。また,国会と地方議会間や地方議会同士のコミュニケーションの強化も図っている。

●おわりに

    報告者は,NALは率先して効率的な立法支援を遂行するとともに,国民への知識情報サービスを拡大することで,「働く国会」,信頼されるNALとして飛躍できるよう最善の努力を行っていきたいと締めくくった。今回の報告にあったNALの方向性は,NDLの国会サービスの拡充に向けた基本方針である「国会サービスの指針」に掲げられた,「立法府のブレーン」「議員のための情報センター」としての役割,国会と国民とをつなぐ役割の拡充強化という目標とも共通する内容である。両機関との業務交流で得た知見を,指針が掲げる目標の達成のためにいかしていきたい。

 

調査及び立法考査局調査企画課連携協力室・川鍋真理子,福林靖博

Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/cooperation/nal_and_nars.html
https://www.nanet.go.kr/
http://www.nars.go.kr/
http://law.nanet.go.kr/main/main.do
http://hn.nanet.go.kr/
http://archives.nanet.go.kr/
http://clik.nanet.go.kr/
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/service/index.html#guideline
http://doi.org/10.11501/10303183