E1831 - 研究データ利活用協議会の設立

カレントアウェアネス-E

No.309 2016.08.18

 

 E1831

研究データ利活用協議会の設立

 

 2016年6月3日,「研究データ利活用協議会」(以下「協議会」)が発足した。近年,日本においても,内閣府の「国際的動向を踏まえたオープンサイエンスに関する検討会」や,日本学術会議「オープンサイエンスの取組に関する検討委員会」において検討が行われ,第5期科学技術基本計画にも明記されるなど,オープンサイエンス推進の気運が高まっている。この状況下,協議会は,研究データの利活用について関心を持つさまざまなステークホルダが会し,各々の活動や知識を共有しつつ議論を行うことにより,オープンサイエンスへの意識を醸成し,日本における推進に寄与することを目的としている。

◯設立の経緯
 オープンサイエンスが目指すイノベーション創出に向けて,従来連携が行われてきた分野を超えて,研究データの利活用が求められている。たとえば,国際的には研究データ同盟(RDA;CA1875参照)が2013年から研究データ共有に関わる幅広い議論をすすめている。こうした研究データのオープン化と共有の実現にあたって,研究情報の識別子(ID)やメタデータの整備,それらを検索する基盤の必要性,重要性はますます高まっている。

 デジタルオブジェクト識別子(DOI)登録機関であるジャパンリンクセンター(JaLC)においても,従来,主に論文に対して登録してきたDOIを,研究データにも登録することを開始した。開始に当たっては,2014~2015年にかけて1年間の実験プロジェクトを行い,「研究データへのDOI登録ガイドライン」をとりまとめた。プロジェクトには,研究者,図書館や行政機関といった異なる立場の関係者が参加し,分野横断的に実務レベルの研究データ担当者がともに議論できる,これまでにないコミュニティが形成された。

 協議会では,このコミュニティを基盤としながら,DOI登録だけでなくオープンサイエンスの実現に向けさらなる検討や活動を継続,推進し,RDAをはじめとする国際的な活動との協調を目指していきたいと考えている。

◯体制
 本協議会への参加形態には,機関参加と個人参加がある。

 現在の参加機関は,JaLCを運営する科学技術振興機構(JST),物質・材料研究機構(NIMS),国立情報学研究所(NII),国立国会図書館(NDL)の4機関と,協議会の設立に携わった情報通信研究機構(NICT),産業技術総合研究所(AIST,参加準備中)の計6機関,およびその後加わった千葉大学(附属図書館,アカデミック・リンク・センター)である。会長はNII・JaLC運営委員長の武田英明氏,副会長はNICTの村山泰啓氏が務める。

 参加機関から選出されたメンバーが運営グループを組織し,運営に関する意志決定を行っていく。運営グループには,設立準備から個人として参加している科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の林和弘氏も加わっている。

 また個人については,研究データ利活用やオープンサイエンスに関連する事項に関心があれば,誰でも自由に参加することができる。参加にあたっては,会費等の費用は発生せず,またとくに義務などもない。関連の研究会・イベント情報,最新情報の連絡網づくりという側面もある。

◯活動計画
 活動内容として,年に2,3回程度の研究会(ゼミ形式の勉強会や,講演会,討論会など),年1回程度の報告会(一般に対する成果発表),メーリングリストを利用した情報交換などを考えている。機関,個人とも,研究会や報告会に積極的に参加し,活発な議論を行っていただくことを期待している。メーリングリストへの参加は会員に限られるが,研究会および報告会は,原則,会員でなくても参加可能である。

 今年度は,7月25日にキックオフミーティングを開催した。また,9月下旬頃に第8回RDA報告を兼ねた研究会,JSTが開催するサイエンスアゴラにおける11月4日の公開シンポジウム,年度末に報告会を,それぞれ開催する予定である。

◯キックオフミーティングの開催
 全国から70名以上の参加があり,その所属は大学・研究機関,図書館,企業,官公庁・行政機関等さまざまであった。多様なステークホルダが研究データの利活用に関心をもっていることがわかる。ミーティングでは,参加機関からの発表の後,グループディスカッションを行った。今後の研究データ利活用の期待や,不安,当面の課題などについて,参加者全員による意見交換や意識共有の場となった。

 本協議会は,今後のオープンサイエンスの発展へ向けた取り組みの1つであり,議論を進めていくにあたっては,オープンネスや参加者の多様性を保つことが欠かせない。会員および研究会等イベントへの参加者は随時募集している。今後ますます多くの皆様に関心を持っていただき,ご参加いただければ幸いである。

科学技術振興機構・中島律子

Ref:
http://www8.cao.go.jp/cstp/sonota/openscience/
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/openscience/openscience.html
http://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/index5.html
https://japanlinkcenter.org/top/index.html#top_kyogikai
https://japanlinkcenter.org/top/index.html#top_event
http://doi.org/10.1241/johokanri.58.763
http://doi.org/10.11502/rd_guideline_ja
http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/
E1681
CA1875