E1574 – つくばリポジトリのJAIRO Cloudへの移行

カレントアウェアネス-E

No.261 2014.06.19

 

E1574

つくばリポジトリのJAIRO Cloudへの移行

 

 筑波大学は,大学の機関リポジトリである「つくばリポジトリ」(Tulips-R)を国立情報学研究所(NII)が提供する共用リポジトリサービス「JAIRO Cloud」上に2014年5月21日に移行した。

 Tulips-Rは,NIIの学術機関リポジトリ構築支援事業の支援を受けてシステムをDSpace(CA1527参照)で構築し,2007年3月にサービスを開始した。2014年3月時点で学術論文を初めとする約30,000件のコンテンツが蓄積されている,日本でも有数の機関リポジトリの一つとなっている。

 JAIRO Cloudのシステムは,CMSソフトウェアの一つであるNetCommons2上で動作するリポジトリモジュールWEKOをベースとしている。WEKOとはスワヒリ語でリポジトリを意味し,NIIが開発しオープンソース(BSDライセンス)で公開している。2014年4月現在で公開予定も含めて202機関がJAIRO Cloudを利用し,機関リポジトリを構築している。 既に構築されていた機関リポジトリがJAIRO Cloudへ移行したケースとして,Tulips-Rは第一号となった。

 筑波大学では,2014年3月にTulips-Rを含む電子図書館システムの更新が予定されていたため,機関リポジトリ機能の管理業務軽減を念頭に置き,2013年度からNIIが進めている機関リポジトリ既構築機関のJAIRO Cloudへの移行実験(以下「移行実験」)に参加した。

 移行実験は,機関リポジトリ既構築機関がJAIRO Cloudへのシステム乗換えを支障なく行えるかどうかを確認する実証実験である。移行実験を実施している背景として,2012年9月にNIIが国内の機関リポジトリ既構築機関に行ったアンケート調査で,回答機関の約3割に当たる24機関が,サーバ管理負荷の軽減等の理由でJAIRO Cloudへの移行希望を持っている,と回答したこともあろう。

 移行実験では,DSpaceのシステムからJAIRO Cloudへの移行に必要な要件の確認や作業を行った。具体的には,Tulips-Rが提供してきたコンテンツとサービス機能を全てJAIRO Cloudに移行できることを前提に,移行仕様の作成や追加機能の検討は両者が協力して行い,JAIRO Cloudの改修やツールの実装はNIIが,移行データの登録作業や機能の確認を筑波大学が行った。例えば,NII側でDSpaceデータベースに登録されているメタデータ及び全文データを簡易に出力するツールを開発し,筑波大学側ではJAIRO Cloudへの一括登録用ソフトウェア(SCfW:SWORD Client for WEKO)を利用したデータの登録を行った。

 DSpaceからJAIRO Cloudに移行するために,移行実験では以下のような課題を解決した。

(1)DSpaceで付与していた永久識別子(handle)のWEKOへの引き継ぎ
(2)DSpaceとWEKOのメタデータのマッピング
(3)DSpaceからのデータの抽出と登録
(4)コンテンツ登録者へのアクセス統計のメール送信機能

 一方,移行実験を通じて,JAIRO Cloudが以下のような優れた機能性を持つことがわかった。

(1)登録したデータのカテゴリ移動や並べ替えが柔軟にできること
(2)データの一括登録が簡単に行えること
(3)ファイルの一時保存や公開日の指定ができること
(4)ウェブインタフェースによる画面・機能設定の自由度が高いこと

 これらのシステム機能の開発及び検証の結果,システム移行に必要な基本要件が整備されたと筑波大学側で判断し,NIIと協議のうえ,Tulips-RをJAIRO Cloudへ正式に移行し運用することとした。移行に際しては,筑波大学電子図書館システム上にあって,リポジトリシステムからリンクのみされていた一部の全文データをリポジトリシステムへすべて統合した。更新後の電子図書館システムには機関リポジトリの機能を持たせていない。なお,6月中には移行前にTulips-RのURLに直接リンクを張っている他のシステムへの対応のため旧つくばリポジトリに対しURLのリダイレクト設定を行うこととしている。

 JAIRO CloudにTulips-Rを移行することによって,大学側ではシステムの維持管理等の運用コストが大幅に削減され,2013年4月からインターネット公表が義務化された博士学位論文(E1418参照)等のコンテンツの充実に注力できるようになると考えている。また,Tulips-Rのような大規模リポジトリの移行実験の事例がリポジトリシステムの更新を検討している機関の参考となることを期待している。さらに,200機関を超えるJAIRO Cloudのコミュニティに加わることによって,メタデータのみの一括変更への対応や新機能の追加,インタフェースの向上等をNIIや他の利用機関と協力して行い,Tulips-Rの機能やサービスの向上を図りたいとも考えている。具体的にはJAIRO Cloud参加機関として,書誌事項や著作権情報を補足するコンテンツのカバーページ(PDF)の動的作成機能といった機能改善要望を随時行っている。

 JAIRO Cloudでの新Tulips-Rの運用を開始して間もないが,JAIRO Cloudによる紀要論文へのDOI登録への対応をNIIと協力して進める予定である。

筑波大学附属図書館・真中孝行

Ref:
https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/
https://community.repo.nii.ac.jp/
http://www.nii.ac.jp/irp/repo/
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/lib/
http://www.netcommons.org/
http://weko.at.nii.ac.jp/
http://www.nii.ac.jp/csi/openforum2014/docs/c-1_takahashi.pdf
http://www.nii.ac.jp/irp/2014/03/doi.html
CA1527
E1418