E1415 - 豪州の大学生の日常情報探索とニュースメディア<文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.234 2013.03.28

 

 E1415

豪州の大学生の日常情報探索とニュースメディア<文献紹介>

 

Williamson, Kirsty. et al. Young adults and everyday-life information: The role of news media. Library & Information Science Research. 2012, 34(4), p. 258-264.

 最近の若者はどのように情報やニュースに接しているのだろう?

 オーストラリアのモナシュ大学のウィリアムソンらによる本論文は,日常生活における情報探索(everyday-life information seeking:ELIS)の視点から,日々変化する情報・メディア環境の中で大学生がどのようなソースからどのような情報・ニュースを得ているかを調査・分析した報告である。調査はオーストラリアにある大学に通う学生(18歳~25歳)を対象に行われ,インタビューを中心とした第1段階(2009年実施),情報探索タスクを中心とした第2段階(2010年実施)に,合わせて34人の学生が参加した。

 調査を通して,いくつか興味深い傾向が明らかになった。まず,調査対象となった若者たちの多くが,ニュースの入手先として印刷媒体の新聞をよく読んでいる,と回答した。これは,オンラインニュースなどの電子媒体に押されて特に若年層の間では印刷媒体の影響力が低下している,とする従来の議論に反した結果であり,電子媒体の普及後も印刷・電子の両媒体が共存していることを示している。また,調査対象となった学生はソーシャルネットワークサイト(SNS)やブログを「個人の近況を知るためのツール」と認識しており,社会情勢を知る手段としてはニュースメディアによる報道・解説等と明確に区別していることも示された。ただし,漫然とした情報探索ではなく「就職・アルバイト情報を得る」といった目的を絞った情報探索の場合はインターネットを情報源とする場合が圧倒的に多かった。

 他にもこの論文は,調査対象者の多くが印刷媒体だけでなくオンラインでも偶発的にニュースに接していることを指摘している。メディア論などの分野ではニュースの電子化について,オンラインニュースは取捨選択が容易であるため個人の信条に合致するニュースだけを読む傾向が高まるとし,印刷媒体で起こりうる偶発的なニュースとの遭遇の可能性の低下と,それによる読者の思想的偏向を危惧する意見もあるが,この論文はそのような意見に疑問を呈しうるデータを提示している。

 もちろん,これらの結果が調査対象の学生と,彼ら彼女らを取り巻く情報・メディア環境に固有のものである可能性には留意する必要がある。インターネットの普及により,世界中の人々が触れる情報・メディア環境はある程度フラットになったかもしれない(特に大学生という層に限定すれば,その傾向はより顕著なものかもしれない)。しかし環境におけるほんのわずかな差異でも,利用者の情報・メディア行動とその結果は大きく変化することがある。

 例えば本論文では「偶発的なニュースとの遭遇」の例として「Hotmail利用時に表示されるMSNのサイトでニュースを読むことがある」という学生の発言を引用している。だが,これは日常的なコミュニケーション手段の一つにHotmailが含まれる環境にあるからこそ起こりうる遭遇の形であるともいえる。ログイン時やログアウト後にニュースサイトに誘導されない他社のウェブメールや携帯電話のメールが主立ったコミュニケーション手段である環境にいる場合,「偶発的な遭遇」の頻度はどの程度変化するだろうか。また,学生の中には,印刷された新聞を読む理由として「親が購読していて家にあるから」を挙げた例もあったが,著者も論文中で言及しているように,本調査の調査対象はオーストラリアの地方都市に立地する大学の学生であり,このような形での新聞へのアクセスは,平日は寮生活をしているものの週末・休日には実家に戻ることが多い,という彼ら彼女らの生活スタイルの反映である可能性が高い。この点については,例えば日本でも,自宅通学の学生の割合が高い大学と単身生活をしている学生が多くを占める大学でそれぞれ調査を行ったら異なる結果が得られるのではないだろうか。

 10代後半から20代前半という年齢層を対象としたELISの実態解明はいまだ発展途上にあり,本論文は非常に意義深いものであるといえる。今後,このような調査が広まり,より多様な情報・メディア環境下における若者たちの情報探索行動が明らかになれば,電子メディアの出現・普及がこの世代に与えた影響についての理解もより深まっていくだろう。

(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校大学院コミュニケーション学研究所・小牧龍太)

Ref:
http://dx.doi.org/10.1016/j.lisr.2012.05.001
http://press.princeton.edu/titles/8468.html